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バツイチ鬼道少女と心臓外科医  作者: かぐつち・マナぱ
バツイチ鬼道少女と心臓外科医 第2章 『創世記戦争』
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第1話 『新しい海の民と竜王』④這い寄る物

ミコ<握手会からの続きでーす。

クー<疲れて動けなイカ~

ミコ<仕方ない~もみもみしてあげますから~

『今日は、お疲れ様でしたー!みなさん、ありがとうございました!』


ぺこりっと頭を下げ、大きな『声』を出して、私は、協力してくれた皆さんに心からの感謝を伝えました。


クーの長男さんや、その親友さんを始め、協力してくれた熱心な信者さんたちも、その『声』に応えて、手を上げ、「みんめんま~、みんめんま~」と言い、それぞれの帰路に着いていきました。


神殿前の特設会場に残っているのは、私とお姉さん、クーの長男と親友さん、そして・・・


(もう疲れちゃって 全然動けなくてェ...)と、その場から動けなくなっているクーです。


クーは本当に休む暇なく、全部の手足を使い、私と皆さんが仲良くしている絵を描き上げてくれました。


相手の心を動かせる絵・・・言葉に頼らず相手に思いを伝える絵・・・そんな絵を描ける方を純粋に凄いと思いました。


「大丈夫、クー?、腕もみもみしたら治る?」、っとクーの腕をもみもみしてみます。


(・・・あっ、この弾力、ずっと、もみもみしてられそう・・・)


それに、ヒトガミ様に仕える大司祭であるクーが後押ししてくれたから、この成功を収められたのでしょう。



・・・ですが、大成功ではありません。


大成功は、私がクーの娘さんと手をつなぎ、仲良くなることです。


途中、クーの長男さんが(呼びに行きましょうか?)っと声をかけてくれましたが、やはり、ここは私の知る古事にならって、娘さん本人から出てきてもらいたいっと思い、丁重にお断りしました。


(・・・あれっ、開けるひとが必要になるんだっけ・・・?)、すいません、うろ覚えです・・・


・・・もみもみしていましたが、私では大きいクーの腕1本もみもみが限度なので、見かねてクーの長男さん、親友さん、お姉さんも一緒になって、クーの腕などをもみもみし始めました。


もみもみ・・・・もみもみ・・・(肩に効く~)とか、クーが言ってます・・・


(その場合の役は、やはり、お姉さんでしょう)、上手に案内役をこなして下さった、お姉さんを見つめます。


そのお姉さんが(妹ちゃんを食べないで下さい!)と部屋に飛び込んできた時、何事かと思いましたが、それだけ、娘さんを大事に思ってらっしゃるみたいで・・・って、何か持ってらっしゃいます?


近くで一緒に、もみもみしている、お姉さんは、紙を持っていました。


・・・見覚えのある、その紙は、娘さんの書きかけの絵ですね?


『はい、もし、娘ちゃんが来たら、お父様と一緒に描きませんか?って言おうかと思って・・・』、お姉さんから娘さんを大事に思っている感触が伝わります。


『絵は、その上手さだけじゃなく、描くひとの気持ちが大事だよって伝えたくて・・・』、お姉さんの目は、とても優しい表情をしています。


その『声』は、クーの腕をもみもみしてる皆に伝わります。


『なっ、なんて、いい娘さんじゃなイカ~!?』、いきなり、クーが感激のあまり、大きな目から滝の様な涙を流します。


『おい、長男、結婚するなら、こういう娘さんにしなさい!娘さん、うちの長男、イカがですか!?』、泣いていたと思ったら、今度は、長男さんを引っ張って、強引にお姉さんの方に近づけます。


『!?おい、親父、腕、疲れてないじゃなイカ!?・・・まあ、魅力的な娘さんとは、思いますが・・・』、長男さん、ちょっと体色を桃色にして、ちらりと娘さんを見てます。


『えっ!?、そんな、私なんか、長男さんには・・・』、あれ、お姉さんもちょっと体色を桃色にして、もじもじし始めましたよ?これは・・・?


