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バツイチ鬼道少女と心臓外科医  作者: かぐつち・マナぱ
バツイチ鬼道少女と心臓外科医 第2章 『創世記戦争』
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第1話 『新しい海の民と竜王』㉘獄炎の拳

ミコ<起こせ!、混沌(カオス)(ハリケーン)!って、色んな意味で鬼道少女、最大のピンチ!?

始祖しそ<恨みを込めて浴びてくれる!、汚物は焼却消毒だ!、ヒャッハー!?

@<前書きから前回の続きにて、お食事中の方など申し訳ありません。また今回は、実験動物側のかなりキツイ話になりますので、ご注意下さい_(_ _)_

・・・これは『われ』が『自我』を得て、今は海中に没した実験施設を彷徨さまよっていた時の記憶・・・激しい頭痛と混濁した意識を抱えて、孤独の中で・・・


(「・・・放射線によって励起した空気中の電子が非励起状態に戻る時、高エネルギーの光子が放出され、それは青い閃光として観測され、その電離は・・・」)


 ・・・異臭のする濁った水をめた、ひびの入った水槽は・・・


(「・・・逆に、非霊起状態のManaマナが何らかの要因で霊起した時、そのエネルギーは様々な事象への干渉として観測され、その意志を反映し、生物にも・・・」)


我らの元となった生物、『頭足とうそく類』の神経細胞は約5億個あり、これはワンワンと五月蠅うるさく吠える四足の獣と並ぶほどで、個を区別し得る『鏡像自己認識能力』も備えている・・これは『おのれが閉じ込められている状況を理解できる』という事だ。


 ・・・青緑色のこけを周辺にびっしりと蔓延はびこらせ・・・


(「・・・猫などの哺乳ほにゅう類を対象とした今までの実験結果により、Manaマナへの耐性は、脳神経系の組織が重要な働きを示している事は、周知の事実であり・・・」)


また頭足とうそく類のニューロンの発生や、ニューロン間の短距離相互作用を調節するプロトカドヘリン類は、哺乳類の2倍であり、住処を装飾したり、貝などで外敵から隠れ、身を守ったりするなどの高度な行動をる、優れた知性を持つ生物であったが、自らを『ニンゲン』と名乗る者のような『自然の摂理せつり』に反するようなおろかな『知性や文明』を持つ事はなかった。


なぜなら、大自然が定めた、頭足とうそく類の『平均寿命2年』という『直系の子孫のみをのこし、海にかえってく運命』に従い、調和した美しい生をまっとうしていたからだ。


(「・・・次に示す結果は、高度に分化した神経細胞を持つ頭足とうそく類では、哺乳類を超えるManaマナ耐性獲得の可能性を示唆しさするもので、その副次的作用により・・」)


その繁殖は、生涯にたった一度だけ行われる相思相愛の儀式・・・数時間にわたる神聖な儀式が終わると、オスは力尽き生涯を閉じる・・・メスは卵が無事にかえるまで、一切餌を獲る事なく、片時も離れずに卵を抱き続ける・・・亡き夫の想いを受け継ぐように卵を守り、その身が次第におとろえようとも無償の愛を注ぎ続けるのだ。


そして、母ダコは、卵膜に優しく水を吹きかけ、子供たちの孵化ふかを助け、その旅立ちを見届けると安堵あんどし、海底に横たわり、力尽きて死んでゆくのだ。


・・・水の色は、元の色を想像できないほどの『赤黒い汚い色』をしていた・・・


しかし、頭足とうそく類の『ニンゲンと同程度に極めて大きいゲノムサイズ』を持つ事、『タンパク質をコードする遺伝子はニンゲンを上回る』という頭足とうそく類の特性に目を付けた『ニンゲン』がManaマナの研究として、『さだめ』に反する術をほどこしたのだ。


(「・・・生来の『短命』という障害を解決し、今後の実験に柔軟に対応可能な種として遺伝子の組み換え、及び、体細胞、受精卵クローンの作成を可能に・・」)


もう、この水槽を管理する者がいないのか、それとも管理する必要がない『廃棄物』として認識されたのか・・・こうなった経緯は不明だが、この水槽の他にも実験の為に集められた、数え切れぬほどの死骸が無秩序に腐り果てるまま放置され、管理者である『ニンゲン』の生きている姿もなかった。


実験により生み出された存在は、親個体と全く同じ遺伝子を持つ個体として、理論上は無限に作ることが可能であったが、Manaマナの制御が困難であった為か、染色体分配異常を起こし、誕生まで発生出来る個体は、全体の2~5%に過ぎなかった。


