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バツイチ鬼道少女と心臓外科医  作者: かぐつち・マナぱ
バツイチ鬼道少女と心臓外科医 第2章 『創世記戦争』
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第1話 『新しい海の民と竜王』㉙悪い炎と良い炎

始祖しそ<全てを灰にしてくれるわ!、ぶるぅあぁぁ!!!

ミコ<・・・(返事がない、ただの焼死体のようだ)

クー<イカん!、ミコ様のHPはもうゼロじゃなイカ!?

ぶぉおぉぉぉうっ!!!


『あの世で親子共々、こうなった原因のニンゲンを憎み続けるのだ!!!』


右腕に複数の腕をからませ、『黒く染まった娘』に巨大な獄炎の拳を振り下ろす!


ぎゃりゅりゅん!!!、どおぉおぉんっ!!!


加速された質量と激しい熱、轟音と衝撃波が床をえぐり、空間を揺らす!、そこに如何いかなるモノが存在しようとも、その全てを灰燼かいじんす、無慈悲な痛恨の一撃!


(・・・ズキッ!)・・・パラパラパラ・・・(ズキッ!・・・)


床に深くめり込んだ拳を持ち上げると、焼き焦げ、粉々になった破片が拳から落ちる・・・良心の呵責かしゃくを訴えるかのように、火傷が痛みを強く告げてくる・・・


『・・・これは祝福なのだ・・・神の愛・・・救済なのだ・・・』


その破壊の痕跡を確認し、静かにつぶやき、ゆっくりと後方に振り返る。


『・・・それを邪魔するとは・・・まだ食い足りないのか、悪食の蛇め・・・』


安らかな死を与えたはずの拳には、とうとい命を奪ってしまったというにぶさが感じられない・・・何故なら、拳の当たる間際に『あの蛇』が凄まじい速さで『娘』に巻き付き、その場からさらって跳躍し、絶対なる死からのがれたからだ。


・・・するるる~・・・


その蛇は、器用に娘を巻き付けたまま、焼き焦げた、まだ小さな遺骸の元へ・・・


・・・ぐ・・・ぐっぐ・・・パラパラ・・・


『よもや完全な灰にせねばならぬようだな?、死にぞこないのニンゲンめ・・・』


絶命したはずの『ニンゲン』が、その四肢を折り曲げ、震えながら身を起こそうとしている・・・その都度、黒焦げた肉が剥がれ落ちる・・・その姿は、さながら地獄の業火に焼かれても死に切れぬ罪人のようで、胸糞悪い怖気おぞけすらもよおす・・・


・・・ぐちゅ・・・ぐちゅ・・・


『それも多くの代償で得た力か!?、いやしいヒトの皮を被った化け物めが!!!』


そして、『ニンゲン』特有の赤い血を流しながら、新しい肉が焼けた部分を押し退け、盛り上がり、見る見るうちに傷が治っていく・・・常軌を逸する『ニンゲン』の能力・・・いや、この『化け物』は恐ろしいほどの生命力で再生しているのだ!


・・・ぐちゅ・・・ぐにゅり・・・


ふらつきながらも完全に二本足で立った『化け物』の眼窩がんかで、気色きしょく悪い音を立てて焼失したはずの眼球が再生していく・・・それに伴い、陽炎のような圧力を徐々に感じ・・・その眼球に『我の怒り』に似た『赤黒い色』がともり始める。


・・・にゅるり・・・にゅるり・・・にゅるり・・・


そして呼応するかのように、また蛇たちが影から現れ、その身に巻き付いていく!


『ほう、我と殺る気になっ・『・・ミ・・・コ・・・さ、ま・・・だ・・・め!』


それに対して身構える『我』の言葉をさえぎって、突然、『化け物』の足元にいる『黒く染まった娘』が苦悶の表情で、それに手を伸ばし、声を上げる!?


『・・・・・・・・・・む・・・ん・・・!?』


それに気付いた『化け物』が、弾かれたように『娘』に振り返り・・・そして、蛇の鱗に覆われた手で『娘』の手を握ろうとかがみ・・・躊躇ちゅうちょして、その手が空中で止まる・・・が、その手を『娘』は、躊躇ちゅうちょする事なく強引につかむ。


『お、とう、さ・・・この・・・がん、ばっ・』・・あはははぁっ、笑わせる!、父親のかたきである、お前に掛ける言葉がよりによって、頑張れ、だと?、有り得ぬ事よ!、父を想う娘の感情を無視する、そんな悪臭漂う三文芝居は要らぬのだ!』


今度は、『我』が『娘』の言葉をさえぎってやろう!、『我』は、そんなモノでほだされる情など持ち合わせぬ!、そんなモノは、上辺うわべだけの友達ゴッコに過ぎぬのだ!


