第1話 『新しい海の民と竜王』㉞新しい鬼道少女!
ミコ<クーを身に纏い、薙を振るう!、ついに鬼道少女ミコのスタイルが完成!・・のはずが!?
クー<犯した罪への咎は、何人たりとも走らせね・・じゃなくて受けねばならなイカ?
ナナシ<肉体ではなく精神への責め苦と晒し者に・・恐ろしいモノだな
『皆の者よ!、食物連鎖は世の常!、ナナシ様が言われた通り、ヒトガミ様、御子ミコ様は、優しい気持ちには優しさで返して下さる!、元指導者であるファー・スターの件は、悪意を以って悪意を返されたのじゃ!』
・・私を理解してくれるクーが、擁護の声を上げてくれるのは嬉しいです・・
『しかし、皆には御子様が優しいヒトガミ様か、何でも食べちゃう蛇の状態か分からぬだろうて・・』
・・確かに以前にも増して、人と蛇の間をふらふらと流転する私のことを即座に判断するのは、薙のように私をよく知っている者でも難しいことでしょう・・
『・・じゃじゃーん!、こんなん出ましたけど!』
だから、クーは注意喚起として自分なりに考えて・・私の『ワンピース型のスク水』の胸の部分を変化させて・・ぜっけんに片仮名でデカデカと・・
【 ミ コ 】
と、人の状態を表す名前を顕したのです・・は、恥ずかしいぃー!!!???
大司祭クー・ツゥー・ルーフとして呼び声を上げたので、顕世と幽世の全ての視線が、この私に集まってくるのですぅ~!?、頭がふらふらしてきますぅ~!?
『残念ながら、御子様の真の名は不明のままですからなぁ~・・それからの~・・蛇の時は、この様に分かりやすく変化させますぞ!』
にゅる~ん!・・『何となく予想してたけど、胸の名が!?・・』
今度は、平仮名でデカデカと・・
【 へ び 】
と、顕されてしまう・・・だけでなくてっ!?
ぐるる~ん!、『えっ、なに?、し、縛られる!?、きゃあっ!?』
更に私の纏っている装いが変化して、ぎゅぎゅっと四肢を拘束するのです!?
ぐらぁ~ん・・こてん!、『ふぎゅぅ!?、むぅ!?~むごぉ~むむ~!?』
束縛された私は成す術もなく、地面に転がされる・・だけでなく、猿ぐつわまでされて!?、不平の一言も漏らすことが出来ません!?、また息苦しくなるぅ!?
『あー・・うん、確かにその時の状態が何なのか、一目瞭然であるなぁ・・そして、暴走も抑えようとするのであるかぁ・・ナルホドナー・・』
それを見た始祖様と周囲からは、生暖かい視線を送られてしまいます!?
もうひとり(?)の理解者であるはずの薙は、無様と呆れているのか、沈黙しています・・この世に救いは?、救いはないのですかぁ~!?
しゅるるるる~・・『ぷふわぁぁ!?・・ふぅ、ふぅ・・うぅ、うぅ・・』
しばらくすると、拘束と猿ぐつわから解放され、新鮮な息を吸い込みますが・・
『申し訳ありませんが、この処置も致し方なし、と思っていただけると・・ちなみに、これらの文字は全ての者に伝わる特殊加工ですぞ!、いかがですかな?』
頭上のクーは、ふざけてるのではない、真剣な声音を伝えてきます・・ええ、ええ、必要な処置でしょうとも・・全て私の招いたこと・・諸悪の根源は私・・
・・皆さん知っていますか?、蛇に手足がないのは、臆病な蛇が、狭い所で見つからず隠れるのに都合がいいからなんですよ?・・それなのに、このような醜態を衆目に晒して・・歴代に、この様な蛇や、止ん事無い者は居たでしょうか?
・・いいえ、居ませんともおぉぉぉ!!!???
