りり、あつさにやられる 2痴話
熱い。
ただひたすらに熱い。
灼熱の大地化かと思わせる程、東京は熱い。なんと、36度もあるのだ。りりは耳の中にまで吹き込む熱気で耳の中が痒いのか痛いのかムズムズするのだ。
今日は、りりの旦那のおすすめする、等々力渓谷へ四人家族で行ってきた。
りりは、電車の車中でぱたぱたと変わる車窓を見つめながら心の中で謎の男に話しかけた。
「等々力渓谷には、横穴があるらしいんだけど、なんかロマンティックな事ないかな?」
時々、チュッパキャンディーを舐めながらキラキラの目で話しかけてくる子供達の問いかけに答えつつぼぉっと、瞳を閉じていた。昨日は朝の四時まで起きていたのでかなり眠かった。
「大したことはないぞ。」
謎の男に問いかけても、今日はピンとこない返事しか返ってこなかった。
東京にある、渓谷で横穴式の古墳?もあるのにこんなから返事。りりにとって少し不服だった。
なんだか、ドキドキしそうなものなのに。
でも、そんな感覚を感じた時はたいていそんな、もんなのだ。
良い事もないが、大して悪い事もないだろう。
そんな所かな。
旦那と子供たちは何駅も乗り継いで等々力渓谷へ行く道すがらとても楽しそうだった。
等々力渓谷の直ぐ側の駅を降りるとすぐクレープのお店が目に飛び込んできた。りりはクレープが食べたかったが、旦那に他に良い店があるだろうから他へ行こうと言われてしまった。
直ぐに、ケヤキの巨木が目に飛び込んで来た、保護されている木だそうだ。子供たちが美味しそうなかき氷を見て食べたいと騒ぐ。
すぐ傍に等々力渓谷入口が見え、飛び込むように子供たちが入って行った。入ってすぐ、ひんやりして涼しい。川のせせらぎが聞こえてきた。
「あんまり、涼しくないな。子供のころ来た時はもっと涼しかった。」
旦那がぽつりと呟いた。
渓谷内の温度が31度と電光掲示板に赤字であり、りりはそんなもんさ。外より涼しくて良いんじゃない。かと思った。
等々力渓谷内は、ここは東京かと思える程、一瞬にして深山に入って行く気分を味わえる。キャッキャピのカップルの囁き声と子供たちの喜ぶ声が混じって聞こえる。
川の流れに地層が長い何月をかけ削られた見事な景観も見れたが、川の水が濁っている様に見える。
此処まで来ても、りりのアンテナが反応しなかった。謎の男も沈黙したままである。
子供達が楽しそうなのでまあ、それはそれで良いかと思った。
途中、龍の口から水が放出されている場について、龍か。なんて思いつつ、グーグル先生が三号横穴への道案内の方向指示されていると思われる階段を登って行った。
長男はすたすた進んで行くのでハラハラしてた。
りりはほとんど神社しか最近行っていないが久しぶりに寺院へ子供に誘われるように入って行った。
寺院の前に、「空海」の文字。
ポスターだったが。
そう言えばりりは最近空海さんについて、ぼやっと考えて居たりもした。
そう言えば、空海さんは山中に初めて寺院を建立し、初めて建立した寺院に最後帰り入滅したと言う事だったな。
空海さんにご縁がつながればと思い手を合わせた。神社にお参りばかりしていたので拝み方を忘れてしまっていたが。
しかも、りりは三号横穴へ行く道をグーグル先生に教えてもらっていたはずなのに大幅に間違えていて旦那に怒られてしまった。悔しかった。こんな時は旦那ナビの方が正解なのだ。
ここでも、子供達のアンテナはビンビンだったようだが(とても楽しそうに山を下って行く)りりは、服がみっちり体につくぐらい汗びっしょりだった。
山を下ると、川の直ぐ側にお堂があり、先程から子供たちは神社、神社と騒いでいたが、りりはお堂だと決めつけていたので、赤いのぼりにビビットきた。
お稲荷さんだ。
ペコっとお辞儀して、その先にある三号横穴へ行った。
三号横穴は埋蔵物をしっかり守る為なのか、穴にはきっちり扉で閉ざされ、近くには何か電気の配線、電柱があった。ノゾキアナがある様だったが下の子がりりを呼び泣いたのですぐに階段を降りた。
横穴の直ぐ上が幹線道路になっていて
謎の男が言うように。
「なにも無かった。」
ドキドキするような事は無かった。
等々力渓谷を出て旦那がお茶したいとしきりに言いだしたので炎天下の中、りり一家はお茶屋さんを探すのだが、何処も満員で仕方なく、かき氷やさんで子供達がかき氷を食べる事にした。
かき氷が出来上がるのを待っていたら、上の子がトイレと言い出したりなんだりで駅とかき氷屋さんの往復でりりは、水筒を自分の分家に忘れてしまったので、うつろになりながら……。
旦那にも暑いから早く帰ろうと誘ったが頑なな旦那にイライラしつつもかき氷を子供たちが食べ終わるのを待って、その場を後にした。
いついかのニュースで見た事があった場所だった。
最近りりは、ふとニュースで行ってみたいと思った所に、行けている。
何かの引き寄せか。
昨日は、謎の男とのお話はこんな感じだった。
明日はもっと、夢のある小説をこねくり出したいと思うりりだった。
つらつらと書いていきます。
読んでくれてありがとうございます。