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バツイチ鬼道少女と心臓外科医  作者: かぐつち・マナぱ
バツイチ鬼道少女と心臓外科医 第2章 『創世記戦争』
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第1話 『新しい海の民と竜王』②快晴の空に響く声★

ミコ<鬼道少女ミコ、いっきまーすっ!

ナナシ<見せてもらおうか、新しい海の民の性能とやらを!

クー<ふたりとも海苔海苔ですやん・・・

@<まだ新しい海の民、出ないよー

挿絵(By みてみん)


・・・「はぁぁ・・・」、寝台に腰かけて、思い出して、深いため息をつきます。



・・・そんなことがあったのです・・・怖がらせてしまいました・・・警戒感を抱かせてしまいました・・・


これでは、クーの娘さんの手を握り、私の思いを伝えることなど不可能でしょう。



・・・かといって、幼い娘さんには「声」はちゃんと受け取ってもらえない・・・ということは、おそらく深緑の玉、道返玉ちかへしのたまを使っても通じないでしょう・・・


・・・というか、今ある七つの「十種の神宝とくさのかんだから」は、品物之比礼くさぐさのもののひれに収納されて、ナナシ様が持っておられます。


・・・そんな便利な能力があるなら、風呂敷のように使う必要もなかったのでは?、と思い、口に出そうとしたら、先に「お前が神宝かんだからを取出し、使えないだろう」と、言われてしまいました。



・・・はい、聡明なナナシ様と違い、私の知恵は凡人でしかありませんよ・・・



・・・更に「なぎを貸してもらう、いいな?」、とナナシ様から頼まれたので、「なぎ」から嫌そうな感じを受けましたが、「ちょっとだけ、お願い・・・ナナシ様も終わったら、ちゃんと返して下さいね?」と約束して、「なぎ」も手元にいません・・・



(・・・どうしたら、いいのかな・・・・)、私はひとり考えます。


・・・かといって、「人間」の言葉は通じないし、私にはナナシ様みたいに海の民の発音をすることもできませんし、海の民の言葉は、クーの通訳なしでは通じません・・・


・・・あの後、クーが娘さんを必死に説得してくれたようですが・・・


((そんなこという、わからずやのおとうさんなんて、だいっきらいっ!))


とても大切な娘さんにそう言われ、クーは衝撃で、壁際の椅子に座り込み・・・


(モエタヨ・・・マッシロニ・・・モエツキタヨ・・・マッシロナハイニ・・・)


と、力なくうなだれ、体色を真っ白に変化させていました・・・


・・・海の民は、感情で体色が変わると、ナナシ様から聞きましたが、本当に灰のように全身、真っ白になっていました・・・


(・・・クーから説得してもらう案は、却下された、っと・・・)


一連を見ていたナナシ様ですが、この部屋を私にあてがうだけで、「やることが山ほどある」、と伝えたっきり、最近、お姿を拝見しません・・・


「私のことなんて、どうでも良い・・いえ、これは私を試されているのです!」、無理やり、前向きに気持ちをもっていきます。


ほとぼりが冷めるまで、大人しくしていろ、と口外に言われている気もしますが・・・



「・・・でないと、私も捨てられてしまうのでしょうか・・・?」、最後に残った友達に声をかけます。


ぷるんっ、と翡翠色のすいが、少し震えました。


ナナシ様から「もうこれは、私が使う必要がない」、そう言って私にすいを預けて行かれました。


その口調からは、何の感情も感じられず、無用だ、と切り捨てるようでした。


「・・・はぁ・・・」、何回目かのため息をつき、私は、すいを手に取り、ごろりと寝台に横になります。


・・・まったく良い案が浮かびません・・・すいも何も言いません・・・


・・・特殊な環境で育った「人間」の私は、このような場合、どのように接していいのか、わかりません・・・


・・・「蛇」の私なら、面倒だから「食べてもいい?」とか考えそうです・・・だめです・・・


・・・ナナシ様なら、ちゃっちゃと良い案を出してくださりそうですが・・・多分、却下ですね・・・


・・・「声」も通じない・・・言葉も通じない・・・むろん、手も握ってもらえない・・・惨状を目撃した方々の配慮もしなければいけない・・・ない、ない、ない、ない、ない・・・



「・・・一体、どうすれば、いいのでしょうーー!?」、すいを抱いて、寝台の上をごろごろ~、ごろごろ~っと転がります。


どすんっ!


