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魔王と対峙する瓏。
後ろから次々やって来る雑魚モンスターの首を蔓でポンポン飛ばすドリー。
暇そうに床に落書きしてる寵。
魔王は本気を出す為かその姿を悪魔のようなものに変え襲いかかって来る。
三又の鉾を振るいつつ氷の魔法もバンバン使ってくる激しい攻撃の嵐。
が、それも瓏にとっては動揺するほどのものではなく。
全て片手で処理しつつ『はやくほんきだしてー』と兄の言い付けを守って攻撃をしない舐めプレイ。
と——ここで寵が『あ、何かいい形の石見つけたー。瓏ちゃんが好きそうなええ石やこれは……』と呟いて。
『えっ? にーみせてー!』と瓏が戦闘中だというのに反応し、よそ見。
その隙を魔王は見逃さず、渾身の巨大氷解魔法で瓏を吹っ飛ばした。
『油断しちゃだめだよー』と笑う寵の反応を見るに、この状況はワザと作ったんだろう。
どうせ今の攻撃でも瓏にダメージは殆ど無いはず。
が……頭では解っていても、この時のアタシは何故だか無性に頭に血が上り——
「ブチ切れた記憶はあるんだが、その後は覚えてねぇな……」
「その時の動画がこちら」
「お前スマホとか持ってんのかよ……つか、敵の首飛ばしながら撮ってたのか。で、何が映って……」
動画の中のアタシは『発光』していた。
いや、正確にはドリーから貰った【花】が眩しいくらいに緑色の光を発していて。
その光がアタシの全体を包み込み…………光が晴れた時、アタシは『コスプレみたいな格好』になっていた。
『ひえーwww 魔法少女じゃんw いやどっちかってーとプリキュア?w かわいーw』
寵の大爆笑が聞こえるが、この時のアタシはそれを意にも返さず、真っ先に魔王へと飛び掛かっていった。