――第43話ー① ヤヤ!おうち壊れちゃう!!――
雷華様に話を聞きに行った次の日から、僕たちは再び鍛錬に戻っていた。
現在、僕たちは自領にて、それぞれが必要だと思う鍛錬に取り組んでいる。
「ルシア、模擬戦はこのくらいにして、次の鍛錬に移ろう。ちょうど頼んでおいたものが届いたみたいだし。」
「11戦9敗……前よりも勝てなくなって悔しいわ。でもそれはこれから追い抜かすとして.......何を頼んだの?」
「これだよ。」
そう言って、僕は配達用の転移ゲートから送られてきた、魔法陣だらけの箱を開封した。
中には、服の下に着るちょっとオシャレなベストや、全身を指先まで覆うことができる装備が収められていた。
「ずいぶん厳重な魔法陣ね……これは一体何なの?」
「これはね、科学と魔法が複合してできた新素材で作られた装備なんだ。とにかく持ってみてよ。」
「持つだけ?何か怪しい効能があるんじゃないでしょうね……いかがわしい効果とか?」
「無いから、はよ持て。」
ルシアは恐る恐るベストを持ち上げようとしたが――
「嘘……何これ!?重すぎる!持ち上がらないわけじゃないけど……私が土にめり込んじゃう!!」
「今日からこれを着て鍛錬するんだ。足場強化以外の術は禁止。最低でも2週間はこの装備を着けて生活しよう。」
「やや……おうち壊れちゃう。」
突然の幼児化……
まあ、最初の方は庭で野宿する予定だから大丈夫だろう。
「そうだね。だから寝ている間も魔法を維持しなきゃいけない。ルシア寝ている時の魔法維持が無理でしょ?」
「ルークはできるの?寝てる時に魔法や神術を発動させるなんて……」
「うん、余裕~。でなきゃ僕とエリーは死ぬような環境だった。何なら僕とエリーは寝てても魔法で反撃できる。敵意がない相手には無理だけどね。」
「くぅ……負けないんだから!」
僕とエリーは元いた施設を壊滅させ、そこから逃げ出した。
当然、組織そのものを潰したわけではなく、日夜追っ手が僕らを殺しに来る環境にいた。
常在戦場だった僕たちにとって睡眠中に魔法を維持し、発動する技術は基本中の基本だった。
しかしルシアにはその習得が必要だ。特にルシアには......
「じゃあ、納得したところで装着しようか。着たら肩についているボタンを押してみて。軽量化の魔法が解除されるから。」
「これで軽量化されてるの?押したくないわ……」
ボタンを押すと――
「やっぱり重いな!?」
「ルーク!?こんなの着けながら生活するの!?無理無理無理無理!!絶対に嫌!!」
「あ、ちなみにそれ、僕の許可がないと解除できないから。そのつもりでよろしく~」
「騙された!!ルークの嘘つき!!」
僕は嘘をついてない。
解除方法を教えていないし、聞かれもしなかった。
なんで無実で~す。
「二人で頑張ってムキムキになろうね~。」
「絶ッ対嫌!!」
こうして僕たち二人は、この『クソ重アーマー』を使った生活を開始した。
しかし、僕たちはまだ知らなかった……
次の日には、このアーマーを一度脱ぐことになるとは......
――次の日――
僕は庭に設置した特設野外拠点で目を覚ました。
「ふぅ、ルシア、よく眠れた?」
「夜中に何度か地面にめり込んだわ……つまり、よく眠れなかったって意味よ?」
隣の空いた穴は、ルシアが寝ている間に地面にめり込んだ跡だったらしい。
まぁ、何となく察しはついていたけど……
「おにぃ。おはー。」
「おはよう、エリー。昨日はよく眠れた?」
「変な質問……ちょっとキモい。」
「……お兄ちゃん、かなり傷つくな、それ。」
長年関係を築いていた妹に「よく眠れた?」というのは少しおかしいかもしれない。
でも、キモいは言い過ぎだろう……
「でも、答える。色々あった。寝不足。」
「ふふ、エリーちゃんったら、意中の人と長電話した少女みたいな顔して〜。恋人でもできたのかしら?」
ただ、ちょっとからかったつもりだった。
ルシアも婚活中だと知っているし、軽く冗談を言っただけだった。
しかし......
「ぅ……どーして、分かった?……」
「「!?!?」」
見たこともないエリーの照れ顔に、二人して驚愕した。
これは……今まで見たことのない反応だぞ?
そして再び、あの作戦が始まる――
どうもこんにちわ。G.なぎさです!
ここまで読んでくださりありがとうございます!
まさかエリーに恋人誕生!?
前回とは何か違う様子にルークとルシアは驚愕です!!
そして再び始まるあの作戦とは??
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更新は明日の『『21時過ぎ』』です!