「あっ・・・あったたっ」、勢いよく転がっていたせいで、床に落ちてしまいました・・・


・・・この小さな寝台は、私のために作られた物ではなく、まだ幼い、前の主の物でした。


神殿の奥の部屋・・・クーの娘さんのお部屋を私が占拠したようになっていたのです。


・・・多分、これも娘さんの機嫌を損なう一因になっているでしょう・・・


海の民は、その宗教的な面でも保守的な方が多く、自分のナワバリを重視されるそうで・・・


一応、反対しましたが、人目につかないようにと、ナナシ様から押し切られる形で・・・


自分の部屋を取られた嫌そうな娘さんの姿が・・・怯えた娘さんの姿が、思い出されます・・・



「・・・化け物・・・なんて言われ慣れているはずなのに・・・」、また一人呟きます・・・


(・・・魂が失われたことで、私の気持ちも弱くなっているのでしょうか・・・それとも・・・)


ばさばさっ!


「わっぷっ!?」、私が床に倒れた衝撃のせいか、横の机から不安定に置いてあった紙の束が、私の顔めがけ落ちきました。


・・・不運は重なるものでしょうか・・・紙の束を払い退け、何気なくその紙を見てみます・・・



「すごい・・・まるで生き写しですね・・・」、思わず声を出して感心します。


大部分の紙は、今にも動き出しそうなほど精密に書かれた絵でした。


・・・その中には、大分、昔に書かれたのでしょう、かなり紙が痛んでいる物もありました。


おそらくクーのつがいでしょう、その方が寝台に寝た状態で、生まれたての赤ちゃんを抱いて、その周りには息子さんが3人仲良く並んでいらっしゃいます。


赤ちゃんは、たぶん娘さんですね・・・娘さんが生まれた時に書いたのでしょう。


・・・クーの姿がないのは・・・もしかしたら、これを書いたのはクーなのかもしれません。



「それと・・・これは、娘さんが書いたのかな・・?」、手に取り、じっくり見てみます。


・・・最近書かれたのでしょう、紙が新しいです・・・先ほどの絵に比べると出来は雲泥の差ですが・・・仲良さそうな、クーの家族が描かれていました・・・


(・・・ただの紙に描いた線なのに・・・どうしてか・・・)


「でも、暖かそうな・・絵から・・なぜか、そう感じてしまいますね・・あれ?」


それらの中に書きかけの絵がありました・・・そう思うのは、どれも不自然に大きな隙間が絵にあったから・・・


さっきまでの絵にはあった、一緒に書くはずの大きなモノが、どれも書けていないと気付いたから・・・


(だから、この部屋を・・・クーを嫌いだと・・・書きかけのままにするのが嫌だったんですね・・・)


ぴきーーーんっ!


「・・・はっ!?・・・言葉がだめなら!?」、そこで私の頭にひとつの考えが閃きました!



・・・その時、外でどたばた、どたばた、という大きな音と共に・・・・


(待て、待て、ヒトガミ様は、そんな方ではない!、御子ミコ様は、そんなことは・・・)


クーが慌てているせいか、大きな「声」を響かせて、こちらに近づいているようです・・・


ばたばたばた!ばん!


突然、部屋のドアが開かれ、クーと・・・お姉さんが雪崩込んできました。


・・・その時、私は自分の閃きをどうやって実現するか、考えて思わず・・・



「これで、妹ちゃんをどうにかできるかも!」と、大きな声で告げてしまいました・・・


同時に、お姉さんは必至の形相で・・・


(妹ちゃんを食べないで下さい!)と、私に大きな声で告げたそうです・・・



・・・お互いの言葉を誤解なく通訳し、お姉さんを説得するクーの苦労は、相当のようでした・・・



       ・・・ごめんなさい、クー・・・



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



その日は、風も無く、雲一つない晴天の良い日でした・・・・



神殿前に立っている私の前には、多くの海の民が、行儀よく列を作って、きっちり順番を待っていて下さいます。


・・・民度が良い方ばかりで助かります・・・


騒動や混雑、妨害のないよう、クーの長男さんや、その親友さんを始め、熱心な信者さんたちが協力して上手に誘導してくれていました。


待っている間に、乾燥しないよう水などの用意もあります。


「にゃりぬるん~」

(次の方、どうぞー)

あのお姉さんが私の横にいて、順番の来た海の民をひとりずつ、私の前に案内してくれます。


私は、その海の民さんに「ヒトガミ様の、御子ミコです、どうぞ、宜しくお願いします!」、と元気に明るく挨拶します。


もちろん、私の言葉は通じていないので、その方は、ぽかんっとされていますが・・・


続けて、私は、「手を握ってもらっていいですか?」、と言い、その方に自分の手を差し出します。



「なにゅりん~、めんまんみ~」

(ミコ様は、手を通して、深い御心をお伝え下さります。さあ、恐れず、手を握って下さい)