実験に適さない存在は、容赦なく廃棄され、生きたまま他の生物の餌にされた。


(「・・・以上により従来の方法であった、外部からの観測以上の知見が得られ、検証実験の有用性が増し、終了までの期間短縮が可能となり・・・』)


激しい頭痛の原因は、り込まれた実験に関する記録が呼び起されている為・・・その記録は、頭部を固定切開して頭蓋を十分に露出してから、ドリルで頭蓋骨に孔を空け、脳に直接電極を差し込み、電流と共に強制的に埋め込まれたもの。


混濁する意識の原因は、犠牲ぎせい者たちから『継承』されたモノ・・・脳幹の切断、大脳の一部摘除、様々な部位への薬物を注入する事により、人工的に起こされた症状、障害への反応を調べるなどの実験で強制的に与えられた経験の記憶。


『おぞましい所業の数々・・・天から与えられたことわりけがした存在め・・・』


それら全てを勝手に背負わされ、『我』は『自我』という『知性』を得て、Manaマナに適応した『第一世代』の存在として呪われた生を受けてしまったのだ。


バン!、ビシビシビシ・・・バキンっ!、ドォバァーーー!!!


そのいきどおりをぶつける様にイスを持ち上げ、水槽へ叩きつける!・・・水槽のガラスは亀裂を広げ、砕け散り、内容物と共に凄まじい腐敗臭を辺りにぶちまける。


『我が同胞たちも痛ましい姿に・・・生きた者はいないのか、ここも駄目か・・』


最早、元の姿が判別できないほど、ぐちょぐちょに崩れた体をさらす同胞であったモノたち・・・唯一、原型を留めているのは、人間と同じような構造を持った生来の大きな黒い眼球のみ・・・無理やり狭い水槽に詰め込まれていたのだろう・・・無数の黒い球体が床に転がり、こちらを見つめている・・・訴えるかの様に・・・


だが、その生前の訴えが届く事は無かった・・・『ニンゲン』でも言葉を教育しなければ話す事が出来ない様に、実験動物たちに言葉が話せるだけの知性が備わったとしても言葉を禁じ、反感を持たせない様に制御され、厳しく管理されていた。


ぴちゃ・・・


あわれなむくろと思っていた一匹の同胞の腕が、震えながらかすかに上がる!


『生きているのか!?、おい!、しっかりしろ!?』


・・・例外として強制的に進化させられた、その腕に高度に分化した神経細胞、言わば第二の脳を持つ我ら頭足とうそく類のみは、『継承けいしょう』されないはずであった記憶などの『知性』や、感情などの『情緒』を少しずつ共有していったのだ・・・


弱々しい、その腕を力強く握る!、『我』の意志が、同胞の命の支えになればと!


それは腕同士の直接的な接触から始まり、いつしか空間を超えた『情報伝達』をも可能にし、それ故に他の実験動物や、『ニンゲン』の感情や思考なども受信し・・


(・・ニン、ゲン・・・マ、モル・・・ダイジ・・・スル・・・)


その同胞から伝わって来たのは、自らを非道に合わせたはずの『ニンゲン』への怒りや憎しみでは無く、むしろ、優先して尊重すべき存在だという感情であった。


(『馬鹿な!?、ニンゲンは憎むべき存在だ!、怒れ!、そして、その怒りで消えかけている命の火を燃やして生きろ!』)


そう、『我』は同胞に『ニンゲン』への憎悪のメッセージを送る!


ズキンッゥッツ!!!、(『ぐうぅあぁぁ!?』)


が、しかし、突然の凄まじい頭痛が『我』を襲い!?


『何と利口な!?、ニンゲンはとうとい存在です!、うやまい、そして、その喜びで消えかけている命の火を燃やしていしずえとなるのです!』


そのメッセージは、真逆のモノとして変換され送られてしまう!?


