第39話「強者」
空が――割れた。
博士の足が地面から離れたかと思えば、尋常ではない跳躍力で天井の見えない暗闇へと消えていった。
信じられない。まるで重力という概念を無視したかのような跳躍だった。
「太一、覚悟はええか?」
――そして10秒後、雷鳴のような轟音と共に、黒い影が空から急降下してきた。
それは博士だった。
ただの着地ではない。博士は右拳を高く掲げ、一点を狙い澄ました獣のように、僕の位置に向けてその拳を落とそうとしている。
「絶対権力!!!…アブソリュートリーパワー!!!!」
僕はその言葉を聞いた瞬間、反射的に身を翻して全力で横に飛んだ。
次の瞬間、博士の拳が橋の床に突き刺さり、
爆風と衝撃波が辺りを破壊し尽くした。
黒い橋の床が陥没し、地鳴りのような震動とともに、目の前の空間が一瞬、真っ白な光に包まれた。
耳がキンと鳴る。風が嵐のように押し寄せ、空気そのものが切り裂かれているようだった。
やがて、煙が薄れていく。
そこには、拳を地に突きながら下を向いている博士の姿があった。
「クソぉ……!!あとちょっとで、死ぬ瞬間が見られたのによ……」
博士がゆっくりと顔を上げ、ニヤリと笑った。
その表情は狂気に染まり、まるで**“人間の中に潜む怪物”**そのものだった。
博士はポケットから何かを取り出した。
2丁の極小ミサイルランチャー。
それぞれの筒口は、不気味に発光し始めていた。
「喰らえ!!!!…大量発射!!!…マスファイアリング!!!!」
その瞬間、上空から光の雨が降り注いだ。
数百発はあるかと思われる極小ミサイルが、流星群のように落下してくる。
僕は橋の縁を蹴り、ローリングしながらぎりぎりのところでそれを避けた。
ミサイルは橋の至るところに突き刺さり、爆発音と熱風が空間を焼く。
空気が焼け焦げる匂い。
視界は揺れ、音は乱反射し、全神経が危機を告げていた。
僕は膝をつき、息を切らしながら考える。
「……やるしか、ないよな……でも……これなら……」
右手のハンドキャノンが、かすかに熱を帯びて光っている。
それは、僕の奥底に眠る力――いや、まだ使っていなかった、**“もう一つの技”**の兆候だった。
博士は言った。
「どうした?終わりか?その程度でワシに勝てると思ったのか? 太一。」
僕は静かに立ち上がる。
ハンドキャノンを持つ手が震えている――だが、目は、迷っていない。
「違う……僕は、お前に“勝ちたい”んじゃない。
救いたいんだよ、博士。……僕の“家族”を。」
To be continued




