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バツイチ鬼道少女と心臓外科医  作者: かぐつち・マナぱ
バツイチ鬼道少女と心臓外科医 第2章 『創世記戦争』
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第1話 『新しい海の民と竜王』㉑臆病な蛇と口寄せの巫女

@<赤黒い光の玉の正体は、一体、だれ海の民なんだ・・・(すっとぼけ)

なぎ<君子、危うきに近寄らずだと思うんだけど・・・

新しく展開された半円状の領域の中で、「赤黒い光の玉」が浮かんでいます・・・肉体という衣のない魂は、そのかかえている「感情と思い」を目に見える色としてまとっているのです。


私は、この「赤黒い光の玉」をりました・・・相手も「私」をりました・・・った上で、この相手は「私」だからこそ、「赤黒く燃える怒り」を向けてきたように感じました。


・・・「怒り」とは「敵意」です・・・それを向けられるということは、「危険と恐怖」にさらされることです・・・はらってしまえば、その「怖い」ことから解放されるでしょう・・・その「感情と思い」の痕跡こんせきすら、「なかった」ことにできるでしょう。


「赤黒く燃える怒り」・・・こうなるまでにどれだけ、その「感情と思い」をかかえてきたのでしょうか?・・・我慢や、無理をして抑え込んでいた心・・・その「いきどおり」が、いつしか魂さえも焦がしてしまい、「赤黒い色」をまとってしまったのではないでしょうか?


・・・無理は、いずれ何らかの形で現れるもの・・・


だけど、それが何も残さず消えて、終わってしまう・・・私がった相手は、「私」になら「届く、伝わる、わかってくれる」と思ったように感じられて・・・


『なぜ、怒っているのか・・・どんな無念をかかえているのか、聞いてみてはいけませんか?』


・・・私は、そうなぎうのです。



『何を言ってるんだ!、感じるだろう、この魂の焼け付くような怒りを!?・・・負の感情が、き出しなんだ!、それに関わり、えにしを結ぶことは、その霊障を受け、怒りに身を滅ぼされる可能性があるんだ!・・・触らぬ神にたたり無しだよ!』


・・・予想通り、私の身を案じるなぎは、異を唱えます。


それも当然でしょう・・・相手は、私たちの命をおびやかすほどの強い「敵意と力」を持っているのだから・・・だけど、どうしても私は、その「怒り」を知りたいと思ってしまったのです・・・おかしな話です、生来の蛇は、「臆病おくびょう」な生き物のはずなのに・・・


蛇は、外敵に遭遇そうぐうした場合、戦わずに逃げることを選択します・・・止むを得ない時や、逃げられない時、命の危険にさらされた時、初めて、その牙を向くのです。


臆病おくびょうな蛇」は、「危険と恐怖」におもむこうなどと思わないはずなのに・・・なぜ、私は、そう言ってしまったのか・・・今の私の心にある想いを考えながら、言葉にしていきます・・・


『私は、絶え間なく、想いが受け継がれていくこと・・・それが、とてもとうといものに感じられました・・・だからこそ、その想いが誰にも届かない、伝わらないのは、とても悲しく・・・さびしいことに思えるのです・・・』


・・・私たちを取り巻く、色とりどりの魂がつむぐ、海藻の大樹を見上げて・・・


『死してなお、伝えたい想い・・・それが、例え、身勝手な怒りであったとしても・・・なぎの言う通り、はらうことが、最善の解決策になってしまうかもしれませんが・・・この方の、心を知りたいのです』


・・・私はなぎの忠告に耳をかたむけず、願ってしまうのです・・・あぁ、これは「心」を知りたいという「私の願い」から来ているのでしたか・・・


心には、いろんな形があります・・・クーを始め、海の民の方々と触れ合ってみて、その心は、とても優しい形をしているように思えます・・・ですが、「怒り」も「心」の形の一部なのです・・・その一部を否定しては、大事な「心」を知るとは言えないでしょう。


『怒ることなくすこやかに過ごすことが、最良だと思います・・・しかし、怒り、いきどおる気持ちの全てが、悪とは思えません・・・私は思うのです・・・怒りは、自分が大切と思うものに危険がおよんだ時にき上がるもの・・・』


