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あの夏の  作者: 緑茶猫
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雨雲

目が覚めると隣に妹はいなかった。

カンザクラもいない。まるで最初から何もなかったかのように。

でも確かに記憶にはある。カンザクラが化け物と共にいる姿が。

(もしかしたらカンザクラは妹が何処に行ったか、もしくはどうなったか分かるのでは?)そんな淡い期待が脳裏を過った。確証なんてない。それでも唯一多くの情報を持っているはずのカンザクラに聞くしかない。会ったとして知っているか、それとも教えてくれないかもしれない。

(それでも僅かながらの可能性があるのなら···)

広大な砂漠からひとつの砂粒を見付けるような確率だったとしても···

「···探そうにもカンザクラの情報もないしな···」

とりあえず神社に戻ろう。そんな独り言にも今は返事はなかった。

走って神社に戻る途中、神社から異様な気配を感じた。

「神社ではお祭りの最中のはずだけど」

「それに父さんもいるはずだし···」

帰路を進めば、神社の鳥居が見えてきた。鳥居を見るといつも安心する。鳥居から先は神様の領域のような気がして安心できるからだ。すると鳥居の前に何かがいる。よく見ると身長の高い女性のようだ。白い雲のようなワンピースを着ている。だが近付けば近付くほど異常さがあとを追って脳に認識させる。

身長は約2m以上で白い花冠の飾りの付いた帽子を深く被り、長い黒髪を風になびかせ、静かに佇み顔をこちらに向けている。都市伝説の八尺様によく似ているが、声を出さない。都市伝説の八尺様は「ぽぽぽ」と言うと聞いたことがあるが、目前にいる女性は何も言わない。そして鳥居の前にいるとはいえ幸いなことに鳥居の柱近くに立っている。うまくやれば女性の横を通り抜けられるかもしれない。そうやって通り抜けようとした時、女性が立っていた方向から父さんの声が聞こえた。

「湊介、そこで何しているんだ?」

反射的に横を見てしまった。普段であればそんなことはしなかっただろう。不安感、心細さからつい、返事をしてしまった。

「父さん!?」

鳥居の柱近くに佇んでいた女性と目があった。女性は美しく妖艶な顔立ちでこちらに微笑みかけているが、その微笑みから一転、口が裂けて微笑はケタケタと言う不気味な笑顔に変化した。


湊介は今まで見たこともない妖怪に恐怖を強く持った。だがこの化物をどうにかしなければ、神社に入ることは出来ないだろう。何故なら妖怪が鳥居の中央に立ち塞がったからだ。奏介は立ち向かう覚悟を決める。しかし奏介は足がすくみ、動けない。まるで蛇に睨まれた蛙のような気分だ。圧倒的な実力差を感じ取り動けずにいる。すると、神社の方から大きな足音が聞こえる。突然、空が暗くなる。いや大きな影が現れたのだ。奏介は驚きのあまり声も出ない。そんな奏介を横目に、大きな影は妖怪に飛びかかり、襲いかかった。妖怪もただで負ける気もなく反撃を繰り出すが、呆気なく大きな影に引き裂かれた。そして、妖怪は大きな断末魔を上げ消え去った。妖怪を襲った大きな影は、奏介の目の前に座る。よく見ると狛犬の様だ。

「まさか···神社の狛犬···?」

狛犬は奏介を見ると、首根っこを咥え、神社の中に走り出した。奏介は有無も言えずにいると、神社の本殿で祈る父親と本殿の前で心配そうにしている母親のの姿が見えた。

「···!」

狛犬の足音が聞こえたのだろう。母親の勢いよく振り返り、走ってくる狛犬の方に走り出す。

「狛犬!よくやったわ!偉いわね!」

母親は嬉しそうに狛犬を褒めると、すぐに奏介を見ると不安そうに訪ねる。

「奏介···無事たったのね。よかったわ!もう!突然いなくなったら駄目よ?」

「きっと貴方は霊力が強いから呼ばれて、付いていってしまったんじゃないの?」

「駄目よ!もう知らない人と知らない幽霊や妖怪に付いていったら。」

ものすごい速さで捲し立てる様に口から溢れる言葉は、とても心配していたことを証明するには十分だろう。だがすぐに母親は表情を変える。

「ねぇ、奏介···金華は何処に?」

「···」

奏介は答えずにいる。安心したからなのか、声がつまってなにもでない。気が付けば大粒の涙が溢れ出す。

「奏介···大丈夫よ···神社の中は安全だから···」

母親は優しく抱き締めると優しく言葉を紡ぐ

「きっと怖い思いをしたのね。でも大丈夫よ。金華だって強い子よ。それにあの子はうちの神社の家系でも特に神様の声が聞こえるほど強い繋がりを持てる子よ。きっと神様が守ってくださるわ。だからきっと大丈夫よ。」

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