第13話「発覚」
僕たちは、太田の遺言を胸に、さらに地下へと進んだ。
重く静かな空気の中、やがて僕たちの前に白く輝く建物が現れた。
「本当に……これが研究所なのか、翔?」
田中が訝しげに建物を見上げながら問う。
「うん。たぶん、だけど……間違いないと思う。」
井上は頷きながら、かすかに顔をしかめた。
「とりあえず、入ってみようよ。」
高橋が前を見据え、意を決したように言った。
「……あぁ、そうだな。」
田中もうなずくと、6人は重々しい扉を押し開け、建物の中へと足を踏み入れた。
内部はまさしく「研究所」そのものだった。
無機質な壁に囲まれ、無数の部屋が並び、階段とエレベーターまで完備されている。
まるで、人間の理性と狂気が混在した、そんな不気味な静寂が漂っていた。
「すごい!!すごい!!」
太郎は目を輝かせながら走り回る。
「……完全に研究所じゃん。」
高橋が呟いた言葉に、小野も静かに同意した。
「そうですね……。」
彼女の声にも、わずかに緊張が滲んでいた。
「部屋が多すぎる。手分けして調べよう。」
井上が提案し、太一もそれに賛成した。
「うん、そうしよう。」
6人は二手に分かれ、探索を始めた。
太郎は小野さんとペアを組み、僕は1階の部屋を一つずつ確認していった。
だが、いくつ調べても何も見つからない。ただの空き部屋ばかりだった。
――諦めかけたその時だった。
最後に残った一室の隅に、埃をかぶった1台のパソコンが置かれていた。
「……これだけ、様子が違う。」
電源を入れると、パスワードの入力は求められなかった。
簡単にホーム画面へと辿り着いた。
そこには、1つだけぽつんと存在するファイル。
《研究発表》
マウスをクリックすると、ダウンロード済みの資料が自動で開かれる。
そして、モニターに表示された内容を、僕は息を呑みながら読み進めた。
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「研究発表」
1970年5月27日
この度「インフィニティ過激派組織(IN)」は、
生物や人間をゾンビ化させる開発に成功しました。
1.「ゾンビ」
人間がウイルスに感染した姿。集団行動で襲ってくるのが最大の特徴。
2.「D-41」
犬がウイルスに感染した姿。異常なスピードで接近し、一瞬で噛みつく。
3.「C-97」
ゴキブリが感染した姿。毒液を発射しながら突進してくる。
4.「C-257」
カメレオンが感染し巨大化。一定時間透明化し、姿を現した瞬間に攻撃。
5.「G-180」
ゴリラが感染した姿。爆発以外の攻撃がほとんど効かない、凶暴性を極めた存在。
6.「G-315」
人間が感染し巨大化した姿。極めて凶暴で、第2形態を持つ。
以上で「研究発表」を終了とします。
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モニターは暗転した。
僕は、しばらくその場で立ち尽くしていた。
信じられない――
「インフィニティ過激派組織」……あの“マイアミ事件”を引き起こした張本人たち。
「……まさか、ここがその研究所……?」
恐怖と混乱が一気に押し寄せた。
僕は慌てて他の5人に通信を入れる。
だが――
「……っ!?玲奈だけ、繋がらない!?」
どういうことだ!?なぜ高橋だけ……?
「まずい……っ!」
僕は勢いよく椅子を蹴って立ち上がると、部屋を飛び出し、玲奈の捜索に走り出した。
彼女は今、どこに――?
To be continued