じっと「赤黒い光の玉」を見つめます・・・その黒く重なる色の奥に、かすかにらめく綺麗な色が見えるように感じます・・・


『そのき上がる気持ちを悪として全部なくしてしまったら・・・その反対に、自分の行為が他者の怒りを招き、敵意を向けられることがあることを忘れてしまったら・・・たぶん、自分にも他者にもにぶくなってしまって・・・何もかえりみない、自分勝手な生き方をしてしまうのではないかと・・・』


・・・私も怒ることがありました・・・私の好きな自然と仲間たちが、殺されていくことに怒りを感じました・・・ただし、怒りは、憎しみとは違います・・・良い事は良い、悪い事は悪いとはっきりしめす・・・そういった怒りは、必要なのではないでしょうか?


また、ふと昔に蛇の私が、毎年一人ずつ食べてしまった姫たちと、海に身を投げた者のことが思い浮かびました・・・続くはずだった繋がりを断ってしまった・・・その悲しみから、蛇の私は、悪として退治され、邪神として憎まれているのだと理解して・・・


『・・・そして、心を知るためなら相手が、その手に刃を構えていても、また、その手を握るのかい?・・・それは、人としてのあわれみか、天子としての慈悲じひか、それとも、蛇の自己満足の傲慢ごうまんさ、なのかな?』


私の言葉にあきれたような、なぎの問う声が伝わってきます。


・・・「また」というのは、あの時のナナシ様のことを含めてでしょうね?・・・それが、自分本位の甘い理想と幻想であることもわかっています・・・不条理な怒りをぶつけられるだけかも知れません・・・刃で切り付けられ、理解し合えないかもしれません・・・ですが、必ず伝わると信じて、その気持ちをちゃんと言葉にしなければ、その言葉と気持ちは決して伝わらないでしょう!


えて答えましょう・・・狭間に立つ私は、その全てであると!・・・ふふっ、また手伝ってくれますか、なぎ?』


だから、既に答えは決まっています!、狭間にある私は、その全てを否定することなく、受け入れ、認める存在なのですから!・・・なぎが、あきれた声を伝えるのは、いつも私の願いを聞いてくれる時とわかっているので、思わず笑い声が出てしまいます。


それに、人の怒りを受け止められない者が、どうして神の子の怒りを受け止められましょうかっ!?・・・でも、ナナシ様って、怒るどころか感情をまったく出されないので、取っ掛かりがないんですけどね?・・・うーん・・・もっと、ナナシ様のことが知りたいのですが・・・まずは、人の心からです!


『やはり、そう言うと思っていたよ、本当にきみは・・・はいはい、わかったよ、全ては御心みこころのままにっと・・・でも、今の状態のままでは、理性的な会話が成り立つとは思えない・・・となると・・・』


何か調べるかのように私の右手のなぎが、少しでも、その剣先を向けただけで赤黒い炎が燃え上がります・・・海の民の方みたいに触れ合って、という訳にはいかないようです・・・


『やはり、口寄くちよせをするしかないか・・・いや、しかし・・・だけど、そうなると負担が・・・』

『・・・いや、しかし、じゃが、そうナルト・・・』


うん?、なぎが、お姉さんに向いて・・・クーもまた絵をじっくり見て・・・刃じゃなかった、歯切れの悪い言葉で、ぶつぶつと何かつぶやいています?


・・・「口寄せ(くちよせ)」とは、霊を自分に降霊(憑依)させて、霊の代わりに、その意志などを語ること・・・らしいとなぎから伝わって来ます・・・あくまで、部分的な憑依ひょうい?、何か、もやもや考えているようで、はっきりしません。


『我々のご先祖様なのですよね?、詳しくはわかりませんが、その魂を私に降ろすのがよろしいのでは?・・・私、頑張らせていただきますよ?』


すると、ぱっ!と、お姉さんが挙手して提案されます・・・御霊みたま憑依ひょういする巫女の役をお願いしていたので、話の流れからそうなるのでは、と予想されていたようです・・・お姉さんのような察しの良い方は、私は好きです!