・・・そう言えば、普段より可愛らしい服装をされているような・・・


『待て!話は聞かせてもらった!』、そのお姉さんの前に、親友さんが立ちふさがります。


あっ、そういえば、お姉さんは親友さんの妹さんでしたね・・・親友さんは、ちがう体色で赤色です・・・


(ほほう・・ここは、若い者任せて、年寄りは退散いたしますかのう・・・)、話を振ったクーが、責任逃れで、のたのた逃げようとしますが、あれやこれやで捕まったりと・・・その場は、仲の良い喧噪に包まれていました。


(仲が本当に良いんですね・・・ほっこりするような・・・)、昔の豊かな自然に囲まれていた時の事が、思い出されます・・・



「・・・うん?」・・・その時、何か視線を感じました・・・どこからか、見られているという感触・・・


周りを見回すと、神殿の茂みから小さな影が、クーの家の方に行くのが見えました。


大司祭であるクーの家は、神殿に併設されているので、すぐ近くです。


クーが大きいので家の中も広く、私は奥の部屋で引きこもりしてたので、まだ間取りは良くわかりませんが、


(あれは、娘さん?・・・出てきてくれたのかな?・・・いい機会かも)、と思い、お姉さんを呼ぼうと、そちらを見ますが・・・


(ちょっとお兄ちゃん、そこどいて・・・うんぬんかんぬん?・・・)、何か取り込み中なので、声が掛けずらい状況に発展してます?


・・・仕方ないので、しばらく仲が良いのを観察していました・・・今まで、奥の部屋で、ひきこもりしてたので、こういうやり取りに飢えていたのかも知れません


というか・・・その少し、私の中の六歳の子供の部分が、親しい者とのやり取りに飢えていたのかも知れません・・・


クーの腕の調子次第ですが、まだまだ交流できていない海の民さんたちがいますし、娘さんは敏感な方なので、「ゆっくり時間をかけて大事に」って作戦で良いかと考えていました・・・



この時、私だけでも娘さんに会いに行っていれば・・・あんな事には、ならなかったかもしれません


娘さんが、あんなにも思い悩んでいらっしゃることに気付きませんでした・・・


・・・そう後で、悔やむことになるとは・・・その時の私は、知る由もなかったのです・・・



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「ふぇ~!?」

(お兄ちゃん~!?)、クーの下の息子さんふたりが、こちらに走って来られました。


その体色は、青く恐怖に顔を歪ませています。


(どうした?何があった?)、クーの長男さんが、ふたりを抱き止め、尋ねます。


どっぱぁんっ!!


と、同時に神殿から「黒い水」が、窓という窓から吹き出し、地面に流れていきます。


のそり、と、その「黒い水」が「小さい黒いモノ」に姿を変えます・・・それも次々に・・・


『なんじゃあこりゃああ!』、クーが仰天して、大きな『声』を上げ、その『声』を聞いた他の海の民たちもその異常な光景を目のあたりにして、驚き狼狽うろたえ、周囲は騒然となっていきます。


その「小さい黒いモノ」たちは、粘液のような柔軟さを発揮しながら、どんどん人の多い所に近寄ってくるため、私たちを含め、皆、神殿から離れるしかありません・・・


(一体、何が!?・・・でも・・・どこかで見覚えが・・・?)、私も驚き、初めて見るはずですが、なぜか、それに既視感を感じていました。



・・・以下、逃げながらも、クーからの通訳などを交えて・・・



(イカん!皆、逃げろ!・・・信者たちは、手伝ってくれ!)、クーの長男さんが先陣を切って、応援に駆けつけてくれた信者の方たちと一緒に周辺の避難誘導を行ってくれます。


しかし、「小さい黒いモノ」の1匹が、その体を大きく広げ、逃げ遅れたひとに覆いかぶさるように襲い掛かります。


(やらせるかっ!)、騒然とした中でも親友さんが得意の弓で、その頭部と思われる部分に矢を射立てます。


更に連続で正確無比に、同じように窮地に立たされた方を助けるために矢を突き立てていきます。


・・・どこぞの扇を落とされた弓の名手に並ぶ腕前でしょうか・・・敵側なのでちょっと嫌いです・・・


(やったか!・・・なに!?)


