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ようかんの夜に  作者: おこめ
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ようかんの夜に

ようかんみたいな夜だった。

生ぬるくて、足にまとわりつくようなずしりと重い空気。

いつもと同じ職場からの帰り道のはずなのに、いつまでも家に着けそうにないくらいすごくて重かった。

しっかりと身の詰まったあの老舗のようかんみたいな夜だった。

だから喉が詰まったようにくるしくて、息がしにくくて、終いにははぁはぁと荒い息を吐きながらぼろぼろ泣いていた。

大の大人が。

ティッシュを持ってなかったら、マスクの下で鼻水もダラダラ垂らして。

くるしいくるしいくるしい。

ずしりと、ようかんにまとわりつかれた足はとうとうぴたりと歩みを止めた。

そこから、もう家には帰れなかった。

1Kの狭い一人暮らしの家。

そこそこ汚くて、そこそこ落ち着く家だったのに。(お隣さんはいないはずなのに、右隣の家が毎日深夜2時を過ぎるとごぞごぞとうるさかったけど。)

あそこに帰って寝たら、また会社に行かなきゃいけないと思ったらもう帰れなかった。

だって、しょうがない。

ようかんみたいな夜だったから。

こう言うとまるでようかんが悪いようだけど、ようかんは悪くない。

誰もが知っているようなあの老舗のようかんなんて、普段は率先してようかんを食べたいと思わない自分でも美味しいとわかるくらいだ。実家にいた頃にお中元やらお歳暮で貰ったからといって、おやつとして夏は牛乳と、冬はあったかいほうじ茶といっしょに食べた思い出は美味しい食べ物の記憶としてしっかり残っている。

スニッカーズみたいな小さいサイズよりも、やはりあのどしりと重いサイズの方が良い。

でも、ようかんみたいな夜じゃなくてところてんみたいな夜だったらたぶん家に帰って適当な夕飯を食べて、お風呂に入って、ささやかに明日が来ませんようにって願いながら寝てたと思う。

どっちが良かったのかはわからない。

毎朝毎朝いじらしくやってくる朝に、竹で押されるようにして出社する週5日。

毎朝絶望を繰り返すと、人はどうなるんだろう。

でも、死ぬ勇気はついてたかもしれない。

そっちの方が良かったのかもしれない。


自分で自分を終わらせる勇気も覚悟も、ようかんの夜には持てなかった。









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