『大事なことは、巫女が抵抗なく受け入れること・・・それが結局、憑依ひょういの悪影響を抑え、魂を理知的に戻す方法であるから・・・しかし、こちらの都合で、お願いするのも・・・』


・・・あれ?、なぎ?、お姉さんがいいよって言っておられますよ?・・・もしもーし?、なぎさーん?、聞こえてますかぁ~?


『・・・だけど、どうやって説得するか・・・流石に、なかなか受け入れられる話では・・・・えーっ!?、い、いいのかい?、お姉さん、だ、大丈夫かい!?』


・・・なぎが、珍しく慌てた声を出してます!・・・言葉が聞こえないほど、お姉さんのことをすごく気にかけてくれてるのですね?、ありがとう、なぎ、ふふふっ♪


『もちろんですわ!・・・集落のもめ事、まーるく治めると言われた、お姉さんの名にかけて!・・・どんな荒ぶる感情もズバット解決させていただきますわ!』


お姉さんは、きりっとした表情で腕を力強く構え、そう宣言されます!・・・そういえば、神殿に向かう道もよく知っておられたし、集落に住んでいる皆が好き、とも言っておられましたね?・・・おそらく、皆の為に日頃から、いろいろとお世話されてきたのでしょうね?、どんな難事件も解決できそうです!、日本ひのもといちと呼びたいです!


『ぼ、僕は、あくまで目的の御霊みたまを降ろすのに支障がないように考えていただけだよ!・・・べ、別に、お姉さんのことなんて気にしていないんだからねっ!?』


・・・またまた~、素直じゃな・・・あっ、あんまり言うと、また本当の意味で手を焼かれるから、やめておきます・・・


『うふふ、なぎ様、お心遣いありがとうございます・・・お義母様の魂を受け入れる前の花嫁修業と思えば、何とも怖くありませんわ』


・・・でも、察しの良いお姉さんには、お見通しみたいですよ?


『ごほんっ!・・・じゃあ、お姉さん、鏡を見つめて・・・「かがみ」とは「」を無くせば、「かみ」に通じるもの・・・心を静かに・・・・神域で弱体化してるとはいえ、油断できない力のある魂だ・・・心の扉を開いて受け入れながらも、それが抱く感情に流されないで!』


『はい、かしこまりました・・・ご先祖様がいて下さったから、今の私達があるんです・・・ご先祖様を大事にできなければ、それは私達の子にも、そう伝わってしまいますからね・・・』


なぎの指示に従って、お姉さんが鏡をのぞきながら、自らに言い聞かせるように言葉を発せられます・・・やはり、不安や迷いはありますよね・・・ですが、それを乗り越えようとする、お姉さんの心の強さを私は信じて・・・うん?、「私達の子」?、もう、そんな先のことまで!?・・・いけません、平常心、平常心・・・


『天清浄、地清浄、内外清浄、六根清浄・・・荒魂あらみたまよ、その情動じょうどうしずめ、巫女に降霊せよ・・・その魂に刻まれし想いを口寄くちよせし、汝が言葉を死者たる仏口ホトケクチにて伝えたまえ・・・』


なぎの声を受け、「赤黒い光の玉」が、ゆらゆらとらめき、その輪郭りんかくを薄くすると、その光の玉が大きくなり、徐々に海の民の姿へと変化していき・・・しかし、ぼやけた赤黒い布を頭から被っているようで、顔などがはっきりしません。


また、それに合わせたかのように、お姉さんの体もゆらゆらとれて、その目の焦点が徐々に合わなくなっていきます・・・霊を受け入れる状態に近づいているのでしょう・・・


ごおぉうぅっ!!!・・・ぶおぉぉぉっ!!!


突然、布をまとった姿に変じた荒ぶる魂の周囲に、激しく渦巻く赤黒い炎の柱が生まれ・・・次の瞬間、その先端が伸びて、お姉さんに巻き付き、その体を赤黒い炎でおおい隠してしまいます!


