第14話「裏切り者と爺」
玲奈を探して、僕は研究所の中を駆け回っていた。
すでに調べた部屋も、もう一度くまなく確認していく。だが、どこにもいない。
気づけば20分以上が経っていた。
疲れた呼吸を整えながら、長い廊下を歩いていると、前方から誰かが現れた。
その姿は――髙橋玲奈だった。
「いたっ!」と僕が声を上げると、玲奈は少し申し訳なさそうな顔で微笑んだ。
「太一…ごめんね。連絡できなかった。ここ、電波が悪くて…。」
「大丈夫だよ、玲奈。それは仕方ないことだ。」
「ううん、本当にごめんね。でも、ね――地下2階に大きな部屋を見つけたの。行ってみない?」
玲奈の提案に僕は頷いた。
「行くよ。玲奈が言うなら、一緒に行ってみよう。」
「ふふ、それじゃあ、エレベーターで降りましょう。」
二人はエレベーターに乗り込み、静かに地下2階へと降りていく。
そしてエレベーターの扉が開いた瞬間、玲奈が少し恥ずかしそうに言った。
「太一…私のこと、守ってくれない? ゾンビが出たら、私…喰われちゃうかもしれないし。」
彼女の言葉に、僕は思わず頬を赤く染めながら答えた。
「わ、わかったよ。僕が前を歩けばいいんでしょ?」
「うん…お願い。」
そして、僕たちは静かな地下通路を歩き出した。
やがて、玲奈が言っていた“大きな部屋”の前にたどり着く。
その瞬間だった。
「――両手、挙げてくれない?」
聞き慣れた声。しかし、口調がまるで違っていた。
「逆らったら、撃つよ。」
何が起こっているのか理解できないまま、僕はゆっくりと両手を挙げて振り返る。
そこには、無表情で銃を構える髙橋玲奈の姿があった。
彼女の目に、もはや僕が知っている優しさはなかった。
「……玲奈?」
「動かないで。」
その時だった。
「ガチャッ、キィィィィィィィ!!!」
重厚な音を立てて、大きな扉が開いた。
思わず前を向くと――そこには、見覚えのある男の顔があった。
白髪まじりの乱れた頭、丸いメガネ、大きく笑ったような口元――
「……Big博士……?」
僕の祖父。
信じられないものを見た僕は、その場で言葉を失った。
「……はあぁ………………?????」
混乱と裏切りが、僕の中で渦を巻いた。
――To be continued