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バツイチ鬼道少女と心臓外科医  作者: かぐつち・マナぱ
バツイチ鬼道少女と心臓外科医 第2章 『創世記戦争』
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第1話 『新しい海の民と竜王』⑤蛇と姉と娘と

ミコ<クーの屍を越えて行かなきゃー

クー<ミコ様を導きますぞ?

長男&お姉さん<その役は、こっちが・・・

「・・・ずみまじぇん・・・取り乱して・・・しまいました・・・ずずっ・・・ごめんなさい・・」、まだ、しゃくるように言って鼻をすすります。


長男さんの背中に私の涙と鼻水が、べっちょりと染みを作ってしまいました・・・すいません・・・


長男さんは、私を背負いながらも、道中の「小さな黒いモノ」や、黒く染め上げられた犠牲者たちを払いのけて、走っておられます。


・・・長男さんの方が辛いと分かっているのに私は、悲しみをなかなか止めることが出来ませんでした・・・


(いいえ、御子ミコ様は、本当に優しい方だ・・そこまで思ってもらえるのなら、親父も本望でしょう)、私を背負いながら走る長男さんは、むしろ私を気遣うような声を伝えて下さいます。


長男さんの背の温かさが、徐々に私の悲しさを溶かしてくれるようで・・・


(あぁ・・・また、泣きそうに・・・)、私の感情が不安定になっています・・・


(もう一息です・・・私もついていますから、頑張りましょう!)、お姉さんが並走しながら、私と長男さんに触れて、優しい気持ちで励ましてくれます・・・


(うぅ・・・お姉さんの優しい感触が伝わってくる・・・これも、また泣きそうに・・・だめ、だめです!)


・・・泣きそうになる自分を叱咤し、ごしごしと、自分の袖で顔を拭き、しっかり前を見据えます・・今は悲しいとか、汚いとか言ってられません!クーのためにも!


(妹さん・・・本当にありがとうございます!・・貴方のおかげで、こうして止まることなく、進んで行けますから!)、長男さんがお姉さんに心から感謝している感触が伝わります・・・


(えっ!?・・はい・・私なんかでよければ・・その、いつでも・・・)、お姉さんも心から嬉しそうな感触が伝わって・・・そうこうして何とか私たちは、神殿の門の前まで辿り着きました。



幸運なことに神殿の門は開かれたままで、周囲には「小さな黒いモノ」や、黒く染め上げられた犠牲者の姿もありませんでした。


ぴちゃん・・・ぴちゃん・・・ずりずり・・・


しかし、背後からは着実に私たちを追うモノたちが、集まっている音がします。


(自分が先に行きます・・合図したら、慎重に続いて来て下さい・・)、長男さんが、私を降ろして警戒しながら素早く先に門をくぐり、中に入っていきます。


・・・しばらく後に、無事を確認した長男さんが合図され、私とお姉さんは手をつなぎながら、門をくぐり、中に入っていきます。


見渡す限りでは、何もいないようで、物音ひとつしません・・・逆にそれが、恐ろしいですが・・・



(長男さん!?)、周囲を伺っていた私は、お姉さんの大きな声に驚き、振り返ります。


開かれていたはずの神殿の門が閉まりかけており、長男さんは、門の外に出ようとされていました。


(もう、また!?・・・男のひとって、どうしてそんなに格好つけたがるんですか!?)、長男さんの腕をお姉さんが、しっかり掴まえて・・・お姉さんは、体色を赤にして・・・怒ってらっしゃいます。


(妹さん、離して下さい!自分が外に出たら、門のかんぬきを閉めて下さい!)、そう言って長男さんは、私たちを守るために、門の外に出ようとされているようで・・・あっ、掴んでいるので、お姉さん経由で言葉わかります・・・


(待ってください!クーに続いて、長男さんまで行かないで下さい!)っと、私も必死に長男さんの手を引っ張ります。


(屋外と違い、ここは逃げ場がない!あいつらが入ってくるとまずい、自分が少しでも時間を稼ぎますから!)・・・ですが、流石は男のひとです、ふたりがかりでも止められません・・・ずりずり、引っ張られてしまいます。