『お姉さぁんっ!?』『これは、まずイカっ!?』


お姉さんが、丸焼きになってしまうと思った私とクーは、悲鳴に似た声を上げてしまいます!


『慌てないで!、本当の炎じゃないから燃えたりはしない!・・・でも、ここまでの事象を起こすとは、神宝かんだからの力に匹敵する荒魂あらみたまだ!・・・肉体にも霊障を与えるかもしれない・・・』


なぎが落ち着くように言うので、はらはらしながら仕方なく様子を見ていると・・・赤黒い炎と海の民の姿は、幻のように消え去り、そこに現れたのは「赤黒い怒り」を具現化したような衣装を身にまとう、お姉さんの姿があらわれます!


確かに火傷などは無いようですが・・・お姉さんは床にひざまずいた姿勢のまま、顔を伏せ、その表情などは見えません・・・


『ここまで顕世けんせに干渉するなんて!?・・・御子みこ!、祭司として相手の名を問い、答えさせて!・・・残念だけど、お姉さんの命には代えられない!、せめて、その名をもって・・・あっ!?』


相手の力が、想像以上であったこと、このままだと、お姉さんの身に危険が及ぶことを恐れて、なぎが慌てて私に伝えてきます!・・・相手の名をることは、いろいろな事柄において有利に働く、一種の呪法です!、それは、「幽世かくりよ」の存在であっても!・・・が、しかし、海の民の方は・・・


『海の民の方は、特別な方以外、名前を持たないと聞いたけど・・・お願いします!、答えて下さい!、祭司である、御子みこが問います!・・・「かれ」は!?』


それを忘れるほどなぎは、動揺どうようしていたのでしょう!・・・『かれ』とは、『夕暮れ方』・・・薄暗くなって、向こうにいる人が識別しにくくなった時、「だれだ、あれは」といぶかる意です・・・相手に名が無い場合、どう答えてくれるか、わかりませんが、私もお姉さんが心配です!、自分の我がままで、申し訳ない気持ちでいっぱいです!


ゆらり・・・


・・・私の問う声が聞こえた為か、お姉さんの姿勢が立ち上がります・・・背中についた糸で引っ張られたかのような不自然な動きで・・・そして、私の瞳に、その顔が映ります・・・その表情に、あの魂の怒りの色は見えず、むしろ、生きている者としての感情が、すべて抜け落ちたように見えて・・・


・・・その私の瞳に映る、お姉さんの瞳の色は・・・


『・・・やはり・・・お前なんじゃなイカ?・・・どうして、そんなに怒っておるんじゃ・・・』


・・・クーも同様に動揺どうようした声をにじみ出します・・・大事な絵を持つ手が震えています・・・おそらく、このやり取りの間、審神者さにわのクーには私やなぎよりも深い、多くのものが、この魂には見えていたのでしょう・・・大事な絵に描かれていた、クーが愛した大切な存在・・・その瞳の色を見間違えるはずがありません・・・



・・・お姉さんの瞳は、「海」のような「蒼い色」に塗り替えられていました。



その色が何を表すのか、改めて、クーに確認しようとした時・・・もうひとりの声がしました・・・



その声の主は、動けぬはずの腕を持ち上げ、その手を伸ばすのです・・・すがるように、必死に・・・声をしぼり出し、こう呼ぶのです・・・



・・・『・・・おかぁ・・・さん・・・』、と呼ぶのです・・・


クー<その時、不思議なことが起こった!?、憑依した魂の激しい怒りが!?

お母さん(?)<お嫁さんをスシの暗黒卿に堕としたんだから~♪

なぎ<おしゅうとめさんには逆らえないよね・・・お姉さんオルタ参戦かな?

お姉さん<私が、テクマクマヤコンなどと言ったせいですかね~?

ミコ<なんだか、いろいろ間違って混ざってないですか~!?(困惑)


拙い作品ですが読んで頂いて、ありがとうございます。皆様の応援が生きがいです!

ブックマークやコメント、誤字脱字、こうしたらいいよ、これはどうかな?、何でもお待ちしております。

(ツッコミも宜しくお願いします!)

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