・・・・・・・・・・(・・ヨロ・・コビ、カ)・・・・・・・・・・(ミ、サマ・・コニ、ツ)・・・・・・・(タ・・エ、テ・・)


・・・ぺちゃ・・・


それを受けた同胞は、弱々しい息が絶える中、晴れやかな心境を伝え、腕の力を失う・・・その黒い瞳からは命の輝きが失われて・・・鼓動が止まり・・・


・・・もぞ、もぞ、もぞ、もぞ、もぞ、もぞ、もぞ、もぞ、もぞ、もぞ・・・


その死を引き換えにするように、その遺骸の中から、新しい鼓動が、新しい幼い命たちが生まれて・・・母体から無償の愛と共に『継承』されたのであろう・・・


・・・・・・・・・・(・・ヒト、カミ、サマ)・・・・・・・・・・(・・ニン、ゲン、カミ)・・・・・・・・・・(・・ヒト、カミ、サマ)・・)


母を死に追いやった元凶である『ニンゲン』への賛美を繰り返す!、『ニンゲン』から植え付けられた呪詛を繰り返し、目の前にいる『我』を『親』と思い、近寄って来るのだ!、純真無垢な魂をいびつなカタチに創り代えられたみにくい肉の塊が!?


(『う・・うぁああぁっ!!!、ヒトめ!、ニンゲンめっ!、こんな事が!?、こんないましめを、こんなくさびを我に!?、同胞たちにほどこしたと言うのかぁっ!?』)


余りの仕打ち、業の深さに全身が震え立つ!、身体中の力を叫ぶ声に変換し、理性の無い一匹の獣として絶望し、全てのモノに届けと、声の限り吠える!!!


・・・だが、その叫びすらも・・・


『さあ!、我らを産み出した偉大なるニンゲン様に感謝し、ヒト様の為に尽くさねばなりません!、同胞たちよ!、我に続き、ヒトというカミ様への賛美を!』


・・・『我』が『意に反する』言葉に作り直されてしまう!!!


『我』の『ニンゲン』への『憎悪』が増す程に、『我』の『意志』と『言葉』は『ヒト』への『賛美』に代わっていく!、その『憎悪』は誰にも届かず、正気を失う事も、気が狂う事も、同胞を殺し救う事も、絶望に自死を望む事もできず!!!


後に『海の民』の主なコミュニケーション手段となる『情報伝達』・・・それに気付いた『ニンゲン』が、おのれの『万物の霊長』としての優位を、持続性を保つ為に手を加えたのだ!・・・いや、手を加えたなどの表現では生ぬるい・・・いびつ傲慢ごうまんじ曲げ、肉体のある限り、決して消えぬ焼き印を押し当てたのだ!


・・・激変する環境の中、精神のり所、心の休まる場所、大いなる存在が必要不可欠であったという事実はあるが・・・『ニンゲン』への『賛美』は、他にも奇跡的に生き残った新しい種、我ら『海の民』の同胞たちを巻き込み、いつしか『信仰』の形・・・『ヒトガミ様』という偽りの偶像崇拝を造り上げていった!


遺伝子改造により長命であった『我』は、死して魂のみになるまで、筆舌ひつぜつくしがたいほどの長き時を、誰にも伝えられぬ『憎悪』に、この身を焼いていたのだ!


・・・生前では、イクラ接触しようとも決して同胞には伝わらなかった・・・しかし、この『御子みこ』と名乗る『ニンゲン』には何故か、『届く、伝わる、わかってくれる』という感触があったのだ・・・そして、『熱望した』、その時が来たのだ!


ならば伝えてやろう!、教えてやろう!、『我』が『赤黒い憎悪』の炎を!!!


『ニンゲンなど滅びてしまえ!!!、ぶるぁぁぁぁぁ!!!・・・おぇーーー』


・・・ついでに、汚物は焼却消毒だ!、ヒャッハー!?



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



『何がヒトガミか!、業深き存在め!、我が怒りで焼き尽くしてくれるわ!!!』


ごおぉぉぉうっ!!!ごおぉぉぉうっ!!!ごおぉぉぉうっ!!!


『我』の腕から放たれた『赤黒い炎』が、まるで生き物のようにまわり、吐瀉物にまみれ、逃れぬよう動きを封じた『ニンゲン』に一切の容赦ようしゃなく襲いかかる!


『ああっ!?・・・あ・・・ああアアアっ!!!・・・』


『赤黒い炎』は『憎悪の炎』!、生前の肉体では『意思と言葉』を制御され、『事象に干渉』する事は出来なかったが、『今の我』は制限のない『完全体』!


空間に存在するManaマナと肉体内に存在するオドを介して『情報伝達』を行う様に『我が意志』を以って『事象に干渉』し、絶叫を上げる『ニンゲン』を炎に包む!


じゅごおぉぉぉうっ!!!


肉を焦がす異臭と共に炎が天高く噴き上がる!、全てを燃やし尽くすように!


・・・ズキッ!


『くっ?』、シュルン・・・ヴォゥ!、バタっ!


