第1話 『新しい海の民と竜王』㊶『鬼道少女』対『新道少女』★
娘<今度はあたしのターン!
母<頑張って、娘ちゃん!
@<前回の逢瀬の続きは後編で!、R15の限界に挑戦なのだ!
あたしは『くろいもやもや』に覆われてたけど、ミコ様や大好きなお母さん、みんなとスイちゃんのおかげで元の姿に戻れたんだよ♪
「ふふふっ・・あなたの笑顔は、そんなにステキな笑顔なのね?・・ああ、ワタシの娘・・大好きよ!、愛してるわ♪」
あたしとお母さんのふたりは、泣きながら、ぎゅっと抱きしめあったの♪
笑いながら、ぎゅっと抱きしめあったの♪
(お母さんの笑顔もとってもステキだよ!、あたしもお母さんが大好き!)
・・・そう、あたしは言いたかった、伝えたかったのに・・
ちゃぷん・・
水の音がして『黒く染まったミコ様』が出てきたの・・
全身が真っ黒で顔も見えない・・でも、右手の剣は異様に光ってる・・
それをぎこちない動きで持ち上げ・・
・・びゅん!
風を切るような鋭い音を立てて、振り下ろされるの!?
ぶうぉぉぉぉ!!!
「うわぁ!?」「きゃあっ!?」「みんな!?」「手がっ!?」「バタンきゅ~」
その剣から生じた黒い風が繋いでくれた手を剥がし、あたしから皆を遠ざける!?
壁に叩き付けられて、気を失ったみたいで倒れて動けないヒトもいる!
『黒く染まったミコ様』に対峙するのは、スイちゃんを握りしめてる、あたしだけ・・あたしだけが足をガクガクさせながら、辛うじて立ててる。
(人の魂は彷徨い易く、惑い易い・・それは人を映す神も同じ・・また、ま~まがねてるみたい?・・おこさないとたいへんなことになっちゃうみたい?)
手の中のスイちゃんが、前のあたしみたいに黒いミコ様になっちゃった、って・・
外の海では大きな腕から、いっぱいの腕が出てきて、光る玉を追いかけてる!?
でも、今のミコ様は『化け物』なんて可愛いものじゃない・・わかっちゃう・・
「っぅ・・む、娘ちゃん!、こっちへ・・どうしたの・・娘ちゃん・・?」
あたしを心配する、お母さんの声がする・・お母さんはあたしに手を伸ばしてくれる・・危ないことから守ってくれようとしてくれてるってわかる・・だけど・・
「お母さん・・あたし、思い出したの・・みんなと約束する前に、ミコ様と約束してたこと・・あたし、先に約束したことを守らないといけないから・・」
あの黒い玉の中で、頭がたくさんの白蛇のミコ様は、あたしに優しくしてくれた。
(「ふふふっ・・・よければ、私に絵を教えてくれませんか?今まで、あまり絵を描いたことが無くて・・・私もクーみたいな絵を描いてみたいのです!・・・奥の部屋も一緒に使いましょう!みんなで、絵を描きましょう!」)
・・あたしが『化け物!』って言っちゃったのに・・あたしが悪い神様だって思って水をかけちゃったのに・・それなのに怒らずに約束してくれたんだから!
「そう、なのね・・そう、したいのね?・・わかったわ・・」
お母さんは、あたしをしっかり見てくれてる・・見守ってくれてる。
「どうか・・どうか気を付けて・・」
手を戻して祈るように握りしめる・・お母さんは、あたしを止めたりはしない・・
「・・いってらっしゃい・・」
お母さんは、あたしがしたいことをわかってくれてるから!
右手の剣は、より一層、異様に光ってる。
正直に言って絶対に勝てない・・勝負になんてならない・・だって相手は『神様』なんだもん・・逃げ出したい・・泣きたい・・足はガクガク震えてる・・でも・・
「お母さん・・ありがとう・・うん・・あたし・・」
お母さんは、あたしの帰る場所だから・・
「・・いってきます!」
だから、あたしを送り出してくれる!
(あなただけじゃないよ?・・すいもいっしょにいってあげるからね?)
手の中のスイちゃんが温かい・・息を吸い込む・・うん!、一緒に行こうね!
「あたしは、あきらめない!」
温かかった皆の手が離れちゃった・・でも、皆の手の感触をこの手が覚えてる。
だから、あたしの手よ、届きなさい!!!
