innocence
https://www.youtube.com/watch?v=D8DMw1-a6RA
遠い昔に読んだことがある一冊の絵本。
そこには一人の女の子が描かれていた。
1人の少女が仲間と力を合わせ、辛く長い道の先に、優しい王子様と幸せに暮らしてめでたしめでたし。
そんな、どこにでもありふれているおとぎ話。
珍しさや特別に面白いものはなかったけれど、私の記憶にはその本の内容が焼き付いている。
ある日私は、ヒトではなくなった。
この身体は刻みを止めた。
世界から忌避され、遠ざけられる。
そんな植え付けられた運命によって、私の命は色を失った。
知らない顔が私を化け物と呼んだ。
化け物である私を排除しようとする。
命がまた一つ消えた。
知っている顔も化け物と呼び始めた。
誰もが私を殺そうとする。
たくさんの命が壊れた。
私は一人になった。
そこには仲間などいなかった。
そこにあるのは、赤く染まった雪と足跡だけ。
全てを失った純粋な白と、全てを奪った醜悪な赤。
罪の証のように続いているそれらが、私をここに縛り付けている。
脚は凍り付いたかのように重く、それ以上進むことを忘れてしまった。
人としての幸せは既に忘れてしまった。
ただ、遠い昔に読んだことのある絵本。
いつだかこの体に流れていた温かい記憶。
誰とも交わることのないこの道から、私を救ってくれる日を待ち続けている。