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————は?
「そうそう、あれはメグム特有のツンデレデースッ」
「口では冷たいことを言っても寵さんは温かい方ですから、女の子をぞんざいに扱いませんよっ」
……なんで、コイツらがここに? リモコンで止めてたよな?
真っ白になる頭。
……しかし、頭の隅に僅かに残る冷静な部分が、過去の遣り取りを掬い上げた。
魔物達曰く——『寵からは時魔法の対処法を叩き込まれてる』——と。
つまり……寵との半年の修行で、こいつらもソレを?
さっきは、掛かったふりを?
「寵さんから全て聞いたっす」
「だからザクロ一人で抱える必要ナイデース!」
「お友達ではないですか。寵さんから縁が出来た者同士、これからも仲良くしましょうね?」
こいつら——『誰』だ。
全て理解したようなツラして……もうアタシが知る奴らじゃなくなってて……寵から何を吹き込まれた?
「はぁ。ピーチクパーチクと、君ら姿隠す気あんのか」
っ……そいつは、いつの間にか目の前に居て、アタシの存在なんて最初から気付いてたって風に呆れ顔をして、
「やぁザクロちゃん、盗み聞きかい? その『涙』は自責の念かな?」
涙?
いつの間に……道理で視界がボヤけて……
一体、これは『何に対する涙』だ……?
スゥ——寵が腕を伸ばし、人差し指をアタシの額にトンと置いて。
「ククッ、まぁ知られたからには仕方がない。貴様には少し『忘れて』貰おう。——なんて。君がこの真実を知るのは『三回目』なんだけど」
三回目?
……それを問い質すより先に、キィィィ……あの感覚と共に意識が薄くなっていって……
最後に視界に映り込んだドリーが、アタシを、哀しそうな目で見ていた。