ぷっつん・・『ナンジャモ?』(御子?)『何か切れた様な音がしたぞ?』
『ふっ・・ふふっ・・ふふふっ・・クー・・最後にひとつだけ質問します・・』
・・顔にかかった黒髪も乱れたままに、私の口から声が漏れ出します・・
『東と西は、どちらの方角になりますか?』
・・私は立つことも出来ず、床にへたり込んだまま、右手で薙を探します・・
『へっ?・・幽世の海が広がっておるので、確かとは言えませぬが・・恐らく、あちらとこちらで・・御子様、それが何か?』
・・素直に教えてくれたクーに礼を言って、『漆黒の刀身』を握って・・
私は『まづ東を伏し拝み、伊勢大神宮に御暇申させ・・』をします・・
(御子?・・それってまさか?)、沈黙していた薙が何か気付いたでしょうが・・
・・その後、『西に向かはせ給ひて、御念仏ありしかば』をします・・
『御子様、どうかなされ・『重ね重ねの恥辱、もはや精神の限界ですぅ!?、首きり折り自害して、人に二び面をむかふべからずぅ~!』・うわぁあ!?、ミコが乱心じゃぁ!?』・やめ、御子、やめろぉー!?)・お、お止め下さいませ!?』
もう、これ以上のご迷惑はかけられぬと、『漆黒の刀身』で我が首を掻っ切ろうとするのです!・・ですが何故か、始祖様も含めて・・皆、私を止めないでー!?、死なせて~!?、神様と仏様に、今生最後の挨拶も済んだのですぅ~!?、もう嫁にも行けませぬぅ!?、ナナシ様にも捨てられますぅ!?、うわぁぁぁぁん!?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・こうして皆様に顔向けできぬと自死すら厭わぬとした私ですが・・・
残念ながら、戦力比は如何ともし難く、おめおめと生き恥を晒すことに・・しくしくと袖を濡らします・・このまま厚顔無恥に・・神も仏も、この世には・・
『・・・・・・・・・・・・・・・・』
ぴくんっ!? (な、ナナシ様!?)
そんな取り乱す私に微かに聴こえた、唯一の慰めはナナシ様の呟き!?
『クーの施策は把握した・・そして、私とクーが共にミコを監視するは是非に及ばず・・では、ミコよ、民の面前で実際に試すべきであろう?』
私の痴態にも全く動じられないナナシ様!、俗世の事など大義の前には些末事!、ええ、あんなこと如きで死んでなどいられません!、ああ、希望の光よ!
『わかりました!、はい、是非とも監視をお願いします!、どんどん試します!』
その希望の光は、そのまま私の生きる光明となるのです!
『ふぅ~、一時はどうなることかと・・では、御子様、宜しいですかな?』
ナナシ様にそう応えた私に、クーが続けて問いかけてきます。
『クーも御子様と共に蛇を抑えます故、今この場で、暴走せぬ様に蛇を纏うことが出来ますかな?、これは我ら全てにとって、極めて肝心な事でございます』
問いかけられた、その声を聞いた私は、はっ、と息を飲みます!
何故なら、いつもの陽気な声ではなく、命の尊さを知る者としての真摯な声だったから・・審神者として、今一度、私を見定めようとする者の声だったから・・
今、クーが生きているのは、正に奇跡としか言えぬ様な偶然の産物・・クーを喰い殺してしまった・・命の尊厳を蹂躙してしまった・・その変えようのない重い事実・・いつ何時、私が蛇となって災いを招くか・・その時になって対処しては遅いのです・・人と蛇が切り離せぬモノとして、ただ流されるだけでは駄目なのです。
自分で言うのも何ですが、生まれ変わる前よりも人の知性を備えたことで、より狡猾な立ち回りを行うようになった蛇・・約束を守って、私の行動を善悪の彼岸として見届けてくれた薙・・ですが、『破邪の神剣』である『草薙の剣』は、蛇がクーを喰らうことを防ぐことが出来ませんでした。
・・私は、神殿前で海の民の方々と約束した、【絶対に海の民の方を傷付けるようなことはしません】という誓いを反故にしてしまったのです・・
この提案の結果が、大事な分水嶺であると、私を含めた全ての者に伝わっていきます・・周囲の空気が一変して、緊張感が張り詰めていきます。
『理解しました・・人と寄り添う為に必要な条件・・私にそれが出来なければ、共に生きることは叶わぬ夢であること・・皆の不安を払拭せねばならぬと・・』
恥ずかしさや、辱めなどと感じているような甘えた精神では駄目だったのです!
海の民の大司祭としての立場を執るだけであるならば、始祖様と同じように、危険な私を人々から遠ざけ追放することが、簡単で安全で確実な方法でしょう。
それに加えて、自死を願う私を皆が止めてくれたのは何故でしょう?
厄介者である私がいなくなる方が、皆が幸せになれるでしょうに・・
私が愚かにも自死を選択したのは、死よりも辛いことから逃げるため・・
私が蛇を纏うことは、多くの者に不安と恐怖を与え、その命に危険が及ぶ可能性を否定できないのです。
・・いえ、私の傍らにいるクーたちこそ、最も危険な場所にいると言えるのです!
