第1話 『新しい海の民と竜王』㉚その名は、鬼道少女・・!?
ミコ<もっと始祖様に私のことを知ってもらわねば~(ニチャア~)
始祖<寄るな、触るな、火を吹くど!?、蛇がなんだなんだ、食べちゃうぞ!?(錯乱)
薙&クー<そりゃ~怖がるはずだ(ですな~)・・・
『・・・命の尊厳を蔑ろにする炎ならば、それは愚かなニンゲンと同じことの繰り返しではないでしょうか!?・・・』
・・・じり・・・じり・・・
そう言って、『ソレ』は、ゆっくりと足を引きずりながら、燃え盛る炎である『我』に近づいてくる・・・その小さな体を焼いた炎だと言うのに恐れずに!?
『・・・炎とは皆を導く標と成り得るはずです・・・どうか、始祖様の炎で、ニンゲンである私と海の民の方々を正しく導いていただけないでしょうか?』
・・・ぼおぉぅ!・・・
そう言って『ソレ』は、怯むことの無く、『我』の燃える炎に小さな手を差し出す!・・・その焼かれる様が、『我』に内から何かの感情を突き上げさせる!
『そして、何より始祖様が大切に導いて来られた、海の民の方々を殺すなんて・・・心優しい始祖様も本当は望んでいらっしゃらないのでしょう?』
・・・じゅぅっ!・・・
そう言って、『ソレ』は苦痛の叫びを上げることも、苦悶の表情を浮かべることも無く・・・いや、その真逆の『微笑む』という『異常さ』を伴って『我』が燃え盛る手に触れようとする!?、再び、肉の焼ける音と煙と臭いをさせながら!?
『・・・がぁああっ!?、やめろ、来るな!、触るな!、我に触れるな!!!』
久しく感じる事のなかった、心の底からの恐怖と、えも言われぬ何かが沸き上がり、気圧され絶叫し、その手を振り払い、逃げる様に『ソレ』から遠ざかる!
・・・本能は『ソレ』が『我』を傷付ける意思を持っていないと告げている・・・理性は『ソレ』が『我』に服従や、屈服など求めていないと告げている・・・
『どうして、お下がりになるのですか?、憎いニンゲンを焼くのではなかったのですか?・・やはり、始祖様はお優しい方、もっと私のことも知ってほしい・・・』
だが、『ソレ』は永劫とも言える時と共に離さず抱えていた、『我が赤黒い怒り』を洗い流し、『別の何か』に剥がし落とす存在だと警鐘が鳴り響く!!!
そして『ソレ』は、再び火傷を負った事にも平然とし、『紫目』でこちらを見つめて・・・また『我』に手を伸ばし、『微笑み』を浮かべて近づいてくる!
・・・『紫色の瞳』とは、自然発生では1000万分の1と、ほぼ持つ者のない『特殊な光彩の色』・・・心の奥底に隠す全てを見透かす様な『異質なモノ』!
『お前は・・オマエは一体、何なのだ!?、炎を恐れる蛇ではなく、焼かれた事を憎むニンゲンでもない・・偽りの絆だと罵られても、自らの命を顧みず・・』
炎を纏う『我』であったが、全身に冷水を浴びせられたかのような寒気と震えを感じ、カラカラに乾く喉から何とか言葉を絞り出し、異質な『ソレ』に問いただす!
『大事な親しい者を喰い殺しておきながら、我に正しい道を示そうとする、その異様な精神は何だ!?・・・その奇異な紫の目を持つ、お前は一体、何なのだ!?』
・・・だが、既に理解していた、いや、理解させられてしまった・・・『ソレ』は『生き物の範疇では測れぬモノ』、『混沌と秩序の矛盾を孕むモノ』、『この世の理の外にいるモノ』、『清浄な蒼と不浄な紅を併せ持ったモノ』なのだと!
『なぜか、と問われれば、たとえ偽りでも、幻でも、そこで触れ合った手が温かく、優しくて・・・私は、それに応えたかったから、と答えましょう・・・』
・・・『ソレ』は『我』が必死な問いに対して、嬉しそうに・・・
『そして、私が何者かと問われるならば、皆に改めてお答えいたしましょう・・・私は人として生まれる前は、自然を愛する水と山の神、多頭の蛇であった者・・』
・・・満身創痍の身体からは似つかぬ、鈴のように響く静かな声で・・・
『そして、人として生まれ変わった後は、民を導く天皇と呼れる位にありながらも、戦乱の渦に巻き込まれ、務めも願いを果たせぬまま、波の下に沈んだ者』
・・・天球から差し込む、色とりどりの煌く光を浴びながら!
