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65話ー⑤ 矛盾する概念生命







 ――ルシアが行こうとしたその瞬間、彼の声が再び頭の中に響いた。



【おい......待て。ゼレス来てんのか?】


「何よ今更!!四代目全神王様の許可が無くて、ここに入れるわけないでしょ!!」


【四代目......? ゼレスが......全神王?】


「情弱なのね!!そんな事も知らないのかしら?」



 ルシアの苛立つ声が、場の張り詰めた空気に小さな亀裂を生む。

 しかし、彼女が気づかないうちに、その場の雰囲気は一変していた。

 圧倒的な存在感がじわじわと広がり、僕の背筋を冷たい何かがなぞる。



【今すぐ俺の封印を解け......ゼレスじゃここには辿り着けない。】


「ど、どういう事よ......」


【そもそも何でお前ら来れたんだ?どんな精神力してやがる......】


「私は気が付いたらここにいただけ......」


【いいから早く封印を解け!!ゼレスが消えちまう!!】


「な!?」



 なるほど......少しずつ全体像が浮かび上がってきた。ここは、あの「果て」に酷似している。

 自身の存在を強く保つことができなければ、きっと無限の深淵へと飲み込まれてしまうのだろう。

 使えない魔力、断ち切られた根源の繋がり、そして第六惑星の遺跡が示唆する異質な真実......

 これら全てを結びつけた仮説が、一つの可能性を示している。


 今、僕たちは――肉体を捨てた精神体だけの存在になっているのではないだろうか。

 この場はきっと、物理的な身体では決して到達できない、異界の領域なのだ......



【刺さったこの剣......液状の深淵「リキッドアビス」を抜いてくれ!!】


「わ、わか......」


「待ってルシア。」



 ――僕はそんな彼女を制しした。



「え?」



 これはチャンスだ。今彼は自分の信条さえ、無視するほど切羽詰まっている。

 もう今後、僕たちがこれほど強大な存在に対して優位な立場に立てる事はもうないだろう。



「何の見返りもなく、僕たちが君の剣を抜く理由がどこにある?」


【なに?お前らの王が消えかけてんだ。見殺しに......】


「それをどう信じろと言うんだ?今までの全てが君の自作自演である可能性だってある。」


【ふざけんじゃねぇ......お前らの全神王なんだろうが!それが消えたらどう責任取んだよ!】



 言い分は一理ある......ような気がする。

 しかし彼を完全に信頼するには、あまりにも情報が無いのは紛れもない事実だ。

 ちなみに僕は直感的に彼が信頼に足ると感じているのだが......


 今の発言とやりとりから、彼は嘘を見抜く類の能力は備わっていない可能性が高い。

 僕は続けて彼に話を持ち掛ける。



「知らないのか?今、四代目の支持率は33%まで低下している。そして三代目の頃の機密も全て解除されている。」


【ゼレスが死んでも、国民が悲しまないとでも言うのか?】



 僕は一呼吸置いてから答えた。

 これまでの話は本当だが、ここからは完全に僕の作り話だ。



「違うよ。そして責任を取って彼女は国民ととある魔法契約を結んだ。」


【国民と魔法契約?】


「もし次に民意と違う政策を通したら、飲み込んだ爆薬を起爆させて死ぬ。そういう契約だよ。」


【は......?そんなこと現実にあるわけが......】



 彼の驚愕を感じながら、僕は内心で微かな笑みを浮かべる。

 この話は完全な作り話だが、四代目の性格を知る僕には、彼女がそれをやりかねないと思わせる要素がある。


 ――重要なのは、嘘か本当かではない。

 この場で彼に「もし本当なら不味い」と思わせること。それこそが、この交渉の勝負どころなのだ。



「どうする?もしヴァラル対策組織に入らないなら、このまま帰って国民には四代目が爆死した、と公表するけど?」


【......汚ねぇぞ。】


「汚い?僕たちには国民をヴァラルから守る責任がある。それに命が掛かってるんだよ。それで答えは?」


【やられたぜ......協力する。だから抜いてくれ。】



 その瞬間、僕たちは無言で彼に近寄り、液体のような剣を引き抜いた。

 剣から張り付いていた無数の目が一斉に閉じ、凄まじい振動が空間を駆け抜けた。

 すると、宇宙空間に走った亀裂がガラスのように砕け散り、景色が変容を遂げる。


 目の前に現れたのは、球状の巨大なガラス空間。

 透明な壁越しに見える風景は、この世界の理から大きく逸脱していた。



【行くぞ。お前らも連れてく、掴まれ!!】


「え?僕たちも連れてくの!?」


「ルーク......離さないでね......」


【グギャァァァァァァァ!!!】


「「!?!?」」



 突如響いた雄叫びは、空間そのものを揺るがすような破壊的な力を帯びていた。

 そして彼の身体が、どんどんと人の形を捨てていく――鋭い五つの瞳、異形の六本指に鋭利なかぎ爪。

 尾は異常なまでに発達し、全身を覆う黒い肌は岩のような凹凸を持つ。耳元まで裂けた口には無数の牙が並んでいた。


 その姿は、もはや「知性体」という概念すら超越した、絶対的な怪物だった。



【グォォァァァァァ!!!見つ......げた、ぞ。】


「マジか......ここまで化け物だったなんて。」


「信じられない圧よ......これは封印の理由も納得ね......」



 彼の身体はさらに膨張し続け、ついに100メートルを超えた。

 全身に開いた口のような器官からは、猛烈なジェット気流が噴出し、空間そのものを崩壊させる。


 そして、その躍動だけで監獄の天井を突き破り、さらに巨大な城塞を衝撃波で全壊させた。



【抑制封鎖・解除、0.06%......】


「ど、どういう事?」


「え?」



 僕は思わず言葉を失った。もしかして彼が言う「0.06%」とは、出力のことなのか?

 もしそうなら外界では一体どれほどの破壊力があるのだろうか?


 ――魔力さえ封じられた精神空間でこれだけの破壊力を持つ存在が、もし外界でその力を解放したら.......

 一体何が起きるというのか、想像するだけで背筋が凍る。


 そして彼はとてつもない速度で深淵を下っていく。



「ルーク......ここは一体何なの?」


「待って、ルシア......意識が保てるの?」


「え?えぇ、私にも理由は分からないけれど......怪獣さんのおかげ?」


「か、怪獣さんって......」



 彼の周囲を見渡すと、幾重にも張り巡らされたシールドのようなものが確認できた。

 八角形のシールドは絶えず波紋のように動き、生きた臓器のように脈打っている。



【......ギャァァァァァァァァァ!!!】



 そして、突然彼は動きを止め、悲痛に満ちた叫びを響かせた。

 その咆哮には、明らかな哀しみが宿っている――


 言わずとも分かる、恐らく発見した四代目の状態が芳しくなかったのだ。

 直後、彼は凄まじい速度で上昇を開始した。きっと四代目を救うために.......




 どうもこんにちわ。G.なぎさです!

 ここまで読んでくださりありがとうございます!


 当たり前のように取引を持ち掛けるルーク。

 ついにメンバーに参入してもらうことに?しかし口約束で大丈夫か!?


 そして四代目の生死は......


 もし面白い、続きが気になる!と思った方は

 【応援】や【レビュー】をしてくれると超嬉しいです!!



 【【お知らせ】】中盤執筆の為、しばし毎日投稿じゃなくなります。





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