第12話「さらに地下へ」
ようやく、道の入口まで戻ってきた。
けれど、そこには安堵の空気などなかった。仲間たちの声が飛び交い、何かが起きたことを僕に告げていた。
「おい!! 太田!! しっかりしろ!!」
田中の怒鳴り声が耳に刺さる。
「一体なにがあったんだ!!?」
井上が叫び、
「小野さん…これは大丈夫なの?」
高橋の声が震えていた。
「ふとおにいちゃん…すくえるの?」
太郎が小さくつぶやく。
小野は顔を曇らせながら首を振った。
「体全体に深い傷…両目が潰れている…私でも手の施しようがないです…ごめんなさい。」
その言葉を聞いて、僕は全速力で駆け寄った。
血の気が引く。目の前には、瀕死の太田が倒れていた。
「おい!! 太田!! どうしたんだよこの傷!!」
井上が声を詰まらせる。
「太ちゃん来たの…太田の奴…見つけた時には…もう…。」
「翔!! てめぇ!! 情けねーこと言ってんじゃねーよ!! まだ息はあるんだぞ!!」
田中が吠える。
「そうよ!! まだ息は止まっていないわ!!」
高橋も叫ぶ。
すると、太田がかすかに身じろぎし、唇を動かした。
「ここは…どこだフ…?」
「目、覚ましたのか太田!! 俺だ!! 俺だよ!! 勇気だ!!」
田中が顔を近づけて叫ぶ。
「勇気…本当に勇気なのかフ…?」
「翔だ!! 聞こえるか太田!!?」
「私よ!! 玲奈よ!!」
「聞こえるか太田!!? 太一だ!!」
懸命に声を届けようとする僕たちに、太田はゆっくりとうなずき、小さく笑った。
「みんな…生きでたんだねフ…。
最期に言いたいことがある…フ…。
お前らの中に…裏切り者がいるでフ…。
絶対に死ぬなよ…フ…。
それと…もう1人の裏切り者は…日佐知香だフ…。」
その言葉を残し、太田の体から力が抜けていった。
目を閉じ、二度と開くことはなかった。
僕たちは言葉を失った。
「この中に…裏切り者…嘘だろ!!?」
田中が叫ぶ。
「冗談だよね…?」
井上が信じられない様子でつぶやく。
「誰!!? 裏切り者は!! 白状しなさい!!」
高橋の声が鋭く響いた。
「うらぎりものってなに?」
太郎が不安げに聞く。
「敵側に加わるってことです…。」
小野が静かに答える。
僕は覚えている。あの時の光景を、声を。
「僕、さっき…日佐知香見たんだ…通信機で誰かと話していたんだ…。」
「なんて言っていた!!? 教えろ太一!!」
田中が詰め寄る。
「『資料を収集しました』って…そう言ってた…。」
すると、井上が立ち上がり、真剣な眼差しで言った。
「僕…見つけたんだよ…さらに地下への道を…。」
「もっと奥深く!? どんな感じだったの?」
高橋が尋ねる。
「全然洞窟っぽくない…むしろ、研究所だったかもしれない…白い建物…。」
「行こうよ…とりあえず、その白い建物に。」
僕は迷いなく言った。
「なにかあるかもしれないですからね。」
小野も頷く。
「とりあえず!! 出発だ!!」
僕は叫ぶ。
「そうだ!! こんなところで萎える俺達じゃえーーーぜ!!!」
田中が拳を突き上げる。
「そうよ!! 行かないと後悔するかもね!!」
高橋も笑う。
「いこういこう!!! たのしみたのしみ!!」
太郎の声が弾む。
「それじゃ!! 行くぞ!!」
井上の合図と共に、僕たちは再び歩き出した。
目指すは、さらに深い地下——
そこには、真実が待っている。
――To be continued.