蘇った記憶
本日2話目です!
やったね少し進んだ(?)よ!
どうも、昨日リュシャという名前を付けられた幼女です。
リュシャという言葉を聞く度老夫婦が苦しそうな顔をするので、名前の意味を聞いてみた。
「リュシャってつらいなまえなの?」
まさかお婆さんが涙を流し始めると思いませんでした。
お婆さんは辛くて言えないって雰囲気だったので、チラリとお爺さんを見てみると苦い顔をしながらそっと意味を教えてくた。
「リュウは6番目、シャは猫、つまりお前は6番目の猫……という意味なんだ」
ちょっと可愛い響きの名前だと思っていたら大間違いでした。
ただでさえ笑顔が気持ち悪かったのに、村長の好感度がマイナスを突破した。
そもそもあの時は混乱の最中で名前を思い出せていなかったから、名乗れなかっただけで私には名前がちゃんとある。しかも2つある。
ひとつはどう見ても普通の人間とは思えない人外幼女現在の私の名前"マオ"。
もうひとつは、所謂前世の名前というものだ。
前世の名前は"八城 祢子"。
まさか"ねこ"という名前から今世猫っぽい姿になったのではないかとか思いたくない。
此度つけられた名前も猫。しかも6番目。
もうどうしたって猫に関係するとしか思えない思いたくない。
そして今の私は3歳位で、前世は23歳だった。
精神年齢合計26歳という、なかなかに見た目は子供中身は~…な状態である。
前世の記憶が戻ったのもつい最近…というかここ数日の事なので、脳内の混乱具合が凄まじい。
一気に23年分の記憶が頭に入って来る感覚も、頭が割れそうになるので二度と体験したくない。
しかも3歳という幼い子供の脳味噌にすれば単なる拷問でしかない。
普通に耳を触ろうとしたら耳の位置は違うし、お尻に何かあるから引っ張ってみたらめっちゃ痛いし、初めて自分の姿を見た時は自分だと認識するのに時間が掛かった。
真っ白な髪に、同じ毛質の獣耳に尻尾……極め付けは真っ赤な眼。
どう取り繕っても取り繕えない程に、普通の人間ではなかった。
■■■
前世の私は普通の人間の女だった。
高校を卒業して、大学へ進んで、資格も取得した。
さて就職が決まった、次は仕事だ頑張ろう、という所で……微妙に思い出せないという事は私は就職後に何らかの理由で死んだのだろう。
まだ実家暮らしだったから、親はどうしたのだろう。
お父さんはまた腰痛めてない?
ダラダラしすぎてお母さんに怒られてない?
お母さんは身体壊してたけど大丈夫なんだろうか。
無理しないでいつまでも元気でいて欲しい。
2人共私が先に旅立ってしまって怒っているかもしれない。
親不孝者でごめんなさい。
妹は?
最近彼氏が出来たとか喜びながら、私の枯れた生活を笑ってた妹はどうだろう?
私の事なんか知らないと言わんばかりに彼氏とイチャイチャしてたりして。
許しがたいけれど、幸せになって欲しい。
友人は泣いたのだろうか、知る事も出来ないけれど……泣いてくれてると信じたい。
いつも集まっている友達はきっと泣いてくれるハズ。
疎遠になってる友達だっているけど、お葬式には来てくれたのだろうか。
思い出し始めると一気に思い出されて、涙が止まらなくなって来た。
拭っても拭っても溢れ出す涙に、堪え切れない嗚咽。
どうしよう、本当に私死んだ……のだろうか。
今だ治まらない頭痛と混乱で情緒不安定になっている自覚はある。
それにしても涙脆い、と思ったけど私は今3歳だ、感情制限が出来る訳がない。
堪え切れなくなった嗚咽は泣き声へと変わり、隣室にいた老夫婦が苦しそうな顔で駆け寄って来た。
「ごめんね、ごめんねぇ。お母さんも恋しい年頃なのに、一緒にいさせてあげる事も、外で思いっ切り遊ばせてあげる事も出来なくて……本当にごめんね」
「ちな…ちなうのぉー」
お婆さんは涙でボロボロの私を強く抱きしめて、とにかく謝った。
謝って欲しい訳でも、顔もよく分からない現在の母親が恋しい訳でもない。
説明しようとしても呂律も回らないし、3歳児の語彙力では上手く説明も出来ない。
お爺さんは泣き続ける私とお婆さんの2人をまとめて抱き締めて、私の頭をポンポンと撫でた。
「昨日は辛い事が沢山あった。混乱もしてる。今日は皆で一緒に寝ようか」
ちょっと苦しそうな、申し訳なさそうな顔をしたお爺さんはそう提案して来た。
とっくに精神年齢が成人している私は、そんな事するの恥ずかしいと思ったが、とても素敵な提案の様に思えて、お爺さんとお婆さんの服をギュッと握って頷いた。
お爺さんとお婆さんの2つのベッドをくっつけて、2人に挟まれて寝るベッドは少し狭くて、お布団は薄くて硬かったけど、とても暖かくて、私はゆっくり眠る事が出来た。
「気丈に振舞っていたけれどこの子はまだ小さい。母親が殺された後に、あんな大勢の大人に囲まれて、迫られて……辛かったろうになぁ」
「神様、この子のこれからの未来に溢れんばかりの幸せを」
老夫婦は小さな身体に背負わせてしまった酷な運命を少しでも減らせるよう、心から祈った。
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