『クー・・皆様・・その心意気に深く感謝を・・今一度、目が覚めた心持ちです!・・天地神明に誓って、二度と、この身に蛇を降ろそうとも暴走せぬと!』
しかし、クーたちは、私の【人の心に寄り添いたい】という我が儘の為に、その身を尽くそうとしてくれるのです!、共に汚泥を被ろうと申してくれるのです!
クーたちは、私を恐れません・・しかし、全く恐れが無い訳ではありません・・ですが、それを乗り越える勇気を、行動を私に示してくれるのです!
そんなクーたちの恩に対して、私は何を報いたら良いのでしょうか?
私以上に私のことを大事に想って下さっている方々に、私は何を返したら良いのでしょうか?
・・自分を厳しく律し、蛇を御する事こそ肝要であったと考え直し、居住まいを正します!
『なるほど、クーと、人としてのミコが協力して蛇を制御しようと言うのだな・・蛇の四匹までは問題なく、その身に纏う事が出来るのは、既に実証済みであるが』
ナナシ様がそう判断されるのは、私が両手足に四匹の蛇を纏って、お母さんを帯びくるくる~しちゃった時のことを考慮してでしょうか?・・確かに、あの時の私は蛇でなく人の意思を保っていました。
『もう二度とアレは』『ワタシもあ~れ~って言うのは』『こりごりですわ~』
・・その被害者三人が異口同音に・・すいません、私も反省しきりですが・・
『始祖様・・依代の巫女、お姉さんの身体を返しては・『わかっておる!、だが、暴走の危険のあるオマエがいる限り、このままにさせてもらうぞ!、巫女も良いな!?『始祖様の御心のままに従いますわ』・素直過ぎて逆に怖いぞぉ!?』
良かった!、始祖様は、まだ少し難色を示されましたが・・お姉さんの本心としては、一刻も早く元の身体に戻りたいのでしょうけど・・その感情を抑えて理知的に・・お姉さんの為にも私は、私の蛇を抑えねばなりません!
(後は、蛇を纏ったことで、破邪の権能が反応しなければ良いのだけれど・・)
(こればっかりは、やってみないと分からない・・極力、僕も抑えてみるけどむ・『無理はするな、焦る必要は無い・・流転する水の様に、徐々に感覚を馴染ませる事・・ミコになら出来るはずだな?』・あっ、はい、ナナシ様、私、頑張りますね!』・っっ!?、コイツやっぱり・・ふん!)・えっ、薙?、もしもし?)
私と薙が『心の声』で相談している時に、偶然にもナナシ様が私に助言をして下さって、薙の言葉を遮る形になってしまって・・また薙がダンマリになって・・間違いなく、全力で協力してくれると思いますが・・仲良くしてほしいのに・・
・・とりあえず、気を取り直して!
『では、両足から、やってみます!・・出てきて!』『出てこいやー!』
しゅばっ!、しゅばっ!・・くるんっ!、くるんっ!・・しゃきんっ!!
私とクーの呼び掛けに応えるように私の影から2匹の蛇が飛び出し、両足に絡みついて、その姿を変えます!
トン!、カッ!、トン!、カッ!、『大丈夫そう!』『ですな!』(・・・)
両足に蛇を纏ったことで、私の目線が少し高くなります!、良きかな、かな♪
靴が、はいひーる、という履物に変じたからです!、後ろの地面に接する部分が小さく不安定かと思いましたが、元私の一部なので良く馴染み、転ぶ心配など無用のようです!、むしろ反対に動きやすい?、今のところ薙も反応しません!
・・・胸の名も【 ミ コ 】のままです!
『皆さん、大丈夫ですよ!、ミコのままです!、み~んなトモダチ♪、次は、両手に纏ってみますね!・・出ておいで!』『ブラックスネーク、カモン!』
何か気分も高揚してきました!、周囲の皆さん全てが、愛しく思えてきましたよ♪
しゅばっ!、しゅばっ!・・くるんっ!、くるんっ!・・
続けて、私の影から2匹の蛇が飛び出し、両腕に絡みついて・・
・・ジャキンッ!!、『これは!?』『むぅ?』(っ・・)
先ほどとは違う、硬質な音を立てて、その姿を変えるのです!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ザワ・・・ザワ・・・
四匹の蛇を纏う私の姿を見た周囲から、ざわめきが広がります・・
・・両手の人差し指、小指の部分にそれぞれ一つずつ、深紅の宝石をあしらった蛇鱗の籠手・・今までとは明らかに用途の違う武具の形・・横から見ると赤い目を持つ蛇の様に・・そして、親指が何でも飲み込む、凶悪な蛇の顎の様に見えます。
『御子様、今のお姿はこの様な勇ましいお姿ですわ♪』
恐れずに、お姉さんが鏡で私の姿を見せてくれますが・・本当は必要なかったのです・・何故なら、先ほどは無かった両足にも、紅玉と蛇鱗が生じたからです。
多頭の蛇・・それに呼応するように私の感覚も広く鋭くなり、自分の姿を見下ろす様な多角的視点も備え・・身体の底から力が溢れ出るのを感じます。
・・少しでも気を抜けば、そのまま大きな流れに飲み込まれてしまいそうな・・
胸の名も【 ~~~~ 】と、どちらかに定まらず・・
蛇がまた、この身を欲しているのです・・心地よい温かさを取り込もうとするのです・・再び、喰らおうとするのです。
ですが、流されません!、私は鬼道少女!、人に寄り添い、人の心を知る為に・・人として互いに手を取り合う為に!、蛇の時には無かった、この手の意味を!!!
