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「んなわけで、瓏ちゃんの遊び相手になって貰うよ」


「遊ぶって、なんだよ。さっきガキどもの相手してて疲れてんだが……」

「なに、あのヤンチャども相手するより全然疲れないよ。君は『立ってるだけ』でいいから。なんなら座ってても良い」

「それアタシ要るか……?」

「要る要る。ンじゃ、ママーン。適当なとこに『繋げてー』」

「……(フンッ)」


大気が震えるような鼻息の後、【ソレ】は対称的に、無音で『開かれた』。


目の前に現れた【深淵】。

縦横2メートル程ある巨大な【黒い球体】。


「さっ、入って入って」

「わーい(ピョン)」

「いや説明しろよ、どう見てもヤバそうなモンだろ。瓏は先に行って消えちまったし……」

「でぇじょうぶ、ただの【扉】だよ。普段は不快と認識した相手を放り込んでぐちゃぐちゃに押し潰す『重力場ゴミ箱』なだけで」

「アタシはさっきから敵意向けられてるんだが……」

「僕らも一緒だから平気だって。つべこべ言わず来いっ」

「えいえい」


寵に引っ張られるわドリーに背中を押されるわで球体に押し込まれた。


「……ッッ……、……?」


痛みは無い。

や、痛みすら感じる間も無く潰された可能性もあるが……恐る恐る瞼を開く。


――なんか『知らん場所』に居た。


薄暗い。

漂うのは、獣や血のような生臭い空気。

目の前には象やキリンも通れそうなデカイ扉があり、両脇にある松明がユラユラと周囲を照らしている。

こんな大仰な扉……そして扉越しでも分かる『強者でも潜んでそうな威圧感』……グラヴィの足元にも及ばないが、しかし、これはまるで――。


「いかにもな『ボス部屋前』だよね」

「ぼすー!」

「瓏。あまり大声出さない」


緊張感の無い連中。

まぁ寵とドリーの実力考えたら、この扉の奥に潜む程度の奴なら敵じゃあ無いんだろうが……なら、何の為にここへ?


「ザクロちゃん。テーマパークのコンテンツの一つに『勇者体験』ってあったの覚えてる?」

「あ? ああ……そういやそんなの……」


その言葉で少し察した。

勇者体験――文字通りファンタジーの主人公を体験出来るコンテンツだ。

一般人が実際に異世界に行き、様々な問題を解決し、英雄と讃えられる……そんな体験。

勿論、生身のままでは最初の町の外ですら死にかねないので、初めから【優秀な装備】や【超人になれる薬】、【強化魔法などのバフ】を使って無双出来るようにするのだとか。( その世界に元々居た勇者や敵からすればはた迷惑な話だが)

で、持ち帰ったアイテム(生き物を除く)は申請さえすれば貰えたりGに換金出来たりするし、Gさえ払えばその世界に永住も出来るらしい。(元の世界には戻れないが)


――で、その勇者体験が今の状況にどう関わってくるのかというと……。


「勇者体験の異世界召喚システムは、時魔法と空間魔法を使えるママンが担当しててね。その要領でママンにはこうしていきなりラスボス前まで飛ばして貰ったわけだけど……今日の目的は『瓏の修行』だ」

「修行? 戦わせるのか? でもこいつ、まだ三歳だろ? (ポンポン)」


無意識に頭に手を載せると「あぅー」と可愛らしい反応と心地よい髪の手触り。

魔王(母親)の前じゃないからアタシも気が大きくなってるようだ。


「そうだね。でも、その子自身が一日でも早く『ままんのむすことしてつよくなりたいっ』ようだから、こうして修行に付き合ってやってるわけ。僕も忙しいってのにー」

「なら他の職員に代わって貰えばいいだろ。えらく可愛がられてるらしいじゃねぇか」

「それは無理。グラヴィもパーク従業員も瓏が可愛すぎて傷付けられない。なにより。瓏が寵との時間を望んでる」


ドリーの言う通り、弟は兄の脚に抱き着き、「にー! はやくはやく!」「ええい、緊張感を持てっ」と触れ合っていた。

よほど兄が大好きなのだろう。(姉妹にしか見えんが)


ゴッッッ!!


と。

いきなり扉が吹き飛んだ。

爆発に近い衝撃。

こちらの被害は……無し。

他の奴らは当然として、アタシも嫌な空気を感じ瓏を抱え咄嗟に飛び退き、直後のコレだ。(因みにそんなアタシよりも早くドリーがアタシの腹に蔓を巻きつけ安全圏に引き寄せた)


「■■■……」


立ち込める煙の奥から、怒気のこもった重い声が響くが、何を言ってるか分からん。

寵はポケットに手を入れて愉快そうに肩を揺らし、


「普通なら客相手に翻訳機のアクセサリー渡すんだけどもさ。まぁ、でも。『喧嘩売ってる雰囲気』は、不思議と言葉が通じずともどの世界でも相手に伝わるんだよね」


「これだけ和気藹々敵地でお喋りしてたらな」

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