(私との約束は、どうするんですか!?)、お姉さんが、負けずに何とか止めようと、そう伝えます。


(約束って何でした?・・・そういえば、親友さんも約束がどうとか・・・)、私が、またぼーっとしている時のことでしょうかね?・・・首をかしげ、考えてみます・・・


(生きて帰ったら、約束を果たします!・・・それが、男ってモンです・・・本当に家族が原因なら、家族が責任を取るべきでしょうが・・・御子ミコ様、妹さん・・・うちの妹をどうか、宜しくお願いします!)、しかし、長男さんの意志は固く、行動を止めさせることはできなさそうでした・・・


(家族、家族って・・・私にとって娘ちゃんは、本当の妹のように思っているんですよ!?)、お姉さんは、思いを込めるように強く強く引っ張ります。


ぱさり・・・


(・・・うん?・・・後ろで何か音が・・・?)、言い合う私たちの後ろで、何か物音がしたように聞こえて、私が後ろを振り返ろうとした時・・・


(・・・もし、これが終わったら・・・不謹慎だと十分承知をしていますが・・・私を新しい家族に加えてくださる前提で、お付き合いして下さいませんか!?)、お姉さんが、強い決意を込めて、大きな声を伝えられました。



・・・流石に、その内容は看過できるものではありません!全身を桜色に染めた、お姉さんを直視します!


(えぇ!?新しい家族って・・これって・・求婚!?うぁあっ!?・・それも女の方から!?)


突然のお姉さんからの告白で、不謹慎かつ場違いは承知の上ですが、私の胸が普通とは違う、どきどきと変な鼓動を立てます!


その声を受けて、長男さんは、息をするのも忘れたかのように動きが止まり、その目は驚きで大きく見開かれています。


・・・人間の私が過ごした時、求婚は男性からするもの・・・女性はそれを待っているもの、と決まっていましたから・・・そのことわりを覆すことが、今、まさに、私の目の前で、繰り広げられているのです!


(女性が求婚を口にするなんて!?・・・)、私は驚きのあまり、両手を口に当てたまま、お姉さんと長男さんを、あわあわっと見比べてしまいます・・

だから、後ろから何かが、つんつんしても気付きませんでした!


戸惑う長男さんの視線が、うろうろと落ち着かない様子であちこちを彷徨い・・・そして、意を決したかのように息を整え、こう告げます・・・


(・・・あの時、迷う自分がいました・・・しかし、貴方の声が自分を支えてくれました・・・自分の気持ちを察してくれた貴方の声が・・・こうして着けたのは貴方のおかげです・・・)、そして、真っすぐにお姉さんを見つめます!


息を飲んで、お姉さんも真っすぐに長男さんを見つめ返します!


・・・つんつん・・・


(今、いいところなのですから!お構いなく!)、その時、確かに後ろで、つんつんするのを感じましたが、私の目線は、ふたりに釘付けで、それどころではありません!


(・・・貴方ほど行動力があり、勇敢で優しい女性を自分は他に知りません・・・自分で良ければ、どうかお願いします!)、長男さんも全身をピンク色に染め、頭を下げ、手を差し出されて、しっかりと伝えられました!


(と、いうことは!?)、私は喜ばしい気持ちで、お姉さんの方を伺います・・あれ、何か周りが暗いような・・・寒気がしますよ・・・何か・・・入ってきた・・・?


(いいんですか?私なんかで・・・それに・・・これは、ヒトガミ様の御前で誓う約束になりますからね?)、お姉さんが小首をかしげ、妙に色っぽい仕草で嬉しそうに、その手を握られます・・・神様の前に誓う風習・・・知らないけどシッテイル・・・カナシイ・・・?


(あぁ、そうか・・確かにヒトガミ様の御前だ・・御子ミコ様、我々は、神様の前で交わした約束は、決して破ってはいけないという習わしが・・って、御子ミコ様!?)、長男さんが、その事を私に説明しようとされて、私の方を見て、びっくりサレマス・・・ハテ・・・サビシイ・・・?


御子ミコ様!?)、お姉さんもワタシのほうをミテ、オドロイテ・・・クライ・・・?


(こいつめ!いつの間に!・・・御子ミコ様を離せ!)・・・イタイ!いたい!、長男さん、私の頭、引っ張らないで下さい!?


・・・すぽんっ!


私の頭から何かが取れたような変な音がして・・感じていた寒気も治まり・・


(うわぁ!?・・くらくらします・・何か、いろんな事が一気に来ました・・というか、それは!?)、正気に返った私の視界に、長男さんが「黒い小さいモノ」を掴まえているのが入ってきます。


いつの間にか、背後から忍び寄っていた「黒い小さいモノ」が、私の頭に取り付いていたのです!


