第1話 『新しい海の民と竜王』㉟タイムリミット!?
ミコ<蛇を超え、人を超えた、究極の戦士!鬼道少女ミコ!
ナナシ<見せてもらおうか、新しい鬼道少女の性能とやらを・・
クー<なんか既視感を覚えるんじゃが・・
・・身に纏った蛇鱗が、両手足の先から身体の中心に向けて広がっていきます・・
・・降霊した蛇が、末梢の流れから中枢に遡らんと浸食していきます・・
蛇は自分の体温を調節できません・・だから心地よい温度を求めて、もう一度、私を飲み込み、空腹を満たそうと迫ってくるの・・・ですが!
きぃぃぃーん!・・ぱっしゃーん!!!、キラキラキラキラ!!!
私を中心した『螺旋』の水の渦が、目に捉えられぬほどの回転を生み出すと、次の瞬間には光の粒子となって霧散していきます!
『・・今、この姿こそ、私の新しい姿・・』
殺し合いには似つかない流麗な姿・・私は、新しい鬼道の少女は・・
今に至るまでの学びを、大切なひとたちとの繋がりを以って・・
『私は鬼道少女ミコ・・どんな流れも変えて見せましょう・・』
黒から純白の衣装に変じた私の姿・・人の姿で蛇を超えたのです。
『鬼道少女ミコ』という新しい魂が顕現したのです。
一番の変化は内面・・風がやんで、波がなくなり、海面が静まる状態・・今まで感じていた、不安も焦りも無い・・心が凪のような穏やかな流れを感じます。
ですが、その流れの中にありながらも存在する、確固たる『私』という流れ・・この世の全てが手に取る様にわかる・・『私』を通して全ての理を感じるのです。
『陰陽に分離した太極が最初に生んだ、陰の中で特に冷たい水・・それが私の根源だった・・でも、皆の心の温かさが、私を、蛇を変えてくれたのです』
自らの言葉で表すことで、より明確になる境界・・これは蛇の感覚を人の知性と心で纏めたことにより、新たに拡張された感受性の賜物。
感受性とは個で完結する感覚ではない・・外からの刺激や印象を深く感じ取れる能力・・それは他者との関わりで紡がれ、育まれる能力のこと。
『改めて、深く、深く感謝を・・皆様、ありがとうございます』
そして、私の周囲に流れ動くものを感じる・・それは脈動を刻む命・・それは煌く魂・・それは万色を示す心・・誰ひとりとして同じ流れがない・・その流れが綺麗で、ずっと眺めていたいと思う気持ちが、源泉のように湧き上がってくる。
『素晴らしいですぞ、御子様!、蛇を克服なされましたな!』
『えぇ、大丈夫です、今の私には誰かを食べたいという欲は全く無いのです・・寧ろ、皆様がとても大切で、とても愛おしくて・・ずっと守りたい・・守ってあげたい・・そんな気持ちが、胸の奥に満ち溢れているのです』
変わらず私の頭上にいるクーに、静かに答えます。
『ミ、御子様!、何と身目麗しい姿でございましょうか!?、その純白のドレス・・ヒトガミ様の碑文にあった花嫁衣裳のようで御座いますわ!』
お姉さんが随分と勢い込んだご様子で、またも鏡で私の姿をみせてくれます・・が、丸い沖津鏡の大きさでは、今の私の全身が映らないのです。
『また目線が、高くなっているようですね・・皆の位置が下がって見えます』
そう言って、白魚のように白く、指先に行くほど細くなっている五指を振ります。
(指が長くなっている・・白魚は生で食べるのが・・周囲の私を感じて・・つるりとした食感で・・私の望む形を想像して・・美味しいのです・・具現化させる)
元々、多頭の蛇なので同時に並列して思い、考え、集中し、行動することに何の苦もありません。
『ミコの名の下に・・水鏡よ、ここへ・・我が身を映せ』
しゃらん・・しゃらん・・
それに合わせて、左手首の深紅の宝石を嵌め込んだ黒色のブレスレットが、重なり合う軽やかな金属の澄んだ音を立てます。
ちゃぷん・・ちゃぷん・・ちゃぷん・・ちゃぷん
何も無いはずの空中に、あり得ない水音・・私の周囲に、『水で出来た鏡』が複数、現れます・・これで、足の先から背中までも確認できるようになりました。
『再び、マナに干渉して事象を曲げたのか!?・・だが、その姿はいったい・・』
その様を見て、始祖様が驚いておられますが・・今の私にとって、これは自分の身体を動かすようなモノ、何の不思議も違和感も無いのです。
他のモノは分かりませんが、私に関係するモノなら、いくつでも何でも出来そうな感覚があります。
・・まずは、両足首にもそれぞれ手首と同じようなアンクレット・・足に履くハイヒールが更に高くなっていますが、これほど視点が変わるほどでは無いはずです。
(僕を媒介にした金生水で急激な成長を!?・・破邪の権能が反応しない!)