『そして、秘かに父と慕っていた、我が魂を分けた大司祭クーを喰らうという許されざる大罪を犯し、深い後悔の中で、人として喪くした真の名を取り戻した者!』
・・・その神秘的な『紫色の瞳』の輝きを更に強めながら!!
『そして、我が鬼道で以って皆を導く標となり、ヒトの心に寄り添う者!!』
その身から溢れる神々しい気を放ち、その手で力強く天と地を指す姿から目を離す事が出来ない!?、厳かに朗々と答える声を遮る事など何人も許されない!?
『その名も鬼道少女・・・ミコ!!!・・あれ?』
・・・何故か、名乗りと共に、先ほどまでの差し込んでいた色とりどりの煌く光も、身体から溢れる神々しい気も霧散していくのであった?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『・・・あれ、あれ?・・・私の本当の名前?・・・あれれ?・・・うーーん?』
『ミコ』と名乗った者は、何か意図した事と違ったのか、困惑した表情で小首を傾げる?・・・何かを思い出すために額に人差し指を当て、うんうん唸っている?
・・・ごおぉぉう!!!
『・・・戯言を・・・お前の名など、どうでも良い!、死に逝くものに名など必要ない!、今度こそ、骨も残さず焼き尽くしてくれるわっ!・・・死ねいぃぃぃ!』
・・・ぶうぅん!、ぶおぉぉぅーー!!!
直接、触れて焼く必要など無いのだと『我』に返り、複数の手で『怒りの炎』を重ね合わせ、巨大な火球を成す!!、そして、『ミコ』に目掛け投げつける!!!
『へっ?・・あっ、わぁっ!?、な、名乗り中なんですぅ!?、たんまー!?』
唸っていた『ミコ』が迫る火球に気付き、慌てふためき出すが・・・もう遅い!、これは互いの主張をぶつけ合う戦い!、闘いの中で隙を見せた者が悪いのだ!
『我』は『正義』、『正義は勝つ!』、卑怯でも勝てば官軍!、それは歴史が証明している!・・足元の『娘』をも巻き込むが、勝利には犠牲がつきものなのだ!!
ぶおぉぉぅーー!!!、『うわぁぁぁっ!?』
轟音を立てて巨大な火球が、為す術なく悲鳴を上げる『ミコ』と『娘』を襲う!
・・・かっきーーん!!!、『・・・なにっ!?』
が、響き渡る謎の金属音と共に、突然、火球がその向きを変え!?
『・・・うゎおあーー!?』
ぎゅーーーん・・・どっかぁーーーん!!!、ぶぉぉおぉーー!!!
『我』の頭ぎりぎりを高速で通り過ぎ、天球に当たって爆炎を噴き上げる!
『ば、バカなっ!?・・・我が全力の、怒りの火球を跳ね返しただと!?』
かがんだ体勢で驚愕・・・いや、火球を避けた為なのだ!、精神的ショックを受けた訳ではないぞ!?、海の民の神たる『我』は、決して膝など地につかぬ!?
『・・・思った通り、諱を名乗る事が出来ないのか・・・』
・・・突如、聞こえた『声』に振り返り、火球を打ち返した『物』の正体を見る!
『蛇に拘束されていたはずでは?、お前はミコを見限ったのではなかったか!?』
鉄をも溶かす獄炎を、その身で受けたというのに・・・そこには焦げ目一つ付かぬ、黒光りする『漆黒の刀身』が、『ミコ』たちを守るように宙に浮かんでいた!
『何か誤解があるようだけど・・・僕の大事な御子を傷付けたオマエに説明する義理なんてない・・・御子の事は、僕だけが知っていればいいんだ・・・とりあえず、今の御子は、僕が守るに相応しい存在だという事・・・僕たちがいる限り、オマエがどれだけ火球を放とうとも、御子たちを焼く事は出来ないと知れ!』
ちゃきりっ!・・・きらんっ!
『・・・ぐうぅっ!?』
その切っ先を向ける『漆黒の刀身』から、心臓を鷲掴みにされるような圧倒的な『力と声』が伝播される!?、『コレ』もまた『人智』の及ばぬ存在だと!?
