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――第4話ー① 平和には武力が必要? (旧:世界樹の街で迷子になる)――





 僕は冒険者ギルドで諸々の手続きを済ませた後、自宅に帰ってきていた。



「遅かったわね?話は聞いているわ。折角の休日だったのにお疲れ様。」


「災難だったよ。大したことはなかったけど、報告よりは強かった。エリーは帰って寝てるよ。」


「……最近魔物なんかの被害量が以前と比べ物にならないわね……何か悪いことの前兆じゃなきゃいいけれど。」



 最近は魔物や凶悪生物の被害が増えすぎている。

 危険生物の発生や変異、さらには大規模な魔力災害が頻発しているのだ。


 その影響で、国防費の増加は避けられず、神界の国民の不安も年々膨らんでいる。

 さらに、これらの問題は天上神界にも波及しており、各神族間の連携強化や防衛策の見直しが急務となっている。


 

 天上神界の平和を守るシステムは極めて優れており、その防衛能力と制度は凄まじい。


 しかし、これほどの急激な変化に直面するのは初めてであり、そのための準備も不足している。

 結果として、緊急対応のためのリソースが逼迫し、神々の間にも緊張が走っているのが現状だ。



「何かあるだろうね。ここまで被害が多いと今後、確実に人手も足りなくなるよ。」


「心配ね......十神柱の方々も手が間に合っていないみたいだし。」



 アファルティア様はあんな風におっしゃられていたが、十神柱の多忙さは誰もが知るところだ。


 具体的な業務内容は僕も把握していない。

 しかし他の惑星文明との外交、危険区域の調査、凶悪な魔物への対処など、その仕事は多岐にわたっている。


 それゆえ、十神柱が4人以上天上神界に揃うことは稀のようだ。

 神界の防衛を担うため、少なくとも1人は常駐しているようだが……



「それはそうと、今日視察した地球はどうだった?」


「地球の方は特に異常はなかったわ。各国が核弾頭という大量破壊兵器を保有し続けていて、平和とは言えないかもだけれど......」


「どんな世界にも武力は必要だよ。それがどのような形で、どんな物なのか。その部分にしか差はないよ。」


「分かってるわ……でもやっぱり私は武力がないと平和を作れない文明が悲しい。」



 実際、この神界でも同じことが言える。


 僕は上位神と呼ばれる階級の神で、神々の中では中の上程度の実力しかない。

 しかし、それでも惑星一つを簡単に粉々にするほど、強大な力を持っている。


 この世界では、個々の武力が兵器を超えることができる。

 上位神や最上位神などの格付けは、主に武力によって決定されるのだ。


 ちなみに、神界の王である全神王は、あくまで政治的役職のトップに過ぎない。

 神界で武力の頂点に立つのは、十神柱だ。



「当然この神界も例外じゃない。」


「そうね……武力のない世界平和は叶わないのかしら……」



 世界の規模が大きくなるほど、平和の維持は難しくなる。

 惑星単位ならば、武力を持たずに永久的な平和を手に入れた文明もいくつか存在する。


 しかし、それは生命の進化が一定の方向性に沿って進む、惑星文明という条件下でのみ実現可能なものだ。


 天上神界はそのような単純な世界ではない。


 ここには、戦争によって自滅し昇天してきた種族。

 水中で生活するウロコを持つ知性体。


 意図的に進化を止め平穏を追求する種族。


 逆に技術革新を極限まで追求して発展してきた生命体など、実に多種多様な存在が集まっている。


 天上神界は、これらの未知なる存在が一つの世界を形成する超複合文明だ。

 価値観、生活習慣、身体構造など、全てが異なり、交配ができない種族も存在する。


 共通するのは、天上神界に来た時点で、すべての生命がこの世界の独自の法則に縛られるということだ。

 この法則は他の世界の物理法則と違い、制約が緩く、強大な力を行使でき、あらゆる種族に未知の魔法や技術をもたらす。



「多種多様を受け入れるほど、より大きな抑止力と強力な法の行使が必要になる……これは仕方の無いことだよ。」


「多種多様......世界中全ての人達と1人1人話し合えたらいいのに。きっと平和を壊すほどの悪人はいないと思うの......」


「そうだよ。その通りだと思う。でもね?悪意のない人々の当たり前の常識と生活、主張が一定数集まると環境が破壊され、戦争が起こるんだ。僕ら一人一人にその気がなくても、僅かなズレがいつしか大きな亀裂になるんだ。そしてそれは止めようがない。だって君の言う通り、誰も悪意をもって行動している訳ではないから。」


「でも......そんな世界やっぱり悲しいわ......」



 平和の実現が困難なのは、巨大な悪意だけが原因ではない。

 人々の日常の営みが積み重なり、やがて平穏を破壊することもある。


 誰もが抱く幸福への欲求が、無意識のうちに他者の幸福を侵害する。

 幸福を追求するその営みが、逆に平和を脅かす要因となるのだ。


 空気がどんよりしてきたので僕は話を切り替える事にした。



「暗い話はここまでにして、明日は空いてる?」


「空けといたわ。」


「よし!旅行だ!!」

 


 そして僕達は向かった......

 世界樹の樹上に広がる巨樹の都市、バルキエフに......




「ルシア・ゼレトルス オフ部屋着ver」カクヨムの近況ノート

https://kakuyomu.jp/users/nagisakgp/news/16818093077504979619

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