『化け物のお前に向けられた優しさ・・・全て、仕組まれていたからだ!、その娘だけでは無い!、偽りの関係なのだ!、そこに真実の信頼など、ありはしない!』


『娘』の差し伸べられた手を『化け物』が両手で包み込む様子を見ながら・・・


『その差し伸べられた手も、触れ合う手も全ては幻!、お前は何も与えない!、お前には何も与えられない!、お前と海の民たちがしてきた、今までの全ての努力と苦労は、崩れることが必然の、無意味な砂の山を築いていたに過ぎぬわ!!!』


『娘』が他の手で『化け物』の醜い火傷顔に触れるさまに、侮蔑ぶべつの視線を送りながら、大声であざけののしる!、我の『赤黒い怒りの炎』がヤツに燃え移らんと!


・・・しばらくして『化け物』が静かに『娘』の手を戻し、立ち上がる・・・『娘』は変わらず拘束され続け、苦しそうな声をあげ・・・そして、まだ全身に深い火傷を残した『化け物』が、こちらに振り返る・・・うつむき、手を見つめ、ぶるぶると震えて・・・それは焼かれた炎への恐怖か、それとも受けた痛みへの怒りか?


『さあ、どうした、絶望したか?、憤慨ふんがいしたか?、その力であわれな道化どうけ同様、我も殺すか?・・・所詮、この世は弱肉強食!、力こそ正義!、弱者は、だた搾取さくしゅされるのみ!、純粋な暴力こそが全てを解決する!、さあ、憎悪にその身を焦がせ!』



『化け物』に向かって、誘う様に両腕を大きく広げ、炎と共に高々と叫ぶ!!!



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



・・・ごぼっ・・・しゅぅー・・・かひゅ・・・ごほっ、ごほっ・・・


叫び声すらも上げることができない灼熱の炎に臓腑ぞうふを焼かれ、死の淵をのぞき・・・喉を、その奥を焼かれた傷が治っていく中、不完全な呼吸で咳き込み・・・


『す、さま、じい・・炎で、した・・・ごほっ・・なぎに劣らぬほど、の・・なぜ、っぅ・・・今、私が生き、ながらえて・・・いるのか、わからぬほどの・・』


一瞬で皮膚が焼かれ、全身が、血が沸騰し蒸発する・・・気が狂うほどの痛みを再び感じながら・・・濁った視界の中、何とか、かすれた声をしぼりだし・・・


『私の・・・蛇の力じゃ、ない・・・ごほっ、ごほっ・・・むしろ、怖がった蛇は影に逃げて・・・人である私だけを炎に置き去りに・・・蛇にとって人の体は邪魔なもの・・・人としての死は、蛇にとって古い皮を脱ぎ捨てるだけのことで・・』


人の心を理解したいという私の願い・・・その為に、私は今まで危険な事にも向かって行った・・・だけど、その全てが『()』が故意に『()』を嫌って、その命を捨てようと考えてきたことだったとしたら?・・・私は、みんなに『情』を寄せていたのではなかった?・・・そんな疑念がふくれ上がってきてしまって・・・


『炎に焼かれて伝わってきたのです・・・ごほっ・・・始祖しそ様の膨大な記憶・・・海の民は、ニンゲンに従うため創られたという残酷な歴史・・・私と同じニンゲンが、多くの生き物を犠牲にしてきたと知り、苦しかった・・・そして、その何よりも皆が私に優しかったのは、その為だったんだって、とても悲しくなって・・・』


そして、感情と人の肉は炎に焼かれ、『怒り』に変わってしまう所だった・・・今もこの臓腑ぞうふを焼く、残り火のように『赤黒い色』に染まってしまう所だった・・・


『だけど、そんな私よりも始祖しそ様はもっと・・・比べものにならないほどの悲しみと苦しみをかかえてこられて・・・それを深く感じ、知ることができ・・・始祖しそ様のニンゲンへの怒り、その怒りは至極しごく当然のことと思いました・・・まずは、始祖しそ様の怒りが何であるかを知らずに口出しし、嫌な思いをさせてしまったこと・・』


・・・轟々と燃える赤黒い炎の前にひざまずき・・・


『深く謝罪いたします・・・申し訳ありませんでした・・・ですが、決して始祖しそ様のお気持ちをないがしろにした訳ではないこと・・・その怒りを避けずに受ける覚悟が私にあること・・・私のこの身で以って、その証とお考えいただけませんか?』


・・・しゅるり・・・とぷん・・・


身にまとっていた蛇を影に戻し・・・服は完全に燃え尽きてしまったので、一糸まとわぬ姿になって・・・蛇の力が弱まったために走る、全身の激痛を無理やり、歯を食いしばり耐え・・・悲鳴を上げる体を折り曲げ、深くこうべれます。


