14話ー➃ 天上神界最強!十神柱序列1位に?
僕らは再びギルドを訪れ、魔道神ソロモンに今回の顛末を報告していた。
「なるほど……話は分かったよ。つまり、黒龍に直接狂化を埋め込んだ誰かがいるということだね?」
「はい、そうです。今回、その星の動植物や地面には狂化ウイルスの痕跡が一切見当たりませんでした。」
魔道神ソロモンはしばらく考え込んだ後、重々しい口調で僕たちに言った。
「そもそも黒龍があの惑星にいたこと自体が不審なのさ。誰かに連れてこられた可能性が高そうだね。だけど……何のために?」
「…………」
何のためか……
検討もつかない。陽動にしてはお粗末だし、破壊目的にしては計画性が無さすぎる。
そう考え込んでいると、再び魔道神ソロモンが口を開いた。
「そもそも、狂化ウイルスでない可能性も高い。我々は便宜上、狂化と近いからそう呼んでいるだけだが、今回は未知のものかもしれない。」
「……それこそが狙いだったりしませんか?」
そもそもこれは、意図的に狂化に症状を似せて、我々にそう思い込ませようとしている可能性があるのだ。
もしそうだとすれば、私たちは相手の思惑通りに動かされていることになる。
巧妙に仕組まれた罠に気づかずに、その狙いを見抜くことができなければ......
この状況を打破するどころか、知らぬうちにこちらが追い詰められていく可能性も高くなってくる。
「なるほどね。ルークくん、その可能性はあるかもしれないね。こちらに間違った対応をさせようとしているって訳ね……」
「はい。狂化ウイルスに似せることで、我々に間違った対処をさせようとしている。そんな可能性も大いに考えられます。」
前回のベヒーモスの件も同様だ。
僕はキノコから広がったと予測したが、それ自体が巧妙なブラフである可能性も捨てきれない。
敵は意図的に情報を誘導し、神界を混乱させようとしているのかもしれない。
もしそうならば、現時点で僕たちは敵の手のひらで踊らされていることになる。
この策を見破り真の意図を見抜かなければ今後、天上神界の平和を揺るがすキッカケになるかもしれない。
「……事は深刻だ。彼女にも一応話を通しておこう。」
「彼女?」
魔道神ソロモン様から放たれる雰囲気が、いきなり重くなった。
恐らくこれが十神柱としてのソロモン様の姿なのだろう。
「天上神界最強の神。十神柱序列1位……黄金神アウルフィリアさ。あの人ならどんな不測の事態も対応できる。」
天上神界最強……黄金神アウルフィリア。
一振りで宇宙を一つ破壊できる、とも言われる規格外の女神だ。
彼女はこの天界の最終兵器にして最高戦力。最後の砦......
今この神界が存続しているのは、アウルフィリア様のおかげと言っても過言ではない。
その強さの秘訣は完全に謎に包まれている。
伝説の先代全神王ベルロット様でさえ、武力という一点においては、彼女に触れることさえできなかったと言われているほどだ。
「一応、アファルティアに話を通しておくよ。あの二人は仲いいからね。」
「……そうなのですか?」
「天上神界に帰還している期間が被ると、大体会っているしね……ついこの間はスイーツ巡りをしてたよ。まぁ……あれはアファルティアが連れ回しているだけだと思うけどね~。アウルフィリアは基本お堅いからさ。」
うん?全然知らなかったぞ。
その話は一体どういうことだ?
アファルティア様がアウルフィリア様とそんなに仲がいいのか?
アファルティア様は神々の中では強力だが、十神柱の中では下位の方だ。
十神柱は序列によってかなり明確な実力差があるとされている。
それ故に、アウルフィリア様と関わりがなくともおかしくはない。
アファルティア様の天上神界における、影響力を改めて実感させられたのだった。
「とりあえず今日の報告は終わりでいいよ。ささ、僕も色々やることができてしまったから、ルークくんはお帰り。」
「はい。本日はありがとうございました。それでは退室させて頂きます。」
僕はその足で直接家に帰ることに決めた。
天上神界が置かれている状況から、今後の方針について改めて考える必要があると強く感じたのだった。