右手の薙からも驚いた声が響いてきます。
確かに私の等身が、タケノコのように急激に伸びているようです。
(・・タケノコはしっかり茹でて、何で食べましょう?、お刺身、煮物?)
また、両手足は細くスラリと伸びて、鱗の無い魚・・太刀魚のようです。
(・・太刀魚はお酒で臭みを取って、塩焼きがキレイで美味しいのです)
卵のようだった頭は、顎のラインがスッとして、大きさは前とあまり変わりがないようです。
(・・卵は栄養たっぷりで、引っ掛からず飲み込み易いので好きです)
顔には松の葉のように、ピンと上を向いた長い睫毛と切れ長の紫の瞳があります。
(・・流石に、松ぼっくりは食べませんが、水に濡らして遊ぶのが楽しいです)
つきたての餅のように白く柔らかそうな頬には、朱も差してないないのに薄桃色が映えています。
(・・お餅は気をつけて食べて・・きな粉は苦手、砂糖醤油と大根おろしですね)
紅も塗っていないのに、ぷっくりとした唇は熟した苺のように濡れて、テラテラと艶やかです。
(蛇の苺に毒があるという噂は嘘ですからね?、人が食べてもぼそぼそとした食感で好ましくないと思いますけど・・蛇がいそうな所に生育したり、苺を食べにくる小動物を狙うだけ・・そう言えば、薬用になると山の私が教えてくれた・・)
そして、光り輝く純白のドレスから見える剝き出しの肩は、蛇のような灘らかな曲線を描き、浮き出た鎖骨がしっかりと見えて、首も長く見えてしまうような?
(・・全体に見て、肉付きが薄いので食べても美味しくなさそうです・・)
『御子様、食べ物で表現し過ぎですぞ?、想像だけなら結構でございますが・・』
頭上のティアラの形に姿を変えたクーが、私の心の声が聞こえているようで、心配そうに忠告してきます・・審神者として、続けて私を見てくれているのです。
『ごめんなさい、元蛇の私には人の美醜がよく分からないから・・正直に言うと、お腹が空いているので、どうしても美味しい食べ物などで例えてしまうようね』
私の思っていることを隠さずに答えます。
『食べることは尊い命を頂き、それを自らの血肉に代えて生きること・・これは決して誰も否定できない自然の営み・・その残酷な事実に目を反らさず、自ら分を弁え、感謝し、慎ましやかに今を大切に生きなければならないと・・』
命は巡り、また命の流れを作る・・その絶え間ない流れを彩る者全てを美しいと思うのは多分、皆の中にも『私』がいると感じられるから。
『勿論、皆様には一切、ご迷惑はお掛けしないつもりですが・・全てが終わって・・もしも、許されるならば、最後に一度だけでも・・皆様と一緒に食事が出来たのなら、より美味しく感じられるのではないかと思ったのです』
その群れから追放の咎を受ける身となっては、決して叶わぬ願いでしょう・・今までも果たせぬ望みを数多く抱えてしまうのは、私が欲深い多頭の蛇だから・・
『皆様が美味しい物を食べている・・笑顔になっている・・幸せそうにしている・・その末席でも良いので一緒にいたい・・それが、今の私の正直な欲です』
全ての生き物は美味しい物を食べれば笑顔になる・・それは人だけの話ではないと思うから・・それは人外の存在でも同じなのだと思いたいから。
だから元蛇の私と、神の子である、あの御方も一緒だと嬉しいと願うのです。
・・変化した私のことを備に見つめられる方がいらっしゃいます。
私は頭上にある虚像のナナシ様を見上げます・・豊かな感受性を以ってしても、今の私の姿を見る仮面の奥に隠れた瞳と感情を読み取ることが出来ません。
頭を振ると、背中までの長さであった黒髪が白銀の鱗のような色彩に変わっており、足首まで伸びて、風もないのにふわふわとなびいていました。
元の白蛇の姿に似て・・髪には神が宿るとされていますから、その力を受けての影響でしょうか?・・ずっと白髪のまま、黒髪には戻らないのでしょうか?
