第11話「罠」
超巨大クモが唸り声のような奇声をあげながら、こちらに襲いかかってきた。
「プシャーーー!!」
突如として、あいつの腹部から何かが発射された。反射的に身を捩って回避する。
——糸だ。しかも尋常じゃない量。
「おい嘘だろ!!こんな量の糸を発射してくんのかよ!!」
空気を裂いて飛んでくる白い束。僕はギリギリのところでそれをかわし、地面を転がるようにして距離を取った。張り詰めた糸が壁や床に突き刺さり、あたりの空間はまるで蜘蛛の巣に包まれたようになる。
(こいつ、普通じゃない…どうすりゃいいんだ…)
次の攻撃を予測しながら、僕は必死に考える。逃げ場は限られている。このままではジリ貧だ。
ふと、背後に視線を向けたとき、そこに小さな水溜りがあるのを見つけた。
その瞬間、頭の中で電流が走る。
(そうだ!!思い出したぞ!!クモの弱点!!)
クモの一部は、水に弱い。濡れると動きが鈍くなり、体が縮む——生物図鑑で読んだ知識が蘇る。
「やるしかない…!」
僕は水溜りの前に腰を下ろし、両手で水をすくって、できる限りの力で超巨大クモに向けて水を投げつけた。
飛び散る水が、奴の脚や胴体にかかる。
するとどうだろう。あの化け物は、まるで電気を流されたようにビクッと身を震わせ、ゆっくりと体を縮め始めたのだ。
「効いてる!!」
すかさず僕は立ち上がり、震える手でハンドガンを構える。
「これで終わりだ!!」
「バン!! バン!! バンバンバンバン!!!!」
トリガーを引きまくった。何発も何発も、クモの頭に弾丸を撃ち込んでいく。
やがて、クモの体が大きく仰け反り、ゆっくりと崩れ落ちた。
……動かない。
息を殺し、しばらくその場に立ち尽くした。ようやく、静寂が戻る。
「……とりあえず…集合場所に…戻ろ…。」
疲労に足を引きずりながら、僕は大きな穴を抜け、元来た道の入口へと歩き出した。
この戦いは、ほんの序章にすぎない。
――To be continued.