『・・・ニンゲンの行った悪逆非道を認め、びると言うのか?、我に許しをうと?・・・己が命を惜しんでか!?、そんな事をしても失った命は戻って来ぬ!、我が苦渋の日々は消えぬ!、我が怒りは魂を焦がし、がれる事はないのだ!』


静かに私の言葉を聞いていた始祖しそ様ですが、それを否定するように荒々しい声を上げ、轟々と燃える赤黒い拳を私の眼前に向けてこられます。


『己が命を惜しんで、ではありません・・・っぅ・・・こぼれた水が戻らぬのも、お怒りになるのも承知の上で、私は始祖しそ様にお願いしたいことがございます!』


頭を垂れる私に、燃える拳から発せられる熱が、直接触れているわけではないのに、私の火傷した身体を容赦ようしゃなく熱し、凄まじい痛みを与えてきます・・・


『私の身はどうなっても構いません!、ですが、娘ちゃんには・・・いえ、海の民の方々には何の罪科つみとがもございません!、どうか、憎いニンゲンである我が身を焼く代わりに、海の民の皆を焼かぬよう、伏してお願い申し上げます!!!』


・・・ですが、私は引くことなく最大限まで頭を下げて、ひたいを床につけます!


『綺麗事を語るな!、狡猾こうかつなニンゲンの皮をかぶった化け物め!、貴様のちっぽけな命ひとつで、ニンゲンの犯した罪が消えるとでも言うのか!?、この怒りを手放せと、陰惨いんさんたる過去を忘れろと、同胞たちに伝えることなく消えろと言うのか!?』


『いいえ!、そうは思いません、そんなことは言いません!、どんなことをしても起きてしまった過去は変えられないのです!・・・だけど、その怒りは始祖しそ様が大切に思うものがないがしろにされたからこそ抱かれた怒り、正しい怒りなのです!、私はそれを手放せとは言いません、誰もその炎を否定してはならないのです!』


劫火におくすることなく、始祖しそ様を真っ直ぐに見上げます!!!


『本当に必要なのことは過去を無視せず、忘れることなく正面から見つめ考えることです!、何も知らぬ海の民に、この事実とその怒りを正しく伝え、皆に認めてもらい、それを後世にも引き継ぎ、二度と悲しい出来事が起こらないようにすること・・・その為には事実を知る始祖しそ様と海の民の方々が必要なのです!』


『我が怒りを・・・なにを・・・お前は、何を言っている・・・』


やっと、しっかりと見えた像は、明らかに動揺されているお姿でした。


『その怒りを目に見える力として伝える・・・それもひとつの方法でしょう、必要な時があるでしょう・・・ですが、荒れ狂う炎は恐ろしいもの・・・全てを飲み込み焼き尽くし、きっと、その後には何も残らない・・・いいえ、むしろ新たな憎しみの炎が生まれ、それは始祖しそ様に向けられてしまうでしょう・・・』


ゆっくりと身体を起こし、立ち上がります・・・


『そうだ!、それでいい!、そして、全てを焼きつ・『・そんな悲しい連鎖の炎を私は望みません!、命の尊厳をないがしろにする炎ならば、それは愚かなニンゲンと同じことの繰り返しではないでしょうか!?・・・されど、私はこうも考えるのです・・・炎には悪い炎もあれば、良い炎もあると・・・』


そして、ゆっくりゆっくり炎に向かって行きます・・・


『良い炎とは不安な闇を照らし、こごえる皆をあたためるヒトの世に不可欠なもの・・・始祖しそ様の炎を消す必要はありません・・・ただ、少しだけ弱めていただけないでしょうか?、炎とは皆を導くしるべと成り得るはずです・・・どうか、始祖しそ様の炎で、ニンゲンである私と海の民の方々を正しく導いていただけないでしょうか?』


そして、今度は私から、その燃える拳に自らの手を差し出します・・・



『そして、何より始祖しそ様が大切に導いて来られた、海の民の方々を殺すなんて・・・心優しい始祖しそ様も本当は望んでいらっしゃらないのでしょう?』



そして、微笑みながら、その火傷のある手を握ろうとするのです・・・


蛇<炎が怖いから逃げちゃった、ごめんね?、てへぺろ?

ミコ<こんがりこーんと焼かれたりもしたけれど、私は元気です!

クー<なぜ、焼かれても大丈夫だったのかは、次回『説明しよう!』なのじゃ!


拙い作品ですが読んで頂いて、ありがとうございます。皆様の応援が生きがいです!

ブックマークやコメント、誤字脱字、こうしたらいいよ、これはどうかな?、何でもお待ちしております。(ツッコミも宜しくお願いします!)

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