(・・「ゆする」というお米のとぎ汁が、髪には艶やかで潤って良いらしいと?)
全くもってニンゲンの容姿に関心の無い蛇には、姿の変わった自分の美醜を判断出来かねますが・・痩せた身体と、白髪という面で考えると美しくないのでしょう。
幾百の目よりも、そのたった二つの瞳に映る色が何なのか・・知りたいのに、知りたくない葛藤・・蛇であった時には無かった感情・・人との触れ合いで芽生えてきた感情・・凪のように穏やかであった心に、一滴の波紋が生じるようで・・
このように水鏡によって、六歳の子供の身体から急に成長したことを確認したのですが・・もう一点、気になるのは蛇の時には無かった・・成長した私の身体の中で、『あまり成長していない箇所』があることです。
・・断崖絶壁とは言いませんが・・ええ、元蛇である私には、この程度の慎ましやかな大きさが相応しいのでしょう・・えぇ、一応の知識として子を育てるにも大事だということ・・また、それがニンゲンとして他者、特に殿方を引き付ける魅力の一部であるとは存じておりますが・・寄せても上げても無いものは揺れナイ!?
『人の魅力は外見のみで決まらず!、その大きさのみで決まらず!、ただ、その存在のみが事実!・・出っ張りなどあっては、流れを妨げる原因に他ならないのです!、我の賛同者よ集え!・・で、ですよねぇ?、な、ナナシさまぁ~!?』
残念ながら、ナナシ様に関しては凪の様な心持ちではいられないようです!?
急に成長したので怖がられるでしょうか!?、皆の視線は驚きだけですが、ナナシ様に嫌われたら、キライと言われたら・・私はどうしたら・・わたしはぁぁー!?
『なるほど・・極低温状態にて原子間距離が原子の空間上の広がりの度合いを表す熱的ド・ブロイ波長に近づくとき、原子各個の波動関数が互いに重なり始める。その結果、ボゾン同種粒子が区別できなくなる「量子統計性」が現れる。このとき、系のボーズ粒子群は相互交換に対する波動関数の対称性から相空間の一点に集まる様にふるまうものと予想される。結果として、巨視的といえる個数のボーズ粒子が最低エネルギーの量子状態を取り、ボーズ・アインシュタイン凝集が発現する。凝集体は多数の原子が一つの波動関数で表される巨視的な粒子状態であり、コヒーレントに振る舞う・・という事実は変わらぬと言う訳だな』
『そんなこと一言も申しておりませんが!?、そして、何をおっしゃられているのか、さっぱり、わけわかめでございます!?、ナナシ様!!!???』
とりあえず、全く気にされていないことは海よりも深く理解できましたがぁ!?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『・・太陽風に含まれる水素イオンが、鉱物に含まれる酸素イオンと結びつく事によって水を生成する現象も関わってくる訳だが・・巨大な陰の蛇を降霊した事により、ミコの松果体と糸状体が活性化し、マナを最大限扱える状態・・急激な成長を及ぼしたのだ・・今は、十五、六歳ぐらいの身体的特徴を示しているようだ』
淡々と続けて説明されます・・私の容姿の変化も等閑に付すナナシ様・・
『恐らく、降霊を解除すれば元の姿に戻るだろう・・私の顧慮しない件であるが、その身体は成長期にある年齢・・不確定な要素である・・落ち込む必要は無い』
ぴくんっ!?
『で、では、大器晩成という未来に一縷の望みを懸けても良いと!?』
ああ、やはりナナシ様は私の希望の光!、私が気に掛けていたことも見抜いておられて・・でも、それを慰めようと気を回されて・・全世界の少女たちよ、大志を抱け!、希望の未来へ、レディーゴー!なのですね、ナナシ様!?
