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IN:銀河より遠い∞世界  作者: 普通の人/3時のおやつ
第2章「終わらない戦い」

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第46話「開幕」

――お前と一対一をしてもらう。


 その言葉は、まるで処刑宣告のように僕の耳に突き刺さった。


 


 「……は?」


 咄嗟に反論の声が漏れる。


 「なんで……? 1対4じゃないのか? おかしいだろ、そんなの!」


 


 だが、キャロットは表情を一つも変えず、静かに、そして当たり前のように言った。


 


 「面白くないだろう? 四人がかりなど、私にとっては退屈でしかない。」


 


 その目は、どこか獣のように光っていた。いや、獣ではない。もっと冷たいものだ。

 人間が捨てるべき情を失い、完全なる娯楽のために命を弄ぶ「支配者」の目だった。


 


 「私は、1対1が好みなんだよ。人間の限界を、正面から見るのがな。」


 


 その言葉に僕だけでなく、田中、井上、小野――みんなが怒りを浮かべた。


 


 「ふざけんなよ……アイツ、狂ってやがる……」


 田中が歯ぎしりする。


 


 「怒りを抑えろ、勇気……太ちゃんを信じろ。」


 井上は震える声を押し殺して言った。


 


 小野は……声を出すことすらできなかった。

 両手を胸元に握りしめ、僕の背中をただ見つめていた。


 


 僕はそれぞれの顔を見た。そして、口元にわずかな笑みを浮かべた。


 


 「大丈夫だよ。僕が――みんなと、死んだ人たちのために、キャロットを倒す。」


 


 それは、決意の宣言だった。

 もう、逃げる場所なんて、どこにもなかった。


 


 「ハハハハハッ!!!」

 キャロットは肩を震わせ、笑い声をあげた。


 


 「面白い!!面白いぞ!!こんなに笑ったのは何年ぶりだろうか!!

 今まで戦った“戦士”の中で、貴様が一番面白いッ!!!」


 


 その勢いでキャロットは懐から金属製のボトルを取り出し、ぐび、と喉を鳴らしてそれを飲んだ。


 


 「……おいおい……余裕すぎて、ジュースでも飲んでるのかよ?」


 僕はそう言って挑発したが、内心は震えていた。

 ただの飲み物じゃない――そんな直感があった。


 


 「なんにも察しないのか? クソガキ」


 キャロットの目が、刃のように細くなる。


 


 「……は?」


 


 僕の脳裏に、あらゆる記憶が一気に押し寄せた。


 


 ――「俺はもうすぐ死ぬかもしれない。だからお前は生きろ」羽田の言葉。

 ――「ごめんよ太一……不良品呼ばわりしてしまって……」博士の涙。

 ――「これは、私の最後の命令だ」ローラの言葉。

 ――「僕は、お祖父ちゃんのこと、尊敬してるんだ!!」あの日の叫び。


 


 そして――


 


 7月20日。

 玲奈と、勇気と、翔と、沖縄に行くはずだった日。


 


 道を歩いている人間が、一人もいなかったことに――今、気づいた。


 


 「……水だ。」


 僕は呟いた。いや、叫ぶように言った。


 


 「水だ!!」


 


 仲間たちが驚き、戸惑いの声をあげる。


 


 「太ちゃん、『水』ってどういうこと?」


 「『水』がなんなんだよ!?太一!!」


 


 僕は、すべてのピースを繋ぎ、語った。


 


 「夏だったんだよ。みんな、暑くて、水を飲んでた。

 でも……その中に、ウイルスが混ざってたんだよ。」


 


 井上が息を飲む。

 田中が目を見開く。


 


 「確かに……あの日、道に人がいなかった……!!」

 「うそだ……まさか……」


 


 キャロットが拍手するように、ゆっくりと手を叩いた。


 


 「正解だ!!素晴らしいな、クソガキ!!!

 だがな、それを今気づいたところで――すべて無駄だ。」


 


 その瞬間、キャロットの右腕がうねり、醜悪な“進化”を始めた。


 


 肉が盛り上がり、腕が肥大化する。

 その先には、人間のそれとはかけ離れた、巨大で鋭利な「爪」が現れた。


 


 「見ろ!!!これが、これからお前たちが味わう“激痛”と“絶望”の右腕だ!!」


 


 僕は、左肩に痛みを感じながらも、ハンドキャノンを構えた。


 


 左肩は、もう使えない。あの戦いで破壊された神経は、今でも僕の可動を妨げていた。


 だけど、それでも――。


 


 「来いよ……僕が殺す。」


 


 僕とキャロットは、動いた。


 


 足元の床が砕け、空気が歪む。


 彼の右腕が唸りをあげ、僕の視界を切り裂こうとする。


 


 だが――僕は止まらない。


 この拳が、引き金が、声が、魂が――


 


 すべての犠牲の「意味」だった。


 


 さあ、戦いの火蓋は、今――落とされた。


 


 


                  To be continued

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