第19話「悪夢は帰ってきた…」
第1章 総括
2005年7月20日――
東京都練馬区。
突如として発生した“原因不明のパンデミック”。
人々は、感染すればゾンビ化し、二度と元には戻らなかった。
街は崩れ、炎が立ち、叫びと血の色で染まった。
しかし――その地獄を、生き延びた者がいた。
わずか5人の小学生たち。
その中の1人、山田太一は、後に記者にこう語っている。
「僕達はこの地獄を、生還しました。
学校の地下には、研究所がありました。
そこを作ったのは――インフィニティ過激派組織。
その中には、友達や……祖父までもが含まれていました。
だけど僕達は、決して諦めません。
何があっても――どれだけ裏切られても――
諦めたりはしません!!!」
……だがその言葉は、国にとっては“都合が悪かった”。
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視点は変わる。深夜のハイウェイ。
大型トラックを走らせる2人の運転手が、会話を交わしていた。
「なあ……聞いたか? 今、俺たちが運んでるガキ共の話」
「……ああ。生き残った小学生だろ?」
「5人のうち、1人は乗ってねぇ。幼すぎて、施設で保護されたらしいぜ」
「……名前、山田太郎だったな。小1だってさ」
「それより、もう1人が気になる。山田太一」
「……あの記者会見の子か。“犯人はインフィニティ”って言ってたよな」
「バカみてえだよな。**証拠もなしに、国家犯罪を告発するなんてさ」」
「……国が悪い。どうせ上層部が全部隠してるんだよ」
「かわいそうに……家族も友達も、何もかも失って……」
車は夜の高速を静かに走っていた。
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2005年10月27日
大阪府堺市・軍事基地 1階 収容棟
3ヶ月の拘留。
その中心にいるのは――山田太一。
「……また、取り調べですか」
2人の兵士が、冷たく命じる。
「言ったよな、ガキ。証拠も無いのにベラベラ喋るなと」
「逃げ出したらどうなるか、分かってるよな?」
「牢屋には便所も漫画もテレビも風呂もついてる。“特等席”だぜ」
「……ここを出たければ、“本当のこと”を言え」
扉が閉まる。
“国家の都合に合った真実”を言わなければ、自由は与えられない。
それが、“正義の国”のやり方だった。
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回想の中の地獄
太一は、誰の顔も見ていなかった。
田中も、井上も、小野も、太郎も。
「僕たちがあの日、何を見たのか。
どう生き延びたのか。
誰を……信じて、裏切られたのか……」
何一つ、誰も聞こうとはしなかった。
「なんで……大人は信じてくれないのかな……?」
声は震え、目は潤む。
> 「僕たち子どもが言ってることは、
“本当のこと”じゃなくて、“理想のこと”だと思われてるんだ……」
――そのときだった。
廊下から、足音が近づいてきた。
(誰かが来る……?)
扉のロックが、カチン――と外れた。
現れたのは、1人の兵士。
……だが、その腕には――牙跡。
服は裂け、腕は血に濡れ、目は虚ろ。
「……にげ……ろ……ここは……あぶな……い……」
「えっ……?」
「かん……りしつ……なら……なんとかな……る……から……」
兵士は、そのまま倒れた。
「大丈夫ですか!? しっかりして!!」
だが――
「ヴァアアアアア!!!!」
次の瞬間、兵士の顔が、ゾンビへと変貌した。
「……嘘だろ……」
まさか――再び、感染が……!?
叫ぶ間もなく、太一は全力で走り出した。
また、あの日のように――
悪夢は、まだ終わっていなかった。
いや――
“第2の地獄”が、ここから始まるのだった。
To be continued...