・・・ふたりのやり取りに夢中で、まったく気が付きませんでした・・・


・・・えっ、後ろをつんつんしてた?・・・何という巧妙な罠ですか・・・


・・・不謹慎ですが、和やかな雰囲気が、ぶち壊しです・・・ごめんなさい・・・


(くっ!コイツ、大人しくしろ!・・・こいつが、御子ミコ様に取り付いていたんです!・・・仕方ない、オレがコイツと一緒に門の外に出ますから、門のかんぬきを閉めて下さい!)、腕の中で暴れ回るモノを持って、長男さんは、門の外に出ようとされます。


状況が状況です・・・やむなく、お姉さんは、(長男さん、信じてますから!・・・絶対の約束ですからね!?)と言って、長男さんが出た後、素早く門のかんぬきを閉じました。


(ええ!・・・必ず、貴方の元に戻りますから!信じて待っていて下さい!)、長男さんが、おそらく「黒い小さいモノ」と格闘しながら伝えてこられます?


(あれ?・・・何か、言葉が分かるような気がします・・・?)、先ほどの影響のせいか、海の民の言葉が、頭の中で自分の言葉に変わり、理解できるような感触がありますよ!?


御子ミコ様、大丈夫ですか!?)、お姉さんが心配してくれます。


とりあえず、まだ少しくらくらする頭を振って、大丈夫です、と言い、続けて・・・



『犠牲者の皆さん、全員、生きていらっしゃいます!・・魂が、閉じ込められているんです!』と伝えました。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



(・・・カナシイ・・・サビシイ・・・クライ・・・)、「黒い小さいモノ」が、私に取り憑いたとき、そう伝えてきました。


「黒い小さいモノ」に取り憑かれた犠牲者は、体の自由が奪われるだけでなく、意識・・・魂の自由が奪れ、その(カナシイ・・・サビシイ・・・クライ・・・)という感情を埋めるために、新たな犠牲者を求めるよう行動させられていたのだ、と感じました。


取り憑かれた私は、一時的にその影響を受け、「黒い小さいモノ」と、その犠牲者たちが、全て意識下でつながっており、魂が閉じ込められていることを感じました・・・現時点では、命に別状はないみたいだということも・・・


ただし、気付かずに、そのまま取り憑かれていたら、私もその魂の檻に捕まっていたかも知れませんが・・・


また、犠牲者となった海の民のみなさんの意識、魂と触れ合ったことで、魂を分けたクーみたいに色々なことを共有し、海の民の言葉が、理解できるようになったみたいです。


そして、その「思い」・・・「黒い小さいモノ」を生み出してしまったのが、「クーの娘さん」であることが、わかりました・・・逆にその「思い」を何とかしたら、皆さん解放されるだろうという感触を受けました。


私の声を受けた長男さんは、(わかりました!外のヤツらは、長男の自分に任せて、どうか妹を宜しくお願いします!)、と言って下さいました。



・・・そして、お姉さんと私は、娘さんを説得すべく、ゆっくり慎重に奥の部屋を目指して行きます・・・


(・・・これで、クーも助けられる・・・)


今は、奥の部屋を私の部屋として使っていますが、人目に付かないため、ナナシ様が神宝かんだからを置くための部屋としても使われていました。


・・・以前、その部屋は、クーの娘さんのお部屋でした・・・そこには、クーが描いた絵も、娘さんの描きかけの絵もありました・・・娘さんにとって大事な場所だったのです・・・


私がいない間に、娘さんが絵を取りに行かれ、そこに運悪くか、死返玉まかるかへしのたまが戻されており、今回の現象を巻き起こしたのだと思いますが・・・


死返玉まかるかへしのたまは、制御が難しく、クーを真っ黒にしたこともあります・・・感受性の強いクーの娘さんの思いを受け取ってしまったのでしょうか・・・



(でも・・・元はと言えば、やはり、私が原因ですよね・・・)、今までのことを振り返り、もっと娘さんに何かできたのではないか、と自責の念にかられ、足取りがどうしても重くなってしまいます・・・


そんな私をお姉さんが、優しく手をつないで支えてくれます。


(いえ、御子ミコ様は、しっかり考えておられますよ?・・・だから、こうして行くのでしょ?・・・むしろ、お姉さんである私の方が、もっと娘ちゃんを見てあげるべきでした・・・絵も持ち出してしまいましたし・・・お姉さん失格です・・・)、お姉さんは、自分こそが原因であると言って、私を庇ってくれます・・・


