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「んーん?」
現状を把握するかのように何度か瞬きをし、「んーしょ」と身体を起こし、「ふわぁぁ(コキコキ)」両手を上げて伸びをして。
「ふぅ……………………『いま何年』?」
「は?」
開口一番の第一声が、それか?
娘を見て?
いや、初めて見るであろう相手だ、アタシを娘とは思ってないのだろう。
このマイペースな感じ——どこかドリーを思わせる。
黒い長髪と病的に白い肌。
アタシを産んだのが若い頃でそれから成長が止まってたとはいえ、それでも若々しい見た目で、なんならアタシより年下に見られるレベル。
なのに、そこはかとなく香る妖艶な色気。
「……今日は」
年と月日を告げると、
「えー」
お袋は首を傾げ、
「なんで『四年も早く起こされてる』のー?」
「……は? どういう、意味だ? 早く?」
「えー、君、『寵ちゃんと知り合い』じゃないのー?」
「ッ! な、何でその名前を!?」
「うー、頭に響くから叫ばないでー。『あたしの娘』の癖に元気だなー」
「……気付いて、たのか?」
「意外と気付くもんだねー。そっかー、なら今は一五とか一六歳かー。初めて見るのは二十歳の姿だと思ってたから、得した気分だよー。てか見た目ギャルギャルしぃなー」
「ほ、ほっとけよ育児放棄者が。……寝起き早々悪いが、知ってる事、教えてくれ」
「ほんとに悪いよー。でもまー、少しは親として教育しなきゃだねー」
それから。
お袋の口から漏れた『真実』に——アタシはそりゃあ驚いたが。
思い返せば『しっくりくる』ものばかりで。
つっかえていたものが色々と取れた気分だった。
——お袋が目覚めて、三〇分は経っただろうか。
「もー満足? じゃ、そろそろ『時間』だねー」
その言葉に、アタシはあまり動揺しなかった。
何となく察していたから。
「本来なら『こんな機会』あるなんて聞いては無かったからー、寵ちゃんに感謝だねー」
「……ああ。ホントは起きたら一発ブン殴るつもりだったけど、それは『次回に』回してやるよ」
「うちの娘がこわいよー。ふぁぁ……んじゃー、父さんと母さんによろしくねー」




