第43話「動き出す入口」
「考えって……なんだよ、太ちゃん?」
井上の声に、僕は静かに答えた。
「……身を潜めながら、中に入ろう」
その言葉に、田中が眉をひそめる。
「嫌だろ? 無理だって。入口には数人の兵士がいるし、あれじゃ蜂の巣だぜ。入った瞬間アウトだよ」
小野も頷いた。
「そうですよ。下手したら、私たち、あそこで終わってしまう……」
だけど、僕は首を振る。
「違うよ。入口に入るんじゃない。――別の場所から入るんだ」
「でもさ……」
井上が困った顔をして言う。
「別の入口なんか、見つかってもいないよ?」
「そうだぞ」
田中がかぶせるように言った。
「見つけてもいないのに、そんなこと言ってどうすんだよ」
――だから、僕は言った。
「いや、見つけたんだよ」
その瞬間、全員の目が僕に向く。
僕は指を一本、真っ直ぐに伸ばし、研究所の外壁の一角を指差した。
「あそこ……見ればわかる」
田中と井上、小野が、僕の指の先を追って視線をやる。
するとそこには――とても小さな開口部があった。
「ほ、本当だ……!」
井上が目を見開く。
「あんな小さな入口……でも、人ひとりなら通れるかもしれない……!」
「ただし、あれって……普通、人が入るような場所じゃないだろ」
田中が現実的な視点を投げかけた。
「たしかに……メンテナンス用か、廃棄口か何か……」
小野が不安そうに口を開く。
「でも……」
僕は言った。
「あそこの周りに、兵士はいない。
だから、今がチャンスなんだよ」
一瞬の沈黙のあと、田中が口を開いた。
「……そ、そうだな。行くしかないよな」
「うん!」
井上が強く頷く。
「太ちゃんの言うとおりだよ。俺たちが今、動かなきゃ!」
「私も行きます。行かなかったら、何も始まらないから……!」
小野の目にも、強い意志の火が宿っていた。
そして僕たちは、手を繋いだ。
生き延びてきた絆の証のように、誰一人、離さず。
「エイ、エイ、オー!!!」
4人の声が揃った。
細く、暗く、狭い――それでも、希望の隙間。
僕たちは、とても小さな入口に、順番に身体を滑り込ませた。
ここからすべてが始まる。
いや――ここから、すべてを終わらせるための一歩が動き出した。
To be continued




