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01 魔王の不安

※詳細な描写はありませんが、殺人に関する記述がある為、R15を指定しています。

「魔王様、報告致します」


 副官の声に魔王は「うむ」と肯きました。


「侵攻は順調です。進行速度は徐々に上がっております」

「そうか。主体をゾンビからスケルトンとグールの混成チームに切り替えた効果が表れたのだな?」

「はい。魔王様の策、見事でございます」

「だがデメリットの方はどうだ?」

「グールを作るのはやはり、ゾンビよりはコストが掛かっております」

「そうか。やはり作るのは大変か」

「しかし進行速度が上がりましたので、材料入手もますます容易になるかと」

「そうだな。自転車操業の様で、少し気に掛かるが」

「自転車操業とは言い得て妙。さすが魔王様。確かに我が魔王軍は、立ち止まったらコケますからな」

「褒められても喜べんな」

「しかしスケルトンの(ほう)は、肉を魔獣達の餌とするラインが整いましたので、材料入手が容易になれば生産も安定致します」

「そうか。それは何よりだ」


 魔王は満足そうに肯きましたけれど、ふと表情を曇らせます。


「勇者の情報は入ったか?」

「いえ、一向に」

「魔神様のお告げに間違いはない。どこかで勇者が生まれた筈なのだ」

「はい。しかし逃げる人間達からは情報を集められません。捕まえたら殺してしまいますし、グールにしてからでは生前の記憶をなくしておりますので」

「スケルトンはそもそも脳がないしな。何とかならんのか?」

「人間の町に手の者を潜り込ませてはいるのですが、人間はみな魔王様の事は恐怖を以て口にしますが、勇者の情報は出て参りません」

「尋ねてはいるのだな?」

「はい。尋ねても、知っていたらもう助けて貰っている、との答が返るばかりです」

「確かにな。少し急いで攻め過ぎたか?」

「そうですね。人間は逃げるのに精一杯。勇者を望んでヤツらの神に祈る暇もないでしょう」

「のんびりしてるヤツはグールやスケルトンになるしな」

「そうですね。残らず材料です」


 歴代の魔王は勇者に倒されました。

 しかしどの様に倒されたのか、魔王の手元には情報がありません。

 人間に伝わる伝説では、単身か数人の仲間と共に魔王城に乗り込んで来て、魔王を倒した事になっています。

 しかし以前の魔王も魔王軍は持っていた筈です。それなのに勇者が少人数で魔王城に忍び込めるなんておかしいです。いくら勇者だからって、魔王を倒す前に魔王軍を殲滅したりは出来ていないでしょう。それとも勇者と言うのは軍隊なのでしょうか?

 魔王や魔王軍が魔神の加護を受ける様に、人間の信じる神の加護を受けた勇者という名の軍隊が責めて来るのでしょうか?


「王都やその先からも情報は集められるか?」

「時間は掛かりますが」

「構わない。勇者に付いてだけではなく、人間共の神の加護を受けた者の話も集めてくれ」

「畏まりました」


 話を集めるのに時間は掛かるでしょう。しかし魔神が告げたのですから、勇者は必ず生まれています。

 そこでふと、魔王は思い付きました。

 もし勇者が既に、グールやスケルトンの材料になっていたら?

 既に死んでいたら、いつまで探しても見つかりません。

 しかし見つからないのは不安です。急に魔王の前に現れないとも限りません。


 もしこうやって魔王に不安を与えるのが勇者の策だったとしたら、すっごくイヤだと魔王はゲンナリしました。

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