『薙!?、一体、どういうこと?、蛇の拘束は?、破邪の権能は?、なぜ、私の命は助かったの?、薙が助けてくれたの?、なぜ、私の真の名が思い出せないの?、えーっと、それから・・・あれ、私、蛇を纏ってないのに薙の声が聞こえるよ?』
『娘』を庇う様に両手を大きく広げ、固く目を閉じていた『ミコ』が恐る恐る目を開けて、現状に驚き、その『漆黒の刀身』に向かって、矢継ぎ早に質問を飛ばす。
『なぜ、僕が自由になったのかと、権能が収まったのは、全ての蛇が逃げたからだよ・・・やれやれ、質問よりも助けた礼が先じゃないかな、無謀なる我が主様?・・・それに素っ裸で見栄を切るのも、色々と適切じゃないよね、御子様?』
『あっ、うん、ありがとう薙!・・・って、きゃあっ!?・・・うぅっ、言われてみれば・・・でも、必死で真剣だったのです・・・だけど、着る服なんて・・・』
今更な羞恥心で顔を真っ赤にした『ミコ』が座り込んで、モジモシして・・・
『だよね・・・今の御子には、服が必要なんだって・・・出来る?』
・・・じゅばぁっ!!!、きゅゅるるるるーーん!!!
『えっ!?、ふぅわっ!?』、『うぬうっ!?』
『漆黒の刀身』の一声と共に、突然、『蛇』が巻き付いていた『娘』から離れて『ミコ』に向かって跳躍して・・・まるで我ら海の民が親しい者を抱きしめるように、その身を分けながら『ミコ』に纏わりついていく!?、今までとは違う!?
しゃらららぁ~ん♪
涼やかな音を立て、先の硬質な姿と違い、全体的に柔らかな曲線を描く、その姿・・・我が記憶にあるニンゲンの衣服では『スカートのあるワンピース型のスク水』が近いだろうか・・・ただし、頭や手足を守るような部分もあり、肌の露出はそれほど多くない・・・お腹も冷えなさそうで、これで目のやり場も安心か?
『これは・・・私じゃない・・・何、この優しさに包まれている感じ・・・でも、これは可愛らしくて、とーっても素敵です♪、うふふふ♪』
・・・どうやら、これも『ミコ』の意図しない事なのか、己の新しい姿を物珍しそうに、キョロキョロ見ながら・・・どうも、ご満悦な様子である?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『そして、御子の命が助かったのは、僕たちだけの力じゃない・・・お姉さんや、娘の母親、そして、周りの皆のおかげさ・・・皆にも礼を言いなよ?』
そう言って、『漆黒の刀身』は頭上の天球を指し示す・・・そこには・・・
『いつの間に、こんなにも御霊様がいっぱい集まって!?・・・あれ?、生玉と沖津鏡も外にあるよ!?、私が飲み込んでしまったはずなのに!?』
満天の星のように輝く多様な色彩の光の玉・・・同胞たる『海の民』の魂たちが集まり、不思議な力のある玉と鏡も、あの世の大海の中に浮かんでいる・・・先ほどの天球から差し込む、色とりどりの煌く光の正体は、これであったのか?
『あの神宝に引っ付いてる、海のような青色と、優しいお日様のような橙色の光の玉は・・・まさか、お姉さんとお母さんの魂!?、幽世に出て大丈夫なの!?』
『姉』と『母親』の魂が石と鏡に触っている?・・・『海の民』の魂が『海の民』の死後の世界に行って何が悪イカ?・・・『我』のMana感知能力から、二人が何らかの働きを起こしていることが観測され・・・
『あの世の皆さん!、始祖様の思い、伝わりましゅたか!?、私も始祖様の気持ちが痛いほどわかりましゅ!、何たってワタシ、始祖様と合体してましゅたから!』
『海のような青色』・・・『母親』の魂がそんな『声』を上げる!?、確かに『我』の想いを知っている者・・・しかし、『合体』は語弊が無いだろうか!?
ざわ…ざわ…ざわ…
『始祖様がこんな思いをされていたとは』『ヒトガミ様、いや、ニンゲンはヒドイ!』『我らは騙されていたのか!』『ニンゲンは許せない!』『我らは呪われた種だったのか!?』『神に殉じて終わらせなければ!』『何も信じられない!』
ごぉぉぉうぅ!!!
『おおっ!?、力が湧いて来る、これは怒りの力か!?・・・我の怒りが同胞たちに伝わる日が来ようとわ・・・いいぞ!、そうだ!、もっと怒れ!、憎め!』
それを受けて、同胞の魂たちが様々な『声』を響かせて来る!・・・感じる所では、半数が『我』を理解し、『ニンゲン』への『憎しみ』を抱き・・・その『憎しみ』が『我』の炎を強化させる!、この怒りは、『我』だけのモノではないと!