(でも、娘ちゃんは賢い、良い子です。ちゃんと話せば、分かってもらえますから・・・一緒にごめんなさい、して下さいますか?)、お姉さんは、私の目を見て、私の手をぎゅっと握って、一緒に頑張りましょうと伝えてくれます。


(はい!・・・でも・・・もしもの時は、作戦通りに・・・)、そうならないことを祈りながら・・・


(そうですね、御子みこ様・・・では、私から・・・)、あらかじめ、私とお姉さんが道中、相談してきた通り対応することを確認して、先にお姉さんが、続いて私が奥の部屋の様子を伺います。


奥の部屋は、窓が一つしかない薄暗い部屋です・・・予想通り、そこに娘さんがいました。


娘さんは、虚ろな表情で黒色の玉を持ちながら、空いている手を使って紙に何か描いていました・・・


・・・いえ、描いている訳ではありません・・・すでに描かれた絵を黒で上書きしている・・・


黒い玉から出る、黒い塗料を使い、絵を黒く塗りつぶしているのです・・・


そして、黒く塗りつぶした紙を窓から下に落とします・・・


ぱさりっと紙が地面に着くと、紙全体が黒い水に変化して、そこからあの「黒い小さいモノ」が這い出てきます・・・


(これが、私が気付かずに取り憑かれた原因・・・やっぱり、死返玉まかるかへしのたまが、今回の発生源なのですね・・・)、私がそう確認すると・・・


御子ミコ様・・・あれを・・・)、お姉さんが机の上に丸い鏡、そして、寝台には楕円の鏡が置かれていることを教えてくれます。


・・・絵を塗りつぶした娘さんは、机の上の丸い鏡を覗いています。


(他の神宝かんだからは見当たらないけど・・・やはり、ナナシ様が置いていかれたのかな・・・沖津鏡おきつかがみで何を・・・)、気になって、娘さんが覗いている鏡を見てみます・・・


その鏡には、黒く染め上げられた犠牲者の姿が映し出されていました。


(これで・・・みんな、いっしょだからね・・・さみしくないよね・・・)、娘さんは、そう呟いていました。


(・・・このままにしておく訳には・・・お姉さん、行きましょう)、私とお姉さんは、意を決して、一緒に部屋に入って行きます。


娘さんは、私とお姉さんが部屋に入ってきたことに気付いていないようでした。


(・・・もっと、いっぱい描かなきゃ・・・)、などと感情が無いかのように、ぶつぶつ呟いて、その塗りつぶす作業に没頭しています。


その様子は異様な雰囲気でしたが・・・お姉さんは構わず娘さんに近づいていきます。


そして、しゃがみこんで、(娘ちゃん、私、ここからこの絵を持ってきちゃったの・・・何も言わずに、ごめんね)、とその肩をぽんぽんっと優しく叩いて、お姉さんが持っていた描きかけの絵を娘さんに見せます。


最初は、きょとんっとしていた娘さんですが・・・


徐々に、その言葉と絵のことが分かってきたのか、(これ・・・これ、さがしてたの・・・よかった・・・あった・・・)、とその声には感情らしいものが戻ってきて、その絵を取って大事にそうに抱きしめます。


(大事なものなのに、勝手に持って行ってごめんね?・・クー様・・お父様と一緒にお外で絵を描いてほしいなぁって思ったから、持って行っちゃったの)、お姉さんが心底、反省しているという感触を伝えてきます。


(・・・でも・・・あたし、まだ・・・じょうずに、かけないから・・・)と娘さんは、小さな頭を横に振り、小声で呟きます・・・


(そう?・・・私は、娘ちゃんの絵が大好きだよ?・・・いい?、絵はね、その上手さだけじゃなく、描くひとの気持ちが大事なんだよ?・・・娘ちゃんの描く絵は、今でも十分に、みんなが大好きだよって伝えているよ?)、お姉さんが優しく娘ちゃんの頭を撫でて、そう伝えてくれます・・・


(えっ・・・ちゃんと・・・そう、つたわるかな・・・?)、娘ちゃんがお姉さんの顔を潤んだ目で、じっと見つめます・・・


(うん、きっと大丈夫だよ?・・・そのままでも、十分に上手に描けてると思うの・・・だから・・・もう、黒く塗りつぶさなくて、いいんだよ?・・・ありのままでいいんだよ?)、お姉さんが娘ちゃんをぎゅっと抱きしめてくれます。


