老いた2人の話
「遠い遠い昔のこと…」
そんな感じの昔話です。
「覚えているか?今から60年前だ。お前は天下一の魔道士だった。
正直憧れたよ。だがそれと同時に、お前の隣に立って戦えるのは、俺だけだとも思った。
フリバーの奇襲も、ロシノでの圧勝も。
結果、主人殿…ヤハフォンス殿が天下を取られた。
ここまで10年。我ながら早かった。
天下統一から10年間。俺たちは宰相と魔導団長だった。
思えばこの頃が俺たちのピークかも知らんな。
そして、覚えてるだろ?ちょうど40年前だ。
二代目…シーフォンス殿に代替わりする時、ヤハフォンス殿の御陵墓を、太陽神殿の隣に建てることになった。
統一王からの代替わりだ。民の忠誠を落とさぬよう、威厳を保つよう考える必要があった。
我ながら妙案だったと思うよ。太陽神殿の隣に、全く同じ規模で神殿を建て、それを陵墓とするなんてな!
4000年前…神々の時代の遺跡の隣に並ぶ。統一王ヤハフォンス殿は、神にも等しいと!
そしてその神殿を建てるための調査に向かった。
そこでの出来事。なぁ、覚えているだろう?」
「あぁ。ハッキリ覚えている。
神々の時代には魔法なんてなかった?大嘘だった!
何が宗教儀式だ!何が原始的な文化だ!どう見ても転移陣だ!どう見ても精巧な建築だ!
原初の魔法は2000年前だって?当時は飛行魔法が究極の魔法だって?
じゃぁこの転移陣跡をどう説明するのか!壁画の超巨大な火球弾をどう説明するのか!
そして何より、なぜ魔法が使えなかったはずの神代人が、こんなに濃厚な魔力が溢れる場所に太陽神殿を作ったのか!!
俺たちが信じてきた魔法史は全部嘘だったんだ!」
「その通りだ。そして俺たちは古代魔法の研究を進めたわけだ。」
「そこからは散々だった!異教徒だの詐欺師だのと!実に散々な目に遭った!職と住処を追われた!
ようやくこんな山奥に逃げ込んで一命を取り留めたが、酷い目に遭った!!」
「そして結局何も分からなかった…」
「あぁ…。俺たちの求めたものは何もなかった…!」
「明らかに存在した古代魔法は、何一つ痕跡が残っちゃいない。
魔力残渣は統一戦争で上書きされた。
古代の遺物も、数々の広域魔法の犠牲になっただろう。」
「その通りだ…!俺たちが発動した魔法の数々が、古代の魔法を無かったことにしてしまった!!
そしてそのことさえも、祖国の歴史には残らないだろうな…!!」
「やるせない。実にやるせない。」
「俺たちにできることは、あったはずの歴史を伝えることだけだ!」
「あぁ。後世には発見することさえ難しくなるであろう古代魔法が確かに存在したことを、後の考古学者に託すのみ。」
「……奴らの裏切りが後世に暴かれて、俺たちが英雄になれる日が来るだろうか」
「…どうだろうな。
『魔導兵長ホールランドと軍師トリトスの英雄弾』でも書いておくか」
「へっ!御伽噺に語られても嬉しくはないね!」
「ハハッ! 顔色は素直なようだぞ?」
本編は次から始まります。
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