『では、続けてお尋ねします!、始祖様と、御子様のご意見はどうでしたか~?、私は、御子様を応援いたします!、でないと、長男さんと幸せな結婚が出来ません!、私たちの輝かしい未来の為にも、是非、御子様を応援いたしましょう!』
『橙色の光の玉』・・・『姉』の魂が『母親』と同じように石の力で、あの世の魂たちに呼び掛けている?・・・純粋な私欲が、他の魂たちに影響を与えている!?
ざわ…ざわ…ざわ…
『やはり子孫を殺すのは賛同できぬ』『あのニンゲンは焼かれて罪を償ったのでは?』『私は、あのニンゲンを応援するわ!』『始祖様どうか、お考え直しを!』『ニンゲンと共に手を取り合う未来を!』『子供よ?、痛々しくて可哀想だわ!』
ぱああぁぁ!!!
『あぁっ、痛みが引いていく!?、皆様の思いの力が、生玉を通して私を助けてくれたのですね!?・・・皆様、お姉さん、お母さん、ありがとうございます!』
しかし、残りの半数が『我』への『反対』意思を示し、『ミコ』への『賛成』を表明する!?、何故だ!?、『ニンゲン』は『悪』だ!、憎め、同胞たちよ!?
『黄泉の水で繋がっていた影響もあるけど、意思とは形無きモノ・・故に、生である陽とは逆の、死である陰が強まれば、それを伝播する力も強くなる・・だから、死に瀕した祭司である御子が、始祖の思いと記憶を仲介し、幽世の魂たちに伝わった・・また、そこに蛇から吐き出された生玉が無ければ死んでいただろう』
『漆黒の刀身』が、今の状況になるまでの説明をする・・・結局、説明するのか?
『なるほど・・・蛇が飲み込んだモノを吐き出す時・・・それは、身軽になって危険から逃げる時!、始祖様の炎を怖がった蛇が、石と鏡を吐き出したのね?、でも、人の身である私はそれに気付かなかった・・・確かに、私が蜷局を巻いて動かないのは、休んでいる以外で、お腹の中のモノを消化している時があったわ!』
説明を受けた『ミコ』が納得したように頷いて・・・確かに、石と鏡なんぞ消化するには時間がかかりそう・・・って、『我』も納得してどうする!?
『そして、お姉さんと母親が神宝を使えるのは、魂の状態となって様々な制約が外れたからだ・・奇しくも、怒りを炎に変える始祖・・お前と同じようにな!』
ちゃきりん!
『うぬぬぬぅ・・だから、我が炎でもミコを焼き殺す事が出来ず、しぶとく生き残ったという訳か・・我が怒りを同胞たちは、正しいと認めてくれたが・・』
『漆黒の刀身』が、調子に乗って饒舌に語る・・・説明好きなんじゃなイカ?
『よかったですね、始祖様!、始祖様の思い、皆さんに伝わったみたいですよ♪、これで私も痛みに耐え、焼かれた甲斐があったというものです♪、これで何も怖くない・・・さあ、始祖様、お手を?、互いにもっと理解を深めないと♪』
そして、紫の眼のミコは笑顔を見せながら、自分が死にかけた事も気にしていないように無邪気な言葉を・・・その精神の異常さを、恐らくコレは気付いていないのだろう・・・懲りずに、また手を差し伸べて来る!?、ヤダヤダ、ヤダモン!?
『ひぃー!?・・た、確かに我が怒りを同胞に伝える事は我の長年の宿願であった、そ、それには素直に感謝するが、しかし、その手を従順に取る訳にはいかぬぅ!?、ま、周りを見よ不平な者もおるぞぉ!?、お、お前も民を導く者ならば民の総意に従うが道理であるなぁ?、最終的な答えを出さねばなるまいぃー!?』
再び、えも言われぬ何かが我の中より沸き上がるが、同胞たちの前で無様に狼狽する醜態は見せられぬ!?・・・『我』は『海の民の神』、『始まりの始祖』なんだぞ!?、取り繕う様に無茶苦茶早口で捲し立てる!
(現時点で民衆は、賛成と反対の半々で意見が膠着状態だが・・・我に賛同する者を集めれば、ミコを焼き殺す事が出来よう・・ミコは間違いなく、海の民たちにとっても危険な存在・・断罪して始末してくれる!)
・・・その中で、我は勝機を見出したぞ!
クー<突然の野球回と某番組要素、次回ファイナルアンサーですな!
@<民主主義ばんざーい!、一部だけの意見ではイカんのですよ?
薙<どんな球も打ち返してやる!(←何かスイッチが入ったようです?)
ミコ<鬼道少女、水の装です!って、皆様に裸見られた!?、うぁーん、もうお嫁に行けない!?
拙い作品ですが読んで頂いて、ありがとうございます。皆様の応援が生きがいです!
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