第37話「一騎討ち」
橋の上、僕と天野君は激しく動き始めた。
お互いに走り、撃ち合い、避け合う。
乾いた銃声が、コンクリートに響き渡る。
――一発、二発、三発。
どの弾も、ほんのわずかに外れる。けれど、それでもその軌跡は、命を狙う本気の意志を持っていた。
戦いの中、天野君が叫ぶ。
「君は実に――馬鹿だ。だが……君たちがここまで生き延びるとは、全く予想していなかった!!」
その声には、苛立ちとほんの少しの賞賛が混ざっていた。
「この“過酷な地獄”と“過酷な環境”でな!!でも、太一君……君はここで終わるべきだ!!」
次の瞬間、天野のリボルバーが火を吹いた。
――ズキィッ!!
「痛でえええぇぇぇぇぇ!!!!」
左肩に弾が食い込み、僕は地面に膝をついた。
じわりと、温かい血が服を濡らす。肩から腕にかけて力が入らない。
天野はにやりと笑った。
「そうだ。その顔。苦しみと痛みに歪んだ、最高の表情だ……
僕はね、他人を“苦しむための存在”としか見ていないんだよ」
その言葉に、怒りが限界を超えた。
僕は歯を食いしばり、立ち上がった。左腕は使えない。
だけど、右手には、ハンドキャノンがある。
「ふざけんな!!!!」
「!!!……」
「お前がわかってないのは――人がどうやって“死ぬ”のかってことだ!!!
お前は、人の“痛み”と“命”を侮辱してる!!
お前なんか、もう天野君じゃねえ!!!!」
天野は顔を歪めたあと、ふっと笑った。
「やっぱり、君は“脳筋”だった。……でも、いいよ。“試合再開”だ」
二人は再び走り、弾を撃ち、撃たれ、避ける。
世界には、僕たちの呼吸と、銃声だけが響いていた。
――そして。
「――ッ!」
一瞬、天野君の足元が滑る。
「まずい……っ」
彼が体勢を崩した、その隙を――僕は、見逃さなかった。
「――これで、終わりだ」
ハンドキャノンを構え、引き金を引いた。
――ドン。
天野君の胸、心臓のあたりに、確かに命中した。
天野君は後ろに倒れ、僕は彼の前に膝をついた。
「天野君……大丈夫?」
彼は、苦笑しながら答える。
「……えっ?……いや……全然……大丈夫……だ……よ……
まっすぐに……行くと……研究所の……入口がある……
全部……黒い……博士と……キャロットと……玲奈が……そこに……」
その目が、ゆっくりと閉じられていく。
「……大丈夫……ブルーベリーさえあれば……生き返るから……冗談……だけど……」
――そして、彼の心臓は静かに止まった。
僕は立ち上がり、肩の痛みを堪えながら、天野君の冷たくなった顔を見下ろす。
「……天野君、ごめん。
でも、僕は――絶対に博士を、玲奈を……助け出す!!」
その決意とともに、僕は再び、前を向いて歩き出した。
次の扉の向こうには、すべての真実が待っている。
――To be continued




