表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/6

05 勇者情報

「魔王様、急報です!」

「こんな時間にどうした?」


 緊迫した副官の声に、魔王はカトラリーを置きました。


「勇者の情報が入りました!」

「なに?!本当か?!」

「はい。神聖剣を持っているとの事で、間違いございません」

「よし!でかした!それで、どの様な情報なのだ?」

「勇者はかの村におります」


 魔王はちょっとイヤな顔をします。


「聖女と賢者の村か」

「はい」

「村には潜り込めないのではなかったか?」

「正確には人間を潜り込ませましたが、村から出ては参りませんでした」

「まあ教育期間も短かったし、寝返られても仕方ないな」

「それがどうやら違いまして、手の者は村に侵入した途端に見付かり、処刑されたそうです」

「そうだったのか。なぜバレたのだろうな?」

「それが、外から村に入り込んだ者は、見つけ次第に問答無用で殺しているそうです」

「はあ?なぜ?」

「閉鎖的な村で、ヨソ者は嫌いだとの事でした」

「そう言うものなのか?」

「どうでしょうな。他の村や町では聞かぬ話ですが、確認させます」

「では勇者の情報はどの様にして手に入れたのだ?」

「村の結界への飽和攻撃が功を奏し、一部の綻びから中への侵入に成功いたしました」

「おお!とうとう破ったか!」

「はい。ただしすぐに押し返され、今はまた結界の穴は閉じられております」

「構わない。ここまで破れなかった結界が破れたのだ。聖女もやはり疲れるのだと言う証拠であるし、一度破られたとなれば、今後は余計に神経を使うだろう。前線の者共には褒賞を用意しろ。それとは別に前線に褒美を贈っておけ」

「畏まりました」

「それで?侵入した時に勇者の情報を掴んだのか?」

「いいえ。中で村人達を捕らえ、それを結界の外に連れ出して、情報を得たのです」

「良くやった。その村人共を魔王城に連れて参れ」

「それが、情報を聞きだしている途中で賢者が出て参りまして、村人達を焼き払ってしまいました」

「焼き払うと言うのは、人間に対して使う言葉ではないだろう?」

「そうですな。しかし賢者の行いは焼き払いだった模様です」

「村人達は助からなかったのか」

「はい。体の内部から炎が上がったそうで、消火が出来ませんでした」

「魔族は賢者にやられなかったのか?」

「村人を守ろうとした者達が、犠牲になっております」

「・・・そうか。手厚く葬ってやってくれ」

「畏まりました」


 魔王と副官の間に、しばし沈黙が澱みます。


「それで?勇者の情報は他に何かあるのか?」

「はい。勇者はあの村で生まれたそうです。日々剣の鍛錬と、剣の手入れを行っているそうです」

「剣の手入れ?」

「はい」

「神聖剣なら我が魔邪剣と同じで、加護から形作(かたちづく)る物だから、手入れなど不要の筈だが?」

「どうなのでしょう?知らぬのかも知れませんな」

「そんな事があるのか?神聖剣を顕現出来るなら、自然と分かりそうだが」

「そうすると、もしや、偽者でしょうか?」

「そうかも知れんが、間もなく王都が落ちようとしているこの状況で、勇者が現れないのだぞ?他ではもう現れんだろう?それに村に籠もっているなら、わざわざ勇者を騙る必要もあるまい?」

「それもそうですな」

「しかし勇者か。面倒だな。本物なら物量では倒せんぞ」

「魔邪剣、つまり魔王様がかの村まで出向かねばなりませんな」

「勇者を倒すならな」

「はい」

「・・・よし。飽和攻撃を中止させろ」

「・・・よろしいのですか?」

「ああ。勇者を相手にしたら、無駄に戦力を消費する事になる」

「しかし攻撃を止めたら聖女が回復してしまいますぞ」

「それもそうだが、そうだ!賢者のやっていたしっぺ攻撃。飽和攻撃の代わりにあれをやらせろ。結界の周囲を囲ったまま、あちらこちらからペシペシと絶え間なく結界を(つつ)け」

「なるほど。まれに大き目の魔法で攻撃したりするのもありですかな?」

「お、それは良いな。無理しない様に、飽くまで遊びの範囲なら許す」

「畏まりました」

「それと四天王か八将に村の周囲を固めさせろ。もし勇者が村から出て来ても、王都に行くのに時間を掛けさせる為にだ」

「誰でも良いのですか?」

「構わんが、勇者は村から出て来ないと思う」

「そうですな」

「なので戦闘がなくても耐えられる者を宛てがえ」

「畏まりました。普段から戦いたくないと言っている者がおりますので、その中から選びます」

「戦いたくないって、その中からって、複数いるのか?」

「はい」

「良く四天王なり八将なりなれたな」

「戦わずとも、成果を出せば昇進出来ますので」

「そうか。その、複数いるなら複数で当たらせても構わないからな?勇者を足止め出来る事を最優先に選任してくれ」

「畏まりました」


 勇者の事は心配ですが、魔王は気持ちを切り替えました。


「良し。では全力で王都を落とすぞ」

「はい」


 魔王の力強い言葉に、副官は深々と頭を下げました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