・・・一瞬、その「小さい黒いモノ」は動きを止めましたが、「マァーーー!」という声を上げ、矢はするりと抜け落ち、その傷から「黒い水」が噴き出しました。


そして、噴き出した「黒い水」から新たな「小さい黒いモノ」が生み出され、先ほどの傷は直ぐに塞がってしまいます・・・


増殖したソレは、退路を塞がれたひとに、その体を大きく広げ、すっぽりと覆い被さり、その全身を黒く染め上げます。


そのひとは、激しくもがき苦しまれ、急に静かになったかと思うと、ゆらりと起き上がり、他の人に向かっていき、瞬く間に同じような全身を黒に染め上げた犠牲者が増えていきます。


その中には、先ほどまで仲良くしてくれた方々もいます・・・ヒトガミ様、ミコ様と慕ってくれた方々がいます・・・


(何とかしないと!?・・・子供の私が殴りかかってもだめですよね・・・とりあえず・・・)、途中にあった石でも投げてみます・・・えいっ!


(・・ぐぁっ!?・・御子ミコ様、何を・・?)、なぜか石は、複雑な軌道を描いて、クーに当たってしまいました・・ごめんなさい・・もう投げません・・・気ばかりが焦るだけで、解決策が思い浮かびません・・・


(こっちだ!ヒトガミ様を守れ!)、信者の方が、その身を呈して私たちの避難を助けてくれます・・・


(ヒトガミ様、どうか、お助け下さい!)、避難する中、そう私に助けを求める方もいらっしゃいましたが、心苦しいですが、今の六歳の人間の私には・・・神宝かんだからなぎも手元に無い私には、避難する様、伝えることしか手がありません・・・


(すい)、何とか出来る?」、そう袖の中にいた翡翠色の友達に問いかけますが、ぷるん、と震えるだけで解決策には程遠いようで・・・


(・・・ここで、影の蛇を出したら・・・間違いなく・・・)


唯一、残された方法は、「蛇」で何とかすることですが、すでに多勢に無勢の状況・・・私の意思では抑えきれずに本能のまま、反撃が虐殺に・・・それでは、海の民の方々との約束、「決して傷付けない!」を破ることになってしまいます・・・


私の脳裏に、ばらばらにしてしまった指導者の姿と、『化け物』と声をあげたクーの娘さんの姿が甦り・・・そこで、私は声を上げます。


「あっ!そうだ!娘さんは!?・・・まだ、家の中に?・・・というか、娘さんが原因なのかも!?」


クーとその娘さんは、やはり家族だけあってよく似た姿をされています。


・・・以前、神宝かんだからのひとつである、死返玉まかるかへしのたまでクーを真っ黒にしてしまったことがありました。


先ほど「小さい黒いモノ」を見た時に感じたのは、黒塗りになったクーを娘さんぐらいに小さくしたら、ちょうど「小さい黒いモノ」に似ているのでは、という既視感だったと思い当たりました。


不思議な力のある神宝かんだからです、クーは玉に触っても、真っ黒になっても大丈夫でしたが、娘さんはどうでしょうか?


(でも、なぜ、死返玉まかるかへしのたまが?・・・いつの間にか、ナナシ様が戻られた?)、私の中で新たな疑問が沸き上がりますが、とりあえず、今は・・・・



死返玉まかるかへしのたまが原因で、娘さんに何かあったのかも知れません!娘さんは、多分、家の中だと思いますが、何とか戻って、家の中に入れませんか!?』


娘さんの安否が気になり、何とかしたいと皆に声をかけますが、逃げてきた道は、多くの「小さい黒いモノ」と黒く染まった犠牲者たちが塞いでしまって、そのままでは戻ることができない様子でした。



すると、(妹よ!友よ!ここは、オレに任せてくれ!)、親友さんが、私たちを庇うように「小さい黒いモノ」と黒く染まった犠牲者を引き付けて、逆方向に駆けて行きます。


(お兄ちゃん!?)、お姉さんは、驚きの声を上げます。


(どうするつもりだ!?弓は効かないぞ!)、長男さんが心配し、その背中に声をかけますが、親友さんは(倒せなくても弓には、こういう使い方がある!)、そう言って建物の壁に複数の矢を放ちます。


