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「……んだよこれ」
「開花」
「は?」
「開花。ドリーが与えた【世界樹の花】。それを身に付けた者は適合すると強力な力を得られる」
確かに。
ふざけた格好をしているアタシだが、その動きは普段の比じゃないぐらい素早く、攻撃も魔王が困惑するほどに重い。
瞳の色はドリーと同じエメラルドグリーンに。
まるで……アタシも『魔物化』したかのような変貌ぶり。
我を失ったアタシは、それでようやく魔王と肩を並べられるほどに。
『わー、なんかおもしろいことなってるー。ぷいきゅあがんがえー』
当然のように無傷で戻って来た瓏は、目的を忘れてヒーローショーでも見るようにハシャいでいる。
『こら瓏ちゃん、君の修行なんだからサボっちゃダメっ』
『瓏。ザクロはヒーローよろしくそろそろ活動限界だから加勢して。瓏もヒーロー仲間入り』
『うんっ!』
瓏が助太刀に入ると、攻勢はあっさりひっくり返り……瓏の拳が魔王を貫き、魔王は何か恨み言を吐きながら光の粒子となって消えていった。
同時に、アタシは地面に倒れ、服も元の制服に戻る。
『いーなー、ぼくもへんしんしたいなー。どりー』
『残念だけど誰でも開花出来るわけじゃない。今度別の方法見つけておく。寵』
『はいはい、よっと』
パチンッ——寵が指を鳴らすと……滅んだ筈の魔王軍の面々が『時間を巻き戻したように』再生され、地面に転がっている。
勝手にやって来て散々暴れまわるけど最後に元の状況に直しときゃいいでしょ? というまるで暴君のような発想。
いっそあちらからすれば滅ぼされたままの方が悪としての矜持も保てるのだが……せめて寵にはアタシら関連の記憶も消してるのだと願いたい。
アタシの中ではもう『命』だの『倫理観』の定義はボロボロだ。
『後片付けも終わったし、帰ろっか。ママーン、戻してー』
ここで、映像は途切れた。
「という感じ」
「簡単に纏めやがって……つぅ」
ギシリと、意識した途端全身に筋肉痛が襲って来た。
アレだけ人外な動きをした後だから当然ちゃ当然だが……




