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「お疲れ石榴君。一息ついてくれ」


カウンター席に座ったアタシの前にコーヒーを置く【オヤジ】。


「ああ。今回は少し、ヒヤッとしたぜ」


喫茶店アンティーク。

名の通り、海外から取り寄せたらしい昔のソファーや食器類や小物が置かれた純喫茶。

普通に経営もしているが、ここは『組織の本部』でもある。


蒐集品回収組織〈骨董屋コレクターズ〉。


目の前にいるマスターの白い髭のオヤジは組織のボスでもあり、どこからか得た情報でアタシ達を指揮している。

今この場にはアタシと樹だけだが、メンバーは他にも。


「今日も凄かったんすよ石榴さん! あっという間に悪名高きアニマルズを行動不能に!」

「リモコンの力、か。相変わらず謎の多い蒐集品だね」

「だから、こっちとしても乱用は避けたいんだがな……」


あの後。

部屋にいた被害者は『しかるべき場所』に引き渡したので、【施設】で治療と『記憶処理』が施されたのち、何事も無かったかのように日常へと戻されるだろう。

無力化したパペットも『組織の倉庫』へと収容され、管理される手筈となっている。


——世界には、こことは別の『組織』が多く存在する。


蒐集品の呼称も【呪具】だの【魔道具】だの組織によって違うし、『目的』も違う。

アタシらの目的は『蒐集品の撲滅』。

蒐集品は確かに便利なものだ。

が、それ以上に『不幸』も生んでいて。

その強大すぎる力で【大事なもの】を喪った奴が、ごまんと居る。

この組織にいる奴は、全員がそれで。

だから、蒐集品を集め、『破壊』若しくは『封印』をしている。

まぁ勘違いして欲しくないのが、アタシらは別に慈善団体じゃない。

『欲しい蒐集品』を求めるが為に籍を置いてる奴も居るが、それを咎める奴も居ない。

割と自由な組織。


……が。


当然、蒐集品を『金目的』だの『軍事目的』だの『神の為』だのという欲望に素直な組織もある。

寧ろそっちのが多い。

別にそれを咎めるつもりは無いが……あちらからすれば、他の組織にある蒐集品は喉から手が出る程欲しいだろう。

だから、組織同士の争いも少なくない。

ウチは大きい組織ではないが貴重な蒐集品を多く保有しているから、よく狙われている。

そういう場合は、きっちり売られた喧嘩を買って、根こそぎあちらの蒐集品を奪ってやってるが。


——そんな蒐集品は、未だに謎が多い。


蒐集品が生まれる条件は様々で……

アニマルズのように『物に魂が宿った』り、

魔術師や呪術師が『物に力を込めて作った』り、

そもそも『そんな特殊な力を持つ人や生き物』自体を蒐集品とカウントしたり、

誰かが(若しくは偶然or事故で)生み出した『特殊な場所』も蒐集対象だったりと……

数えればキリが無い。

アタシらが必死に集めようにも、蒐集品ってやつはどんどん増える。

年月を経て強力になった蒐集品が、新たな蒐集品を生む事も珍しくない。

まぁ、基本的な蒐集品はその力もショボく増えた所で破壊も容易で、脅威にはなり得ないのだが……


——たまにヤベー蒐集品に出くわす事がある。


アタシの持つリモコンもその一つで、そんなのは特級・超特級蒐集品と呼んでいる。

明らかに、『人知を超えた』産物。

人、自然、魂、年月をどれだけ注ごうとも、完成しないであろう『摂理の範疇外』。宇宙人(海外の組織で保護されているという噂)が落としたと言われた方がまだ納得出来る。

まるで漫画やアニメやゲームの『ファンタジー世界』な産物。

そんな世界、こんな仕事をやっている以上、存在を疑ったりはしないが……もし見つかったら、凡ゆる組織が血眼になって我が物にしようと動くだろう。


「ふんふんふー……おっ? このCMはっ」


と。

人が考え事をしてる横で、樹の奴、パソコンで呑気に動画見てやがった。

いつもみたくお笑いか動物のやつだろう。


「ねーねー石榴さんっ、今流れてるこの遊園地、行ってみたくないっすかっ?」

「なんだお前、呑気に遊園地なんて——」


チラリ。

パソコンに流れるCM広告に目をやって、


『ここは東北のとある島にある巨大テーマパーク【プランテーション】。

平日だろうと構わず大盛況です。

開園前は入り口に長蛇の列。

園内のホテルは常に満室。

そもそも入場自体制限が掛けられ、チケットが無ければ入る事すらままなりません。勿論転売不可!

そもチケットがあれば一日悠々と過ごせるのに開園前に並ぶ意味は? とお思いでしょう。

答えは簡単。

それだけ、早く中に入って楽しみたいから、に他なりません。

日本には凡ゆるコンセプトの楽園が存在しますが、何故ここはこんなにも大人気なのでしょう?

少し、覗いてみましょう。

……おや? ご覧下さい。

ここは人気アトラクションの一つ【スペースフリーフォール】。

お客様方を乗せた座席はドンドンドンドン上昇して……』

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