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39話ー③ 火の無きところに在った灰

 







 気がつくと.......地平線まで続く灰の砂漠の中にいた。



 所々に建物の残骸や、朽ちた文明の名残が埋もれている。

 しかし不気味な事に......そのどれもに一切の統一感がない。


 まるで滅亡した、古今東西のあらゆる文明が流れ着いているようだ。

 誰からも忘れられ......ついにはその存在さえ失われた『何か』


 まさに全てが行き着く......『果て』のようだ。



「ここは……何だ?」



 空は滅んだ世界の夜のように......黒く荒んでいる。


 そして遥か彼方に、純黒にどす黒い赤の円環を持つ『穴』がある。

 赤い円環からは、どす黒い血のような赤光が滴っている。



 見たこともないほどの純黒......

 それは暗闇にさえ穴を開ける『究極の黒』


 世界で最も黒い黒......


 あの穴に向かってはいけない......

 僕という存在の全てがそう警鐘を鳴らす。



「とにかく『コレ』から離れないと……」



 ん?コレ?何で僕はそんな言い回しを?

 しかし......異変は一歩足を前に出した瞬間に訪れた。



「……どうしてここに?そもそも僕は誰だ?」



 自分の名前が思い出せない。

 この場所はそういう場所なのだろうか?



「ルシア。それだけ......それだけ忘れなければいい。」



 とにかく......離れなければ......

 ここから出なくては......なんとか帰らなくてはいけない。


 肉体が崩れる......足に力が入らなくなる。

 感覚が麻痺していく......身体が朽ち果てるように崩れていく......


 たったの十数秒で.......身体を動かしていた感覚も忘れてしまう。

『ルシア』。今ではただその言葉を覚えているだけ......



「ルシア......ってなんだ?」



 しかし......それが


「人」なのか


「地名」なのか


「物」なのかはもう......忘れた。



 このままでは自我が失われるのも時間の問題......



「どうして……何で……」



 朦朧と薄れゆく自我の中......

 残っているかも分からない、か細い感情を振り絞ってそう呟いた。



「こ、んな……」



 何が......こんななのだろう。






 ついにルークは、心で呟く言葉さえも曖昧になり始める。



「ァァ……ァ?..........」



 周囲に吹き荒れる、低い重低音だけが聞こえてくる。


 遂には肉体の形を完全に失い、少しずつ音も聞こえなくなる。

 すると彼は視界の閉ざされたの闇の中、何かを聞きた。



「何でしょうかこれは......浅瀬とはいえ『果て』入り込むとは......」



 女の声がする。透き通っているが生命の起源とは違う。

 不気味で恐ろしい声......その音は常識で言い表せぬほどの狂気を帯びている。



「我が(しゅ)よ。どう致しますか?」



 それは独り言だろうか?



「......御心のままに。」



 しかし......話相手らしき音はやはり聞こえない。



「聞こえているか知らぬが喜べ。世界で最も偉大で尊い我らの(しゅ)が、お前を返してやれとの事だ。次はもっと眩く輝く強い意志を持て。今代の光。」



 それは誰に対しての言葉なのか......既にルークという存在は失われていた。

 そしてついにルークだったものさえも、完全に失われつつある。



(しゅ)よ......弱者の総意。始まりの犠牲者.......灰にさえなれなんだ許されぬ意思。」



 彼女の音は......忠誠でも哀れみでも崇拝でもない。

 愛よりも醜く......邪悪よりも悍ましい『『狂気』』



「火の無きところにいでた灰......頂きの無き世でも、あなたと共に。」



 そうしてルークだったものは『果て』から消えた。




 どうもこんにちわ。G.なぎさです!

 39話ー③をここまで読んでくださりありがとうございます!


『果て』はあらゆる全てが失われる。

 音を発していた女の正体とは?そしてその狂気が意思疎通している相手とは?


 そして!ルークは現世に帰れたのか?


 もし面白い、続きが気になる!と思った方は【応援】や【レビュー】をして くれると.....超嬉しいです!!


 何かあればお気軽にコメントを!


 更新は明日の『『22時過ぎ』』です!



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