『えぇい、蛇は合計六匹だったはず!、今は四匹を抑えておるに過ぎぬ!、残りは二匹・『その内、クーが一匹と熱融合したので、残り一匹になる』・知ってたもん!、間違えてないもん!、では、残りを・『急激な変化は、その負荷が未知数だ。現時点で、その必要があると断言出来ない・・無暗に藪を突いて、怒り狂う蛇に遭いたいと言うのなら止めぬが?』・と我も思っておったので、一応、現時点でのミコの安全は確認された訳であるな!・・ぐぬぬぅ、我の思惑が外れて・・』
皆の安寧の為、五匹目の降霊でも安全を確認すべき、と私自身は思いましたが、ナナシ様が保留の提案をされて・・始祖様は、臍を噛むような表情をされています。
ぞわ・・・
そんな中、微かに私が呼んだ意思を拾ったのか、私の影から最後の一匹が、その咢に翡翠色の玉を咥えたまま出現します!?
『翠!?・・そうか、ちゃんと食べない約束を守って、咥えたまま影に逃げたのね!?・・ごめんなさい、怖かったでしょう!?・・はい、ぺっして、私!』
食べなかったのは偉い(?)ですけど・・自分で自分を言い聞かせるのも何ですが・・素直に口から離された大事な友達を手のひらに受け取ります。
(変わらずに律儀と言うか、食い意地が張ってると言うか、だね?)
うー、薙の呆れた声が・・まあ、第二の被害者が出なくて良かったとしましょう!
『本当にごめんなさい・・何ともない?、大丈夫、もう食べたりしないから』
手のひらにいる翠を優しく撫でます・・見た感じでは、そのつるりとした外見に傷も何も変わりがないよう・・いえ、自分の手が大きくなっていることを比較すると、翠自体、少し大きくなっているように見えました。
(むにゃむにゃ・・もうたべれないの、ま~ま?・・じゃあ、わたしが、かわりにたべてあげるね・・ふにゃふにゃ・・)
私の感受性が強くなっているのか、翠が成長した為なのか、その寝言(?)がはっきり聞こえました・・蛇に咥えられ、その状態で影に引き込まれるなんて、正に身の毛もよだつ体験かと思いますが・・寝ていたので大丈夫だったのでしょうか?
『翠、まだ寝ているの?、ふふっ、良く寝る子なのね、よしよし♪・・うん?』
・・私が翠に周囲の方々以上の愛おしさを感じるのは、水滴にも似た形への親近感、庇護欲を掻き立てられる嬰児の姿、そして、私を助けてくれた恩があるから、のはずですよね?・・ええ、翠は私の大切な親友なんです・・そう親友・・
ぷるん・・私の手の上に乗る翡翠色の玉が揺れました・・
(・・ふぁ~、よくねたぁ~、あっ、ま~ま、おはよう~♪・・ございます?)
・・クーとより結びついた影響で、今なら翠の『ま~ま』という言葉の意味が分かります・・『マーマ』・・ご飯のことじゃなくて、『お母さん』のことですか!?
翠は、私のことを間違いなく『お母さん』と呼んでいるのですよね!?
(す、翠は、ど、どうして私のことを『ま~ま』って呼ぶの!?)
これまた凪のような心境ではいられない事例が発生いたしました!?、大きく動揺しながら顔を翠に、ぐぐっと近づけて事の仔細を問い掛けます!
(ま~まは、すいのま~まだよ?・・ちょっとだけ、ちがうけど、すいは、ま~まがま~まだって、わかるよ?・・エライでしょ?、なでてほめてくれる?)
ぷるん♪ぷるん♪
翡翠色の玉が大きく震えて、私に衝撃の言葉を伝えてきます!?、私いつの間に翠を産みました!?、寝ている内に産みましたか?、お相手はナナシ様ですか?、いいえ、身に覚えが御座いません!、記憶に覚えがござ・・あっ、そう言えば・・
(僕の権能が止まった事から、翠が天津神あることは揺るがない事実だ・・でも、山野、河川など在地の神である八岐大蛇様は、言わば国津神・・国津神が天津神を産んだなんて前代未聞だぞ!?・・うぅ、僕以外にそんな・・信じてたのに・・)
そんなことはあり得ないと薙が伝えてきますが・・え、何?、その裏切られた!みたいな感情は!?・・思い当たったのは、『水の私』のことではありません!、『山の私』なら子を成したかも知れないと・・確か、近江国須川?・・外道丸?