そして、その矢を使って身軽に建物の上へ駆け上がり、また矢を放ちつつ「小さい黒いモノ」と黒く染まった犠牲者を引き付けていきます。


(オレなら大丈夫だ!伊達に蟲の民を誘導できた訳じゃない!・・・お前には約束があるんだろう?・・・妹を頼む!)、そう言って姿が見えなくなっていきます・・・


親友さんのおかげで、最初より「小さい黒いモノ」と黒く染まった犠牲者の数は少なくなりましたが、まだ来た道を引き返せるほどではありません。


(くっ!友よ、死ぬなよ!・・・妹が心配ですが、今は一旦、やつらを誘導して神殿から引き離しましょう!・・・御子ミコ様、妹さん、ついでに親父、行くぞ!)、長男さんが、私たちの先頭に立って、その場から離れて行きます。


(仕方がありません!御子ミコ様、私たちも逃げますよ!・・・娘ちゃんと兄ならきっと大丈夫ですから!)、どうしたらいいか、思案して動かない私をお姉さんが引っ張ってくれます。


・・・その声には、いろんな感触が込められていました・・・


(・・・まずは、解決してから・・・クー、行きますよ!)、お姉さんの後をついていきます。


(・・・クーは、ついで、ですか・・・)、クーが筋肉痛(?)のため、のそのそとついていきます。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



(・・・あれ?弟さんたちは?)、一緒にいたはずの弟さんたちの姿が見えず、問いかけると、すぐに長男さんから(信頼できる信者に任せて、先に避難場所の聖地に向かわせました)と返事がありました。


(・・・おそらく、私がいろいろ思案してる間に避難されたのですね・・・すいません、長く生きてても咄嗟の行動ができなくて申し訳ない・・・何かお役に立てることはないものか・・・)


・・・逃げている間に周りの状況と襲い来るモノがどうなのか、わかってきます。


むを得ず、武器で「小さい黒いモノ」や、犠牲者を攻撃する方もいましたが、先ほどの矢と同じく、一瞬たじろぐだけで、むしろ、傷から新たな「小さい黒いモノ」を生み出す結果になってしまう悪循環を招いてしまいます。


黒く染まった犠牲者は、知性が無くなるようで高い場所には登ってきませんが、高い場所も安全ではありません、その原因である「小さい黒いモノ」は、高い所でも隙間でも形を変えて、難なく近寄ってくるのです。


集落の中で一番高い建物は神殿ですが、そこが「小さい黒いモノ」の発生源であり、他の場所からは出てきていないようで、時間が経過した今、神殿からの発生は少し収まっているようでした。



(・・・ここは、右に・・・次は、左に行きます!)、先導はお姉さんで、私は長男さんに背負われて移動していました。


子供の私は、走るのが遅いからです・・うぅ、ますます肩身が狭い・・


お姉さんは、集落の構造を熟知しているようで、どんどん「小さい黒いモノ」たちを神殿から引き離すように上手に誘導しつつ、元の道に戻る経路を進んで行きます。


(・・・私、ここが・・・ここに住んでいる、みんなが好きですから)、お姉さんにも、いろんな葛藤があるでしょうが、それを感じさせないように先導を走って行きます。


・・・そして、もう少しで神殿が見えてくる路地に差し掛かった時でした。


(えっ!?・・・そんな、道が・・・)、お姉さんは歩みを止めてしまいます。


ここを通れば神殿に辿り着ける・・・その道は、騒動のためか、住民が侵入を阻止しようとしたのか、多くの障害物に塞がれていたのです・・・


ぴちゃり・・・ずりずりずり・・・


私たちの後ろから、「小さい黒いモノ」と犠牲者たちが近づいてくる音がします。


御子ミコ様、少し降りて下さい・・・ふんっ!)、私を背から降ろした長男さんが、持っていた剣を力いっぱい、横の建物に突き立て、先ほどの親友さんのように建物の上に登ります。


(ここから、屋根伝いに通りに出られそうです!さあ、順番に!)、長男さんが手を伸ばされ、私、お姉さんの順に屋根の上に登った後・・・


なぜか、クーは登ろうとしません・・・逆に剣を壁から抜いてしまいます。


(どうしたの、クー!?早く登って!?)


私がそう言った後、気付いてしまいました・・・クーがなぜ、登ってこなかったのか・・・


体の大きなクーは、その重みのために剣では支えきれない・・・また屋根もどうでしょうか?


