48話ー⑥ 未知との接触
そうして扉が開いたが、エレベーターの中よりも暗かった。
「照らしますか?」
「頼む。」
僕は神術を使って人工の恒星を作り出し、周囲を照らした。
数百キロ先まで届く光源だが、僕たちの光法術に対する才能を考えれば、範囲はさらに広がるだろう。
明かりを照らすと培養槽のようなものが、見渡す限り立ち並んでいる。
並び方は規則的ではなく、上から見てみないとその意図は分からないだろう。
「ここは……見たところ何かの生体兵器の実験場のようですね……」
「そうだな。これほど大規模な施設を、わざわざ上空という不安定な場所に作ったのも不自然だ。」
「もしかすると、作った兵器の制御が難しく、居住区から離したかったのかもしれません。」
「なるほど。そこまで考えが及ばなかった。」
他にも理由があるかもしれないが、確信が持てない以上、下手に推測を口にしないほうがいい。
ここ自体が何らかの装置の一部である可能性や、ヴァラルの罠である可能性も捨てきれない。
「ぅぅ……」
背中のルシアが微かに動き、根源共有を通じて彼女の意識が戻ったことが分かった。
「ルーク……私……」
「ルシア。動けそう?」
「激しい動きはまだ無理……ごめんなさい。根源共有はまだ繋げておいて。切ったらまた倒れる……感覚で分かるの。」
「おっけい。お互いきついけど、頑張ろう。」
原因は依然として不明のままだが、この世界に何か由来するものだということは分かった。
これで、現時点で考えられる原因は5つに絞られる。予想がつけば対策も立てられるだろう。
「起きたか。」
「はい。ご迷惑をおかけします。私が寝ている間の出来事は根源共有で把握しました。」
「無理をするな。そして、気を使って嘘をついたりもするな。」
「心得ています。お気遣いありがとうございます。」
ルシアが目覚めたことで、僕が手に負えなかった部分が補完できる。
「それで? 私に調べてほしいデータを見せてくれる? それから……帰ったら製作者のことについてあなたの意見を聞かせて。」
「そっか......やっぱり根源共有してるから全部分かるんだね。はい、これ。」
僕は修復前のデータが入ったチップを渡した。
古典的だが、ハッキング対策にはこれが一番だ。いや、少なくとも僕が知る限りでは一番有効な手段だ。
「何よ。普通に保護セキュリティ作って無線ネットで送りなさいよ……まぁいいわ。貸して。」
「はは......できるかそんなこと。」
ルシアはチップのデータを自身のパネルレーターに移し、解析を始めた。
アウルフィリア様は興味深そうにその様子を見ているが、内容まではよく理解していないようだ。
かく言う僕も半分くらいしか分かっていない。
「……おかしいわ。」
「え? 何か不審な点でも?」
ルシアは僕の問いかけを無視して、叫んだ。
「アウルフィリア様! 周囲の警戒を!」
「了解した。」
ルシアの一言で、一気に緊張感が高まった。
彼女はまだ確信が持てないようで、さらに解析を続けている。
「ルーク……このシステムと機械の一部は、文明が滅んだ後に追加されたものよ。」
「なるほど……それなら納得できる。機械の一部に見慣れた物質が使われていたのも、後付けされたからっ事か。年代は?」
「ごく最近……とは言えないわ。少なくとも100万年は経ってる。でも、アダマンタイトは100万年程度ではここまで劣化しない......だから、正確な計測かは分からないわ。」
「もし劣化を促進させる技術があるとしたら、昨日にでも後付けされた可能性がある……これは罠かもしれないね。」
しかし、罠だとすると一つ大きな疑問が残る。誰を狙った罠なのか?
僕たちがここに来ることを予見していたとは考えにくい。
それとも、この状況を数万年も前から予測して罠を仕掛けたのだろうか……?
「調査は一時中断だ。壁を破壊して、急いで外に出るぞ。」
「「はい!」」
その瞬間、部屋中に魔法陣が浮かび上がった。
アウルフィリア様の動きが一瞬止まった......しかし、その一瞬で魔法陣は発動してしまったのだ。
「ルーク! この法陣は何!?」
「……転移だ。でも、こんな膨大な魔力を使う転移は見たことがない……」
光った後、培養槽のようなものはすべて消えていた。
これほどの大規模な転移術式、一体どこへ飛ばされるのか見当もつかない。
さらに、発動が異様に早い。アウルフィリア様でさえ反応が遅れたほどだ。
いや一人でなら回避できたはずだ.......
僕たちの安全を考えて、留まってくれたのだ。僕たちは本当に足手まといだ。
「ルシア、座標を調べて!」
「移動してないわ……」
「え? どういう……」
――バキンッ
その瞬間、アウルフィリア様が前方から消えた。いや、正確には後方に叩き潰されていた。
あまりの速さに、僕たちは戦闘態勢を取ることさえできていない。
それを認識したのは、アウルフィリア様が隣から消えた後だった。
「ア、アウルフィリア様!!」
「ルシア! 構えて!」
「*#&@」
強い弱いとかそういう存在じゃない.......僕らは初めて、理の外側と接触した。
どうもこんにちわ。G.なぎさです!
ここまで読んでくださりありがとうございます!
天上神界最強のアウルフィリアがまさかの展開に?
果たして目の前にいる相手の正体は?
ルーク達の運命とアウルフィリアの生死はいかに!?
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