『私が鬼道を以って、蛇を超えて、今一度、人に戻らん!、はぁぁぁー!!!』
お腹の底から一気に喉へと至る雄叫びを上げます!!!
失っていた人としての私の記憶が戻ってきたように、今の私には元水の神である蛇の記憶、感覚が戻ってきたのです!
そして、今までの神宝の働き・・万物は火・水・木・金・土の五行で成り立っていることを知ったのです!、顕世と幽世の理を知ったのです!
大きな流れに無理に逆らうのではないのです!、その流れを利用して、自らの流れを生み出すのです!
じわっ・・じわっ・・ぽっ、ぽっ・・(僕に水滴が!?・・水が生じている!?)
私の握っている『草薙の剣』は、微かな熱を伝えていました・・恐らく、この身の蛇に反応して焼こうとしているのでしょう・・ですが、私の大切な『薙』は、必死で耐えてくれているのです!
ならば、それに応えるのが『三種の神器』の主たる私の務め!
五行における金生水・・金属の表面に凝結による水気を生じさせるのです!!!
こぽっ・・こぽぽっ・・ごぽぽぽぽっ!!!
私を中心として何も無いはずの空中に、水滴が、水が、流れが生み出されます!
・・いいえ、何も無いはずはありません!、何も無いように見えるだけです!
そこには、その空気には、その空間には、必ず『水』があるのです!
そこには『私』がいるのです!!!
私は思い出します!、蛇であった時を!、流れる水に乗って大海に出た時を!
ぎゅりゅん・・ぎゅりゅりゅ・・・ぎゅりゅりゅりゅん!!!
私を中心として生み出された水が、流れが一方に向かって動き出します!
・・・その流れは、『螺旋』!!!
私は思い出します!、大海において水は混ぜられ、その存在を、流れを失くしてしまう!
・・・だから私は『螺旋』の流れを生み出したことを!
『螺旋』は大きな流れに逆らわず、その流れを受けて、確かな、自らの流れを、存在を示すのです!!!
私が大切と想う人たちに、私を大切と想ってくれる人たちに、人と蛇を、清濁を併せ持った『新しい自分の形』を示すのです!
きぃぃぃーん!・・ぱっしゃーん!!!、キラキラキラキラ!!!
そして、『螺旋』の渦が目に捉えられぬほどの回転を生み出すと、次の瞬間には光の粒子となって霧散していきます!
『・・今、この姿こそ、私の新しい姿・・』
・・私は、自分の姿を確認します・・両の手首には、それぞれふたつの深紅の宝石を嵌め込んだ黒色のブレスレットが・・両足首にも、同じようなアンクレットがあります・・重なり合う、軽やかな金属の澄んだ音がします。
殺し合いには似つかない流麗な姿・・私は、新しい鬼道の少女は、人の姿で蛇を超えたのです。
『私は鬼道少女ミコ・・どんな流れも変えて見せましょう・・』
そこには、黒から純白の衣装に変じた私の姿があったのです。
ミコ<やっと水行を使える様になりましたよ、ナナシ様♪、褒めて下さい?
ナナシ<漸く、他の魔法関係作品のスタートラインに立てた訳だが・・
@<第53部でやっと・・亀の子タワシよりも遅い進行スピードです(開き直り)
クー<亀の子タワシ・・それって動かないんじゃなイカ?
拙い作品ですが読んで頂いて、ありがとうございます。皆様の応援が生きがいです!
ブックマークやコメント、誤字脱字、こうしたらいいよ、これはどうかな?、何でもお待ちしております。
(ツッコミも宜しくお願いします!)