第31話「インフィニティ領グアム研究所」
――視点は変わる。
世界で最も青く美しいはずだった島、グアム。
その中央に位置する“インフィニティ領グアム研究所”の地下深く、重々しい空気が漂う会議室で、4人の影がテーブルを囲んでいた。
「……堺軍隊基地を含む堺市は、ゾンビの大群に包囲されております」
低い声で淡々と報告するのは、天野日佐知香。
小学生離れした知性と冷静さを持つ天才児――だが、今やその瞳に宿るのは冷徹な冷光。
「数日中に、堺市は完全に崩壊する見込みです。予想より早いですね、キャロット様」
「そうか、そうか……それでこそ“実験都市”の名にふさわしい」
椅子に足を組んで座りながら、笑みを浮かべた男。
真紅のスーツに身を包んだ彼こそ――インフィニティ・アイランド部隊 最高幹部、「ブルー・S・キャロット」。
「しかしまぁ、あれだけ仕込んだ最終兵器が、あのクソガキにやられるとはな」
「……あの、キャロット様!!!」
焦ったように走り込んできたのは、かつての仲間・髙橋玲奈。
「最終兵器の“GK-336”が……! 撃破されたという報告が入りました!」
「……ッ!? 何だと……誰がやった!?」
玲奈の口から放たれた名前は、全員の心に刺さるように響いた。
「――“山田太一”です。3ヶ月前の練馬区事件で開発生物をすべて撃破した……あの、“ガキ”ですよ」
会議室の空気が一瞬で凍りつく。
「また……あのクソガキか……!!!」
キャロットが苛立ちに席を立つ。
「まさか、化け物を二度も撃破するとは……どんなバグだ、あいつは……」
天野は手元の端末を軽く操作しながら言った。
「その件に関しては心配ありません。ローラがすでに対処を開始しています。今ごろ“気絶”して、グアムに運ばれている最中です」
「……処理は万全、ということか」
キャロットはようやく落ち着いたように椅子へ戻る。
「だが万が一のため、次の布石も打っておく必要がある。なぁ、博士?」
その呼びかけに応じたのは、闇の奥に座っていた初老の男。
――Big博士。元・日本の科学者でありながら、己の欲望のために道を踏み外した狂気の開発者。
「……そうじゃな。確かに太一は開発生物を撃破した。しかし、ワシが育てた“コピー人間”のほうが強い。問題は“洗脳”の最終段階だけじゃ……」
玲奈が言った。「つまり、もうすぐ完成するということですね」
「そういうことじゃ。魂なき“太一の影”が完成すれば、本物よりも強く、忠実で、壊れにくい」
キャロットは大声で笑い始める。
「ハーーハッハッハッハ!!! さすがだな、Big博士!! この流れ……勝ち確じゃねぇか!!」
天野は再び端末を操作しながら口を開いた。
「数時間後にはローラが“ガキども”を連れて研究所に到着します。全員、研究施設にある“屋敷城”に収監予定です」
「“屋敷城”……」
玲奈がぼやく。「また、あれを使うんですか? あのトリックは……初見殺し極まりないですよ」
キャロットはニヤリと笑って答えた。
「いいじゃねぇか。どうせガキどもには解けやしねぇ。知ってるか? あそこは、3つの時間制限トラップと5つの心理型パズルが組まれてるんだぞ?」
「……やりすぎです」
天野が肩をすくめる。
「それに太一は、もう限界だよ。仲間も失って、身体もボロボロで、精神もギリギリ。今度こそ、“バッドエンド”ってやつさ」
「……倒せるもんなら、倒してみろ」
キャロットは立ち上がり、天井のライトに顔を照らしながら叫ぶ。
「俺は逃げねぇ、屈しねぇ!!
なぜならこの俺は、“インフィニティ・アイランド部隊 最高幹部”――
ブルー・S・キャロット!!!」
その咆哮は、グアムの地の底にまで響いていた。
そして――運命の駒たちは、再び動き出す。
――To be continued.