(・・・あたし、さびしかった・・・なにもかも、なくなっちゃうみたいで・・・あたしは、いらないこ、なんだって、いわれているみたいでぇ・・・)、娘さんの目から大粒の涙が、こぼれ落ちていきます・・・


(・・・でも、このこは・・・あたしのこと・・・わかってくれるって・・・さびしくないように、してあげるってぇ・・・・)、娘さんが、まるで玉と会話してるかのように、手の中の玉を見つめて言います・・・


(そうだったのね・・・でも、その玉は、ヒトガミ様の・・・御子ミコ様のものだから、返してあげていいかな?)、お姉さんは優しく言い聞かせるように、娘さんを自然に私の方に向かせてくれます・・・



まるで・・・ではなく、おそらく本当に、玉の方から話しかけてきたのではないでしょうか・・・娘さんの願いを叶える方法・・・それが、かなり乱暴だったとは思いますが・・・


(でも、これで大人しくしてくれるかな・・・)、私は、少し安堵して、そう思えました。


(・・・うん、わかった・・・ごめんなさい・・・ヒトガミさま・・・でも・・・あたし、わるいことしたから・・・ころされちゃいますかぁ?)、娘さんが不安そうに涙声で伝えてきます。


『ううん、娘さん寂しかったんですよね?・・・むしろ、私の方こそ、怖がらせたり、お部屋を盗ってしまって、ごめんなさい・・・多分、大丈夫ですよ?皆さん元に戻れると思いますから・・・私がだめなら、ナナシ様にやってもらおう・・・うん、それがいい!』


・・・と『声』で伝えますが・・・やはり残念ながら、娘さんには上手く受け取ってもらえず、娘さんは、ぽかーんっとされています・・・


(くぅ・・言葉がわかるようになったから、伝わるかと思いましたが・・そう甘くはありませんでしたか・・)、悔しさに、ほぞを噛む私を見て、逆に怯えて前と同じように、お姉さんにしがみついて、ぶるぶる震えています


とほほほほ・・・何ですか、この既視感は・・・すっかり悄気返しょげかえってしまいます。


(大丈夫、御子ミコ様は、優しいから・・・さあ、玉を渡してあげて・・・)、と私の『声』を聞いてくれた、お姉さんが言葉を補ってくれました。


(・・・ありがとう、お姉さん・・・では、気を取り直して・・・)、とりあえず、何もしない意思表示に両手を少し広げて、娘さんの方にゆっくりと近づいて行きます。


(おねえちゃんがそういうなら・・これ・・おかえしし・・・)、私の方に黒い玉を差し出す、震える小さな手が・・途中で止まります・・そして・・



(やっぱり・・・みんなを、おねえちゃんをあやっているんでしょ!?この・・・化け物!)、みるみる表情が引きつった娘さんが、私に向かい、いきなり強い拒絶の言葉を吐かれました。


今までの少し和んでいた空気が、一気に変わります。


(えっ!?私!?)、突然の言葉に、私は動揺し、以前のことを思い出して、自分の姿を見回します・・・


しかし、前のような青緑色はどこにも付いておらず、人間の私の姿のままです・・・


(おかしなところは・・・化け物と呼ばれるようなところは・・・見当たらないのに・・・どうして?)、と思い、助けを求めるようにお姉さんを見ます・・・しかし・・・


(えぇ!?・・・お姉さんまで!?)、が、お姉さんも驚いたような表情をされ、固まっておられました・・・


娘さんとお姉さん・・・よくよく、その視線の先をたどると・・・私の姿ではなく・・・寝台に置かれた楕円の鏡に視線が注がれていました・・・


・・・鏡とは、自分の姿を映すもの・・・この世には、いかなる隠し事もできない鏡が、あるそうです・・・



そこには、娘さんとお姉さん、そして・・・



・・・そこには、今の「人間の私」ではなく・・・・「以前の私」の姿が映っていたのです・・・





・・鬼灯ほおずきのような真っ赤な目をした・・「蛇」の私の姿が・・・

ミコ<なんという巧妙な罠が!?

クー<いやいや・・・


拙い作品ですが読んで頂いて、ありがとうございます。皆様の応援が生きがいです!

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これは…………ナナシの仕掛けた罠!? ナナシ「冤罪だ!」
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