『御子様、子育てならば、四人の子を育てたクーが先達として・(薙、落ち着いて!、私はお母さんじゃないから!、産んでないから!)・だ、だよね?、ち、違うよね?)・まーまは、すいのまーまじゃないの?・・ふえぇ)・わー!?、翠も落ち着いて!?)・どうやら、取り込み中のようでございますかな?』
私・薙・翠の中に、気を利かせた(つもり)のクーも入って来て、薙を落ち着かせたと思ったら、今度は逆に翠が泣き出しそうな感触を伝えてきて・・じっくり元の記憶(山の私)を思い出すことが出来ません!?、蛇の記憶も失っているから!?
『あらあら、まぁまぁ・・薙様の事もございますから、翠様が御子様の御子様でも、おかしくはありませんわね、うふふっ♪』
更に、そんな事を察しの良いはずのお姉さんまで言い出して!?
『私よりも先に母になられていたとは・『お姉さんまで、そんなこ・』
私が誤解を解こうと、お姉さんに声をかけようとした所・・
ザッ!、ザザッ!!
『違いま・・な、なに?』『あら、聖域との中継がおかしいですわ?』
突然、頭上にある聖域の様子を映す虚像に波のような線が映り、異音が生じて・・
ガッ!、ガガーッ!!、ザザァァーー!!!
『な、なんだあれは!?『いかん!、もうそんな力を!?『キャー!?『うわぁっ!?『きた、きたよ!?『オイラは美味しくないぞぉ!?『ここに残る民だけでも!『みんな逃げて!?『お、おい!、待て・』行くぞ!』ま、アイツが!?』
激しい騒音と共に、虚像が砂嵐のような画面に変わってしまい、聖域の様子が映らなくなってしまいます!?、それに皆の悲鳴と、ナナシ様の叫ぶ声も一緒に聞こえて!?
『ナナシ様!?、どうされま・』ピカッーーー!!!『まぶしっ!?』
次に、こちらにある沖津鏡から閃光が走ると!?
どさどさどさ!!!
『あ、あなた方は!?』『ここは?・・あぁ!、御子様!』本物のミコ様だ!』助かった!?』まだ聖地にアイツが!?』御子様、始祖様、お助けを!』
その鏡から、沢山の何かが出て来ます!・・それはナナシ様と一緒に聖域に避難していた方々です!
『皆さん、大丈夫ですか!?、何があったのですか!?』
『黒いヤツが集まって・『ナナシ様の結界が・『でっかくなって・『割れちゃって・『皆をつかまえようと・『鏡で皆を逃がして・『ナナシ様がひとりで・『何人か捕まって・『残った者は・『御子様の所に・『聖地に残ってる!』
(いよいよ穢れが、最悪の形になってしまったのか!?)
私が何があったのか尋ねると、皆さん興奮状態にあるのか、口早に状況を伝えて・・別々におっしゃるので今一つ要領が得ませ・・
かぁー!!!
再び、沖津鏡から閃光が走り、今度は白銀色の品物之比礼、濃黄色の辺津鏡、深緑の道返玉が出現します!
全て大きな力を秘めた、大事な十種の神宝・・
・・ナナシ様が使っていらっしゃった・・持っておられたものばかり・・
私の胸が直接、掴れたかの様に、凄く苦しいなってしまいます!
窮地であるナナシ様にこそ必要なものばかりなのに!!!
ザザ・・・『・・ミ・・コ・・』『ナナシ様!?、ナナシ様!?』
苦し気なナナシ様の声が、途切れ途切れに伝わってきます!?
ナナシ様があんな声を出されるなんて余程のこと!、居ても立ってもいられず、何か私に出来ることは無いのか考えるのだけど、何の考えも浮かんで来なくてっぇ!!!
『・・あと・・を・・たの・・む・・』
ブツン!!!
苦しそうな声を最後に、虚像が真っ暗な画面になり、何の音も聞こえなくなってしまいます!!!
『ナナシさまぁぁぁーー!!!』
そして、私の喉の奥から悲痛な叫び声と共に・・・
バァァアッキーーン!!!
頭上の虚像を叩き割って、巨大で真っ黒な触腕が飛び出したのでした!!!
ミコ<胸が無い!?翠が私の子!?ナナシ様が危ない!?(錯乱中)
お姉さん<胸の大きさだけが魅力ではありませんわ!(たゆん)
薙<ミコの浮気者!、僕が、僕だけが・・(闇堕ち?)
始祖<我の出番少なくなイカ?