「あたしは、あきらめない!」
抱きしめてくれた、お母さんの体が離れちゃった・・でも、お母さんの愛情をこの体が感じている。
だから、あたしの体よ、動きなさい!!!
「あたしは、あきらめない!」
皆の不安や怖がってる心がわかる・・でも、踏み出してくれた皆の優しさと勇気をこの足が知ってる。
だから、あたしの足よ、踏み出せ!!!
「「「ミコ様を頼んだぞ!!!、いってこい!!!」」」
みんながあたしを送り出してくれる!
ヒトの傍にいたいと願う、あの寂しがりな優しい神様も一緒に連れて帰るために!
「うん!、みんな待ってて・・いってくる!」
何回も自分に言い聞かせて・・あたしたちは振り返らずに、その一歩を踏み出す!
この『いってらっしゃい』と『いってきます』を絶対に、ぜったい、ぜったい・・
・・『ただいま』と『おかえりなさい』にしてみせるから!!!
「今度は、あたしが・・ミコ様を助けてあげる番だからっ!」
戦う必要なんて無い!、勝つ必要なんて無い!、不安も怒りも優しさも全てを込めて・・神様から教えてもらったことを・・皆からもらったキラキラを・・今度は、あたしが・・ヒトが神様に教えて、伝えて・・お返しするだけだからっ!!!
(みんなのキラキラがあなたをみちびいてくれるからね♪)
スイちゃんを胸に抱きしめて、あたしは走り出す!!!
(すいが、おてつだいしてあげるからね♪)
あたしの姿がキラキラをまとって、再び大きく変わっていく!!!
(キラキラはあなたをつよくしてくれるからね♪)
胸に輝くヒスイを飾る水色のドレス・・ミコ様みたいに成長した姿に変わる!!!
「これは特別なことじゃない・・あたしには名乗る名前がないからこそ・・」
・・鬼道少女と名乗ったミコ様に対して、あたしはつぶやくだけ・・
(また、そのキラキラをとどけてあげて・・スイのおかあさんに・・)
「ただの娘がお友達を迎えに行くっていう、いつもの変わらないことなの!」
自分の叫んだ言葉に、あたしの中の力と勇気が湧き上がってくる!!!
一歩ずつ近づく、あたしたち・・ミコ様は今いる所から動ない・・けど・・
(くるよ!、さけて!)「うん!、わかってる!」
・・じゃきん!
ミコ様に走り出した、あたしに向かって何も無い所から鋭いトゲが飛び出てくる!
あたしたちは、それを屈んで避ける!、走る!
ミコ様は、左手をジャマくさそうに振る・・
じゃきん!、じゃきん!
避けた先にも、当たったら痛い!じゃ済まないような鋭いトゲが飛び出てくる!
あたしたちは、それを飛んで避ける!!、走る!!
ミコ様は、左手をこっちに向ける。
じゃきん!、じゃきん!、じゃきん!
行く手を遮るように、四方八方から無数の鋭いトゲが飛び出てくる!
あたしたちは生み出した水流とかも使って何とか避ける!!!、走る!!!
(痛い!、怖い!、逃げたい!、泣きたい!、お母さんの所に帰りたい!)
避けきれず全身に、引っかき傷がいっぱいできちゃう!!!
「でも・・この新しい道を行く・・あたしたちの足は止まらないから!」
だって、ミコ様はあたしたちを助けるために肩に傷を負った・・焼かれたこともあった・・もっと痛かったはずなのに・・でも、決して諦めなかったから!
「ミコ様、こんなこと楽しくないよね?、あたしと一緒に皆のところに帰ろ!?」
あたしは声の限り、ミコ様に呼びかけ続ける!!!
だって、今のミコ様は本気じゃないから!、本気なら、もうあたしたちは・・
ミコ様は、ゆっくりと左手を上に向ける。
じゃきん!、じゃきん!、じゃきん!、じゃきん!、じゃきん!、じゃきん!・・
ミコ様の周りに1、2、3・・いっぱいの数え切れないトゲが生み出される!?
・・それが、あたしたちに向けられる!・・避け切れるわけがない!?
(あきらめない!、あきらめない!、あきらめない!、あたしはあきらめない!)
「でも、逃げない!、絶望しない!、あたしがダメでもスイちゃんを!」
あたしがダメ元で、ミコ様に向けて胸のスイちゃんを投げようとして・・
・・ふっ・・
「あっ、ミコ様見て下さい!、あちらにナナシ様ですわ!」
突然、ミコ様の後ろで誰かの姿が!?、誰かの声が!?
