―――第47話ー① よく分からん黄金神の鎧―――『人為的に奇跡を起こす神秘』
ついにこの日がやってきた。アウルフィリア様と遺跡へ向かう日だ。
少し前まで、僕の実力は魔術を使って戦う程度に過ぎなかった。
大した実力もない癖にそれを隠そうとし、親友夫婦を瀕死に追い込んだこともあった。
あの日までの逃げ腰な僕では、決して今日という日にたどり着くことはできなかっただろう。
いつも僕が道を間違えたときに正してくれたのは、ルシアだ。
最後まで黙って待っててくれるのも、何があっても傍にいてくれるのも彼女なのだ。
実は彼女と出会う前の僕は、全神王の夢さえ諦め、保守的で情熱のない人生を歩んでいた。
「ありがとう、ルシア」
「水臭いわよ。何年一緒にいると思ってるの?」
えぇ......感動の展開とかないわけ?
これ映画だとあれだよね?最終決戦前に愛を確認する的な......
「バリ辛辣やん……」
「……私の方こそ……よ」
「可愛いかよ。」
「が、頑張って言ったんだもん!」
どうやら僕のために頑張って言ってくれたらしい。
こんな場面で思うべきではないのだろうが......襲いたい衝動が湧いてくる。
待ち合わせ場所は、第11惑星の港。
観光地として栄えているわけでも、何か特別な用途があるわけでもない。
ただ、アウルフィリア様が僕たちの家に近いからという理由で選んだのだ。
「どこから出発しても変わらないって?」
「きっと、それが最強の所以なんでしょうね」
最強……僕にはまだ「惑星最強」の称号すらない。天上神界の公式大会でも優勝したことはない。
まぁ!あの大会気分で十神柱が出場するクソゲーなんだけど......
そんなことを考えていると、凄まじい気配が迫ってきた。
探知神術を使わなくても分かる、圧倒的なエネルギーの波動だ。
「……来たね、アウルフィリア様が」
「えぇ、ものすごく大きな波動がこちらに向かっているわ」
超高速で接近する巨大なエネルギー反応。
探知神術なしでも感じ取れるほど膨大な力の余波だ。
やがて、黄金の鎧に身を包んだアウルフィリア様が降臨された。
「すまない。待たせたな。堅苦しい敬語で情報の伝達が遅れては元も子もない。少し崩せ。」
「はい。時間通りです。僕らが少し早く来ていただけです。」
「本日は夫のルーク共々よろしくお願いいたします。」
「うむ。こちらこそよろしく頼む。」
アウルフィリア様の装備はルシアの剣と同等か、それ以上の品だろう。
正直、アウルフィリア様がどんな剣を使うのか、興味を抑えきれない。
天界最強が使う剣。きっと、見たこともないような名剣だ。
「私の鎧が気になるか?」
「!? い、いえ……申し訳ございません」
バレていた? 鎧を見つめていたわけではない。
視線を送っていなかったのに、どうやって気づいた?
もしかして、アウルフィリア様には心を読む能力でもあるのか? 今日の行動には、さらに注意が必要かもしれない。
そんなことを考えていると、アウルフィリア様が僕の考えを察したかのように口を開いた。
「そんなにかしこまるな。これは母から受け継いだ直感だ。鎧に関しては、父上が私のために作られたものだ。私のエネルギーを吸収し、その量に応じて鎧の性能が上昇する。さらに、あらゆる再生阻害を浄化する治癒効果も備わっている。」
「そ……そうなのですね」
アウルフィリア様が「魔力」ではなく「エネルギー」と表現したことが気にかかる。
確かに、彼女から感じる力の波動は、魔力とは少し違う。
彼女は魔力を使った剣士ではないのだろうか? その能力については、天上神界でも広く知られていない。
むしろ、彼女の破壊力が独り歩きし、様々な推測が飛び交っている。
ルシアが、僕の代わりにアウルフィリア様に質問してくれた。
「アウルフィリア様、教えていただける範囲で結構なのですが、他にはどのような効果があるのでしょうか?」
「特にない。しいて言えば、一定の条件下で一人になるための異空間を作る能力だ。だが、最近では使う機会はない」
「よ……鎧にしては独特な能力ですね……」
「私は、緻密な作戦を練って戦うのが得意ではない。複雑で多機能な装備よりも、これくらいの方が私には合っている」
脳筋夫婦ほどではないにせよ......アウルフィリア様の説明は、初めて会ったときから大雑把だ。
それでも遺跡調査という重要な任務にも関わらず、詳細な作戦や情報は、全て4代目から伝達されている。
集合場所や移動方法を見ても、アウルフィリア様が細かいことをあまり気にしない性格であることが分かる。
これは行動にも気をつけなければ、好印象を与えるのは難しいかもしれない。
「さて合流したことだ。移動する。」
「え?目的地に行くのではないのですか?」
「当然だろう。ここはあくまで待ち合わせに使っただけだ。11惑星に来たのはあの浮島を見るためだ。どんな場所に住んでいるのだろうと興味があってな。」
「な、なるほど......」
それだけの理由でわざわざ迎えに来たのか?
それとも何か別の意図があるのだろうか……ルシアがアウルフィリア様に質問した。
「あの……これからどこに向かうのでしょうか?」
「天上神界の中央主神惑星ネオコスモ、首都オルナティオの……近くだ。ゆっくり飛ぶから、ついてこい。今回は通常の入星ルートは使わない」
「「はい!!」」
僕たちは中央主神惑星へ向かった。
目的地にすぐ行くと思っていたのに、何だか焦らされているような気がする。
アウルフィリア様が言った「近く」という表現に少し引っかかるが......
とりあえず後をついて行くことにした。
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どうもこんにちわ。G.なぎさです!
ここまで読んでくださりありがとうございます!
主人公達は理由がなさそうなんて言っちゃってますが!
アウルフィリアがルークの浮島を見に来たのには、ちゃんと理由があります!
大分回収されるのはあとですが......理由となる伏線はもうあります。
もし面白い、続きが気になる!と思った方は
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