(長男よ・・・御子ミコ様を・・・娘さんを・・・娘を頼む・・・)、クーは剣を長男さんに投げ返し、追っ手の方に振り返ります。


そのことをクーも考えたのでしょう・・ならば出来る限り、時間を稼ごうと・・


そして、クーは徐々に姿を現した追っ手を前に、これ以上、進ませないかのように大きく腕を広げます。


(クー!?やめて!、戻ってきて!)


・・・しかし、クーは私たちから離れていきます・・・


その姿は、私に、昔に見た人間の姿を思い出させました・・・


自分を犠牲にしてでも他者を助けるため、荒波に身を投じる人間の姿を・・


・・・その身を呈して私たちの避難を助けてくれた信者の方の姿を・・・


(!?そんな・・・クー!?だめだよぉ!?)、いつの間にか、私の声が、うわずった声になっていました。


いつの間にか、私の視界が、ぼやけていました。


いつの間にか、私の胸が、熱くなっていました。


(いっしょに逃げよう!?)、いつの間にか、私は手を伸ばしていました・・・


届くはずがないのに・・・それが無理なことだと分かっているのに・・・


どこか、他人事のように感じていた蛇の頃には無かった感情が、私の中で生まれてくるのを感じていました。


(私は、クーの命の恩人だよぉ!私の言うことが聞けないのぉ!?)


・・・状況が分かっているはずなのに、私の口からそんな支離滅裂な言葉が出てきてしまいます・・・



御子ミコ様、失礼します!)、そんな私を容赦なく長男さんが抱きかかえて、その場から離れようとしてしまいます。


(!?長男さん!?クーは、あなたのお父さんなん・・・)


御子ミコ様、長男さんの気持ちも察してあげて下さい!)


伝えかけた声を掻き消すように、あの優しいお姉さんからは考えられないほどの、厳しい叱咤の声が浴びせられます。


(あれが、オレの父親だからこそ・・・自分は長男をまっとうするだけです!・・・行きます!)


抱きかかえられた腕から様々な思いが伝わってきますが、長男さんは迷うことなく、振り返ることなく神殿への道を私を抱えて進み出します。


(・・・そんな・・・・クー!!!)


それが正しい判断だと分かっているのに・・私は振り返って見てしまいました・・


・・・クーが決めたことなのに・・・私が見てることで、クーが迷ってしまうかもしれないのに・・・


・・・私が見ていることで、長男さんも躊躇ちゅうちょしてしまうかもしれないのに・・・



クーが、疲労した体でありながらも懸命に時間を稼ぐように奮闘します。


傷付ければ増えてしまうので、わざと捕まえさせては引き剥がし、わざと捕まえさせては引き剥がしする姿を・・・


しかし、最後には「小さい黒いモノ」が、元の黒い水の状態で複数集まり、その黒い渦の中に引き込まれる姿を・・・


その間、クーは不安も恐怖も何も伝えてきません・・・いえ、むしろ誇らしいという感触を伝えてくるのでした。


(・・・クーは、御子ミコ様に会えて嬉しカッタ・・・ホントウノ・・・ムスメ・・・ノヨウニ・・・)


そして、完全に沈んでしまいました。


(クー!?クー!?返事して!!!)、いくら呼ぼうが叫ぼうが、もうクーからの声は聞こえません・・・



クーは、私に優しくしてくれました・・・命の恩人であること差し置いても、とても優しかったのです・・・


私が、人間の皮を被った蛇と分かっても、その温かさは、変わることがありませんでした・・・


・・・人間の私の父は、私が三歳の時、この世を去りました・・・


私は、優しいクーを父親のように感じていたことを、今さらながらに自覚しました・・・


私を抱きかかえる長男さんには、私の思いが伝わってしまう・・・


それを分かっていても、私の中で生まれた感情を止めることができませんでした・・・



「クーーーーー!!!」



私の中で生まれた感情から発せられた声を止めることができませんでした・・・

ミコ<クー!(もう、もみもみできないなんて!?)

(クー<そっちー!?そっちが、残念なのー!?)


拙い作品ですが読んで頂いて、ありがとうございます。皆様の応援が生きがいです!

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弓の名手に並ぶ腕前 > 那須与一? 与一が敵方って、平氏なの、ミコちん? ぐぁっ!?・・御子ミコ様、何を > ギャグかっ!? ク――――――っ!!
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