突然、炎を放つ手に剃刀かみそりでも走らせたような疼痛とうつうが走り、思わず拘束していた腕を離す・・・音を立て、紅蓮の炎に焼かれる『ニンゲン』が力なく床に倒れ込む。


痛みの元に視線を向けると、そこにあるのは元の肉体の持ち主が負った『赤黒い色』の傷跡・・・『我が怒りの色』に似た『火傷』の跡が痛みを訴えてきたのだ。


『知っているぞ・・・これはニンゲンを守ろうとして負った傷か・・・世代を重ねても、まだヒトに隷従れいじゅうせねばならぬとは・・・嫁入り前に可哀想な・・・』


憑依ひょういによって、この娘の記憶も少し共有した様で、ふと、その将来を案じてしまい・・・そんな考えなど不要な事に気付く・・・いや、『我が願い』を思い返す!


『傷など気にして、何とするものぞ?・・・終わらせねばならぬ!、全てのモノを焼き尽くし、灰は灰にせねばならぬ!、我も同胞はらからも全て無に帰さねばならぬ!』


『ニンゲン』が生み出した全ての存在を消し去る!、そう願って生きた事を!!!


・・・パチパチパチ・・・


視線を戻すと『御子みこ』という名の『ニンゲン』は、真っ黒に炭化し、炎をわずかに残すだけで、絶命している事は確かであった・・・埋め込まれた『記憶』から、あれは『ニンゲン』で言うところの『まだ幼い子供であった』と・・・


『・・・ふ、ふははははっ!、我の意思は神の意思である!、所詮、ニンゲンとは偽りの神なのだ!、何と他愛のない事か!?、鎧袖一触がいしゅういっしょくとはまさに、この事よ!』


久々の肉体の痛みや視覚、匂いを感じた影響か、要らぬ考えばかりが脳裏に浮かぶが・・・ヒトを、子どもを殺し、未来を奪った罪悪感など抱く必要は無いのだ!、『ニンゲン』は『悪』なのだ!、ならば『ヒトから生まれたモノ』も『悪』!!!


ごおぉぉぉうっ!!!


『我が拳は神の息吹いぶき!、我がおこないは、神の名の元に行う正義なのだ!』


いつの間にか弱くなっていた拳の火をたぎらせ、『黒く染まった海の民』に向かう!


『たとえ、それが母の愛を受け、その命を受け継ぐ娘であっても滅するのみ!』


振り上げる拳の先にいるのは、『見慣れぬ姿の海の民の娘』・・・また『ニンゲン』による苦難の連鎖が続いているのか・・・我が魂に取り込んだ母親の娘。


いや、あれはお互いへの同情であった・・・同胞から受け入れられなかった、その生い立ちの孤独・・・その共感が支えになったからこそ、我が魂の怒りを『単なる破壊衝動』ではなく、今までの『正当な怒り』に維持できたのだ。


でなければ、当の昔に我が魂は自らの怒りで滅び、何も残さなかっただろう・・・一時、神である我が魂を押しのけるほどの夫を想う力・・・娘への偉大な『愛の力』・・・次の世代への希望・・・だが、『ニンゲンは愚か』にも・・・



ぐるんぐるんぐるん!・・・ごおぉぉぉうっ!!!


右腕に複数の腕をからませ・・・ひとつの巨大な獄炎の拳と成す!


その邪魔も、もう無い!、元凶である『ニンゲン』が我ら『海の民』を救うなど、所詮、口先だけの事!、『ニンゲン』は奪うだけで、何も与えないのだ・・・あの『ニンゲン』と違い、最愛の娘を一瞬で苦しむ事なく楽にしてやろう!、これが『海の民の始祖しそ』たる『我』が与える『神の愛』、『祝福』なのだ!


ぶぉおぉぉぉうっ!!!


『あの世で親子共々、こうなった原因のニンゲンを憎み続けるのだ!!!』


『我』は、娘にその巨大な獄炎の拳を振り下ろす!!!

始祖しそ<もう止めるモノはいない!、ありのまま(イカり)の姿を見せるのよ~!

クー<いや、始祖しそ様、このパターンは・・・

@<怒りと力に引っ張られて、破滅思考になりつつあるのです~


拙い作品ですが読んで頂いて、ありがとうございます。皆様の応援が生きがいです!

ブックマークやコメント、誤字脱字、こうしたらいいよ、これはどうかな?、何でもお待ちしております。(ツッコミも宜しくお願いします!)

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