・・まさか・・みんなや、始祖様みたいに鏡で出てきたの!?
「えっ、お姉ちゃん!?・・危ないっ!?」
その存在に気付いたミコ様が、トゲの向きを『お姉ちゃん』に合わせちゃう!?
・・さっ・・
ためらわずに、ミコ様がお姉ちゃんに向けて、左手を振り下ろす・・
お姉ちゃんは動かないの!?、動けないの!?、避けないの!?
「や、やめてぇっ!?、ミコさまぁー!?」
・・ぎゅぅんっ!!!
空気を裂く鋭い音を立てて、一斉に無数のトゲが・・
・・ドスドスドスっ!!!
「いやぁっ!?、お姉ちゃぁーんっ!?」
あたしのお姉ちゃんを串刺しにちゃうのっ!?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
本来、蛇は臆病な生き物・・慣れることはあっても、懐くことはない生き物。
外敵ではない、と認識しますが、すり寄って甘えてきたりすることはないのです。
むろん、蛇にも心がありますが、根本的に群れで暮らす人とは異なる精神を持つ生き物・・拠り所を喪ってしまっても寂しさを感じることはない、はずですが・・
(「ああ、重々承知の上だ・・お前の為なら、どんな事でも私は許そう・・だから、主従の関係だけであっても良い・・どうか、私の拠り所になってほしい」)
私が思う主従の関係とは、主が従を支配し、従が主に従うという秩序や規則を保つために重要な一方向での関係・・嘘や偽りのない、誠実で清い関係のことです。
それでも良いから、それだけで良いから傍にいてほしい・・そう、あの方は私に望んでおられたのに・・だけど、私の心が、それだけでは足りないと強く訴えて・・
私とナナシ様・・ふたりの関係を『特別』なモノにしたいと願ってしまった。
「それでは駄目です、ナナシ様・・その程度のご覚悟では足りないのです・・私は望んでしまいました・・そんな主従の関係では駄目だと・・その程度の汚れでは、すぐに消えてしまうと思ってしまったのです・・」
顔が熱い・・吐息が熱い・・当に限界を超えてしまった胸の鼓動が責め立てる・・そんな清いだけの関係では直ぐに汚されてしまう、汚れが消されてしまうと・・
拠り所を喪ってしまった、孤独と寂しさに震える人の心が新たな温かさを求め・・自分の欲するモノを愚直に求める蛇の本能が・・私の中に芽生えた・・『不確かな感情』に『明確な輪郭』を与えてあげたいと望んでしまったのです。
「言葉だけでは確かな証にならぬと・・満足できないと胸の奥が訴えるのです・・ナナシ様も、そんなあやふやな関係は望んでおられないのでしょう?」
どうせ、汚されるのであれば、消されてしまうのであれば・・未来永劫、もう決して誰も汚せぬように消せぬように汚し尽せ、濁し尽せと邪な心が言うのです。
それは私だけが望んでいるんじゃない、この方も望んでいると思い込ませて・・それを言い訳にして、それで自分を正当化して・・あの方が拒絶できないように・・私自身が怖じ気づかないように・・私の全てを捧げる覚悟をするために・・
熱に浮かされたように、ナナシ様の御顔を私の両手で挟み込んで・・全ての唾液が蒸発して消えてしまった、カラカラに乾き切った喉と舌を強引に引き剥がして・・
「私が貴方様を汚すように・・決して消えぬ証として・・貴方が私を・・」
その赤い唇に、自らの唇を近づけて・・芽生えてしまった不確かな感情に『名前』を付けてほしくて・・あなたの全てを私に捧げてもらいたくて・・
「その証として・・貴方が私を汚して下さい」
喉とは反対に潤んだ瞳で・・明確な輪郭を創るための衝動を・・ふたりの唇を触れて合わせる行為を・・奪い、奪われても良いという欲望を伝えてしまうのです。
「・・ナナシ様・・私は・・私は貴方様を・・心から・・あぁ・・だめ・・」
破裂しそうな熱量に耐えきれず・・それを一瞬でも逃がすだけで良かったはずなのに・・はしたないと思い、大切な言葉を伝えるべき人の理性は跡形も無く溶けてしまって・・朧月夜に照らされて、抱き合う影はひとつだけ・・
「ちゃんと言葉で・・ごめんなさい・・ん、んん・・んふぅ・・ん・・」
ほんの少しのはずが・・互いの熱で溶けてしまいそう・・互いに消えぬ汚れをつけ合って・・ゆっくりと優しく身体を倒される私・・
踏み止まれるはずだったのに・・互いを深い濁りに沈めてしまいそう・・もっとほしい、物足りない、もっとしてほしい・・貪欲な蛇までも喰いついて・・
・・ぐううぅ~・・
それが逆に歯止めになってしまって・・急速に私の意識を元へ戻してしまって・・
「・・ん?・・ぁれ・・ぅん?・・はっ!?・・わ、私はなんてことを!?」
いきなり聞こえた異音が、折角の逢瀬の邪魔をする!?
