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——その後は、寵が強引に母親を言い負かし、キレ気味のグラヴィをその場から追いやって……


「ふぅ。全く、恥ずかしい。あんな恥ずかしい母親を見られちゃってさ」

「いつものこと」

「それな。ママンたらアラサーだってのに、いつまでも中身は偉そうなガキでなぁ」

「同レベルな喧嘩に見えたが……」

「僕は若いからいいんだよ。——さて」


ポイッと、寵が何かを放り投げ、アタシのいるベッドの上に落とした。

ズシリ、重い衝撃。

……【鉾】?

確か、さっきの世界の魔王が持ってた奴だ。


「戦利品だよ。君の物だ。それを売るなりすれば目標のGに届くだろうさ」

「いや、倒したのは瓏だろ?」

「瓏ちゃんはそんなの欲しがらんし。今日一日のバイト代って事で。断る理由は無いでしょ」

「……わかった」


——その後、交換所まで出向き、目的の品を手に入れ、あれよあれよという間に時間が進んで……



夜。


「それが、石榴さんが狙ってたブツっすか?」

「ん? ああ……」


外観で超高級と分かる旅館へと案内されたアタシ達は、聞いた事もない肉と野菜の色とりどりな懐石料理に舌鼓をうち……現在、生徒達は就寝時間までの自由を満喫していた。

アタシはさっさと本日二度目の風呂を頂き、部屋の広縁(和室奥窓際にある椅子とテーブルがあるあそこ)で寛いでいた所に、樹が風呂から戻って来た。

アタシの手には今、お洒落な香水の瓶みたいなの。


プリンスキッス——コレをお袋に飲ませれば、お袋は目覚める。


未だ実感が無く、心も体もフワフワしている。

アタシが一生を掛けると思っていた目標が、こんなに早く、達成しようとしている……この薬が本当に効けば、だが。


「初日で欲しいものが手に入るとか、流石石榴さんっすねぇ。私はまだまだ時間が掛かりそうっす。この旅行期間が『一ヶ月』なきゃとても成就出来そうにないっすねぇ」


一ヶ月……一泊二日の修学旅行だが、それは『表の世界』の時間基準。


この世界はグラヴィが時間の流れを遅くしてるのでここでの三一日間は表では一日なのだ。

人生観や人生そのものを変えてしまうテーマパーク……それでも広過ぎて満足に回りきれないし、再びチケットの抽選に受かる確率はほぼゼロ%らしい。

思いっ切り楽しむか、一発逆転の野望の為にそれだけに集中するかはその者次第。

アタシは前述の通り、一日で終わってしまったが。


「龍湖とアニーは?」

「まだお風呂でのんびりしてるっすよ。寵さんの居場所に目処ついたから体を清めてから向かうのだとか」

「ブレねぇな……」

「しかし、改めて、思ってた以上にファンタジー世界そのものでしたねここ。一応は調査という名目で来たわけっすが、知れば知るほど我々の手に負えない存在と実感するっす」

「まぁ、手を出すべき相手じゃないと再確認出来たな」


言いつつ、アタシらは窓の外で盛り上がってるパレードに目をやる。

キラキラと七色に光る木ノ実の電飾。

大型の馬型魔物が引っ張る巨大な馬車とその上で手を振るマスコットキャラ達。

聴く者を虜にする音楽を奏でる不思議な楽器と演者達。

花火代わりに飛び交う炎や雷の魔法。


それは——まさに夢で見るような幻想的な宴で、アタシら一般人にとって現実の光景では無い。


誰がこの連中をどうにか出来るってんだ。

他組織の奴らもさっきみたいに来るかもだが……魔物達の遊び相手にすらならんだろう。


「石榴さんはこれからどうするっす? 生徒によっちゃ家が恋しくなって一ヶ月居るつもりもない子が居るでしょうけど、まだ調査の為に居るっす?」

「どうすっかな……一度帰りたいってのが本音だが」


「わかった」


「わぁ!? ど、ドリーさんっ、いつの間に!」


音もなく部屋に現れた小麦肌少女。

今の会話……組織云々というのを聞かれたか……?

まぁ、今更聞かれたところで、な話だが。


「アタシはもう気配で分かるようになったから驚かんわ……で、何がわかったって?」

「今すぐザクロを家に帰してあげる」

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