お姉さんが、戸惑う、その方にそう伝えてくれます。


「クー、にゃりるん、めんみんま~」

(この大司祭、クーが許可する、さあ、ミコ様の御手に触れるが良い)

ちょっと離れた場所に腰かけ、立てかけた板に、その多数の手で目にも止まらぬ速さで筆を動かしながらも、クーが更に安心するように伝えてくれます。


「・・・めんみんま・・・」

恐る恐る、手を伸ばしてくれて、その方と私の手が触れ合い、私の思い、考えが伝わります。


(私、絶対に海の民の方を傷付けるようなことはしません。ただし、悪いことをしたら駄目ですよ?ミコとの約束ですよ?・・・だから、仲良くして下さいね?)


こう、私は伝えていきます。


(!?、めんみんまー!めんみんまー!)

ちゃんと私の思い、考えが伝わったのか、頭を上下して、その方は喜んで下さいました。


「みんめんまー!」

ちょうど作業が終わったクーが、立てかけた板から1枚の絵を外し、お姉さんに渡します。


「クー、めんみんまー」

(クー様から、この日の記念に贈り物を授ける、大事にしなさい、とのことです)

お姉さんが、その紙を、その方に渡します。


その紙には、生き写しの様な出来で、私とその方が仲良く手をつないでいる絵が描かれていました。


「!?、みんめんまー、みんめんまー!!!」、その方はとても喜び、次の方に交代されました。


「にゃりぬるん~」

(次の方、どうぞー)

お姉さんがまた、順番の来た海の民を一人ずつ、私の前に案内し、同じように繰り返していきます。


海の民の方は、皆、喜んで下さり、作戦は順調なようです。



・・・私の考えた作戦は、「言葉」や「声」もだめなら、『絵』で仲良いことを表現できないか、でした。


ありがたいことに、あの時、見た絵は、やはりクーが描いた物でした・・・クーすごいですね!


ちょっと、おっちょこちょい、なところもあるけど、大好きですよ!


では、描いた絵を妹ちゃんに見せたらいいだけでは?、と思いますが、既に、ものすごく警戒されてますから、それだけでは駄目でしょう・・・


ならば、他の皆さんと手をつないで、仲良くしているところを見てもらって、警戒心を無くしたら?、という計画を立てたのです!


これならば、あの惨状を目撃した方々や、まだ私のことを知らない方にも配慮できます!


・・・そして、クーや、お姉さんを始め、多くの方の協力のもと、色んな準備をして、今日、その日がやってきたのでした。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



ちょっと区切りを見て、「クー、大丈夫ですか?疲れませんか?」、そうクーに声かけますが、クーからは・・・


(このクー、例え、今日、全ての手が千切れようとも魂で描いてみせましょう!いや、手が千切れようとも足で、いや、口に筆を咥えて三刀流でも描いて見せましょうぞ!・・・おおっ!燃えよペンよ!吠えろペン!・・・どりゃりゃりゃりゃ~!)


と、凄まじい気迫と目にも止まらぬ速さで筆が動いていきます・・・これは、やめて、と言っても駄目そうな・・・


「よーし!、私も頑張ろうっ!」、クーの気迫を受けて、私もやる気、全開ですよー!


・・・る気じゃないですからね?・・・頑張る気持ちですからね・・・?


「みんめんまー!」

お姉さんもやる気満々のようです、手を上げて、待っている海の民にも訴えかけています。


終わった方を始め、待っている方々、信者の方々からも、その会場にいる皆が、一斉に・・・


「みんめんまー!」、の声が上がります。


・・・快晴の青い空に、皆の声が響きます・・・


ついつい、それに釣られて、私も「みんめんまー!」、と言っていました。


・・・その声が、ある、ひとりに聞こえるように・・・





・・・クーの娘さんに伝わるように・・・

お姉さん<ミコ様の握手会&チェキは、こちらになります~

クー<頑張ってチェキ代わりに絵を描きますぞー!(ぶちっ)ぎゃ~!?

ミコ<クー!?

@<時を戻そう!、ミコのイメージイラスト載せてみました!(24年4月28日修正)

拙い作品ですが読んで頂いて、ありがとうございます。皆様の応援が生きがいです!

ブックマークやコメント、誤字脱字、こうしたらいいよ、これはどうかな?、何でもお待ちしております。

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にゃりぬるん~、なにゅりん~、めんまんみ~、みんめんまー…………。 うん、ワタシには理解できそうにないな。この言語は。 クー、のりのりだなあ 返り咲いて、今が最高潮なのもあるのかな? まえがきだとミ…
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