がばりっ!!!
恥ずかしさに身を起こし、飛び退いて、あの方から離れる私!?
「えぇっ!?、こ、このような大事な時に!?・・ナナシ様、も、申し訳あ・・」
戻った意識は、今の私の身体の状態を音として明確に伝えてくれるのですがっ!?
・・ぐるるる~・・ごううぅ~・・
極限の空腹を伝えてくる!?・・蛇の本能の深い業ですか!?
「先のことは大変、失礼いたし・・自重しなさい、私のお腹の虫たちよ!?」
(・・ぴたり・・)
流石に、この状況を鑑みよと・・あれやこれやで抑えようと・・
ぐううぅ~・・ぐるるる~・・ごううぅ~・・ぐぎゅるる~・・ぐごごご~・・
「はっ、私のお腹がっ!?・・ますます、収まってくれないぃー!?」
その意思を嘲笑うが如く、辺りに鳴り響く騒音!?
「・・ふふっ・・はは・・ははははっ・・」
その様子の一部始終をご覧になった、大切なあの方が珍しく笑い声を!?
「いや、すまぬ・・だが、流石に・・ふふっ・・ミコらしいということか?」
逆に笑ってしまったことを謝罪し、私の無礼(?)を受け入れて下さるのです!
「確かに、あの激しい戦いの後であるから腹も空くのも当然のことか・・汚れも落とさなくてはならぬからな・・今の続きは・・コホン!・・その後、じっくりと両者、時間をかけて考えてからではどうだろうか?」
急かすつもりはないと、私の状態を慮る優しいナナシ様・・聞き苦しい私のお腹の虫の音も気になさらないとは!
「た、確かに、お腹が減っては存分に力を発揮できませんものね、あはは・・」
苦笑いする私が、ふと見上げた夜空に浮かぶ幾万の星々・・
「・・本当に、私の生きていた世とは違ってしまったのですね・・」
だけれども、私が見知った星のカタチではない・・
常に北を示すはずの星は見えず、柄杓の形も乱れてしまって・・まるで、秩序や理性という名の服を脱ぎ捨てて、混沌や本能に従う獣のように生まれたままの姿を晒そうとしてしまった、愚かな私を映しているかのようで・・
「でも、春の夜の出来事にしては、幻でも出来過ぎでございました」
夜空の黒と白が境を生むように、私の心にも光と影を生んでしまいました。
「ナナシ様が話して下さった世の事は事実でございますね?」
・・じゅわわ・・・ばしゃり!
左手を振って、水を創り出して・・それを頭から被ります。
「・・でも、この情景は・・この逢瀬は・・」
ぽたぽたぽた・・
汚れを落とすために?、火照った頭を身体を冷やすため?・・いいえ・・
「この私にとって、余りに残酷な仕打ちでございました・・」
・・伏せた瞳から溢れて零れるしずくを隠すためです・・
「一連の始まりは、ナナシ様がなされたことなのですね?」
・・知りたくないことを知ってしまった・・
「これも私の反応を、どう動くかを調べるためなのですか?」
・・聞きたくないことを聞いてしまった・・
「本当に違和感が無かったのです・・」
・・騙されたままでいたかった・・
「ここはナナシ様が作られた世界なのですね?」
・・騙したままにしてほしかった・・
「お答えいただけますか・・ナナシ様?」
やっと収まった滴を払うように、頭を上げるのです。
雲で隠された月を見上げることしか出来ないと理解していても・・
娘<新道少女!、名前はまだない!
ミコ<・・・(感情の落差に言葉を失っている)
@<何故、ミコが気付いたのか・・読み取って下さいますかねぇ?(;'∀')