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4月25日 11:40

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「――さて、漸くクラス全員のスキルが確認できましたわ」


 第一体育館のメインアリーナに、内空閑(うちくが)空満子(くみこ)の声が響く。時計の針は十一時四十分を指し示し、二時間に及ぶ壁や天井の損傷は全て時間と共に復元されていた。


「本当に便利ですわね、スキルというモノは。大幅に時間が短縮できましたわ。一応、感謝を申し上げますわ――ホグラさん」


「……父様の御命令ですから、アナタの礼は不要です」


 御十神(みとがみ)マナセの左腕に抱き着くホグラは、本当に興味が無い様子で薔薇色の長髪を軽く靡かせた。父と慕われる彼は苦笑し、それでも感謝の意として頭を撫でる。その時には、彼女の横一文字な口角も少し上を向いた。


「……ある意味、扱い易くて助かりますわ。――それではこれより、情報整理を行います。スキルに関して、積極的な意見を求めますわ」




 まず、根本的なスキルに関して。スキルは大きく二種類に分けられる、と考えられる。――即ち、型と必殺技。


 型の例として剣道が最も分かり易い。剣道で一本を取る為には、様々な判定基準を充分に満たさなければならない。


 有効打突は、

 一、充実した気勢で

 二、適正な姿勢を以て

 三、竹刀の打突部で打突部位を刃筋正しく打突し

 四、残心あるもの――と規定される。


 竹刀の打突部は、

 一、物打を中心とした刃部(弦の反対側)――と規定される。


 打突部位は、

 一、面部(正面及び左右面)

 二、小手部(右小手及び左小手)

 三、胴部(右胴及び左胴)

 四、突部(突き垂れ)――と規定される。


 端的に纏めれば『正しい姿勢』で『正しく武器を用いて』『正しい部位』を攻撃すれば一本が取れる、という事。型と呼ぶスキルも同様。予め判定基準が設定され、その基準を充分に満たした時点で――該当したスキルが発生する。

 問題点は、その基準が全く不明という点。実際、型の発見は偶然の力が大きい。要検証。


 次に、必殺技。必殺技は個人専用のスキルで、講堂事件で生徒が一度は使用したスキル。効果が様々で、その把握が難しい。

 例えば、内空閑空満子のスキルは――


《スカイ・2・離》


 効果は二者間の通信。携帯する必要の無い携帯電話。素直に読めば空を二分するスキルとも捉えられる――が、実際は全く違った。

 しかし中には、スキル名から効果の推察が可能なスキルも存在する。


《賛美火》


 火乃宮火乃花(ほのか)のスキル。その名の通り、賛美歌が由来と思われる。唯一神を讃える歌。その意味から、対象を限定したポジティブな効果――と予想できる。実際、御十神(みとがみ)マナセ一人に限定して身体強化など様々な恩恵を与えた。


 必殺技のスキルは型と違って発動が容易で、その効果もピンからキリまで様々。一人一個と考えた場合でも、千と二百以上のスキルが存在する計算――だが、スキルは個人で所有する数が違う。先の例で挙げた内空閑空満子のスキル数は四個。しかし火乃宮火乃花は、倍以上の九個。

 スキルの数を銃の種類と考えた場合、前者と後者では圧倒的な戦力差が生まれる。秩序とは、同じ土俵の上で成り立つ。腕力の同じ者が殴り合えば、その日の調子や運に勝敗は左右される。自分の状態が万全でも、相手の状態も万全なら五分の勝負。必ず勝てる、と確信できなければ人間は手を下ろす。結果、ペンと言葉で秩序を保つ必要性が生じる。

 銃を持った人間は、槍と棍棒で戦う人間と話し合う事は無い。十の時間を費やして天秤のバランスを量る労力より、一の労力で自分の利益に傾ける事が可能なら――人間は後者を選ぶ。

 しかしスキルの数は、比較可能なサンプルの数とも言える。その結果として、スキルの分類に成功した。


 一、強化(身体強化)

 二、移動(瞬間移動)

 三、変化変身

 四、精神感応

 五、通信探知

 六、自然操作

 七、物質創造(武装製造)

 八、特殊


 最終的なスキルの詳細は、次の通り。


 内空閑空満子

 スキル名《スカイ・2・離》

 分類:通信探知

 効果:二者間の通信。


 火乃宮火乃花

 スキル名《賛美火》

 分類:強化(身体強化)

 効果:個人に限定された身体強化。




「――皆さん、助かりましたわ」


 生徒会書記の火乃花が一通り情報を纏めた所で、空満子が手を叩く。


「私と火乃宮さんは、生徒会と合流して早速情報共有を行いますわ。皆さんは、炎谷山(ぬくたにやま)先生と一緒に教室へ戻って下さいな」


 マナセを始め、二年一組の生徒達は素直に頷き――担任のホムラと共に体育館を出た。


「ふぅ……。――阿津地(あづち)さんも、巧く説得できていれば宜しいのですが」




「――断る」


 第三校舎屋上、|阿津地ミチルと対面する少年は――ハッキリと告げた。


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