第33話「生死の2分間」
「2分間開始です。」
――その言葉が部屋に響いた瞬間、僕の心拍数は爆発的に跳ね上がった。
コンクリートに囲まれた密室。
そして、中央の檻には、全長10メートルの黒いワニ。
口を閉じてはいるけれど、牙の存在感は強烈だった。
檻があるとはいえ、それが“永遠”に続く保証はどこにもない。
「くそ……どうすれば……!」
僕は金庫から取り出した紙をもう一度見つめる。
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「悪いワニは 黒くなるが 裏切られて死ぬ」
「」は誰を意味しているでしょうか?
制限時間は2分。回答は1回のみ。大きな声で。
正解→開放。間違い→喰われる。
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「悪い」「ワニ」「黒」「裏切り」「死ぬ」……
頭の中でキーワードを何度も繰り返しながら、心の中で叫んだ。
「なんだよこの問題……!!答えなんか……あるのかよ……っ!」
身体が震える。額から汗が噴き出す。
そのとき、再び放送が流れる。
「残り時間は、1分です。」
「……!」
焦りが、冷静な判断を飲み込もうとする。
視界が狭まっていく感覚。
「わかんない、わかんないってば……!」
僕は天井に向かって叫んだ。
けれど、返事はない。ただ巨大なワニの低いうなり声だけが返ってくる。
「くそっ……このままじゃ喰われる……!!」
だが、次の瞬間――
脳内で、何かが“つながった”。
(悪いワニ……黒くなる……裏切り……死……)
(黒……スーツ……裏切り……あまねさん……死……2人……)
(そうだ、あの時……僕の目の前で死んだのは……!)
――Bad社長とあまねさん。
彼らが象徴するもの。
「……会社だ……」
(この問題は、“比喩”だ……そういう意味なら……!)
「わかった……そうか……!」
僕は紙を手に握りしめ、腹の底から声を張り上げた。
「答えは……Bad情報技術会社だ!!!!」
直後、静寂が走った。
ワニが少しだけ身じろぎする。
呼吸を止めて、僕は答えの審判を待った。
――カチリ。
不意に、部屋のロックが解除される音がした。
「正解です!!! おめでとうございます!!!」
陽気すぎる放送の声が部屋に響き渡る。
「正解したご褒美に、ドアを開けます!!!」
金属音と共に、扉がゆっくりと開いた。
――助かった。
「……よかった……ほんと、危なかった……!」
僕はぐったりとその場に膝をついた。
けれど、すぐに立ち上がる。
(でも……彼らはもう……)
思い浮かぶのは、Bad社長とあまねさんの最期。
たとえ悪人だったとしても、命が散る瞬間を目に焼き付けた以上、忘れることなどできない。
「……絶対に……終わらせてやるからな、この地獄を……!」
僕は奥歯を食いしばって立ち上がり、再び長い廊下の探索へと足を進めた。
――To be continued




