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——そして。
——宴もたけなわ。
「やーっ。にーとまーも、いっしょに、おふろっ」
「先に行ってなって。後でママンと行くから」
「勝手に決めるな」
嫌がる瓏の背中を押し、浴室へ放り込む僕。
リビングに戻ると、皆、神妙な面持ちだった。
「もうすぐ、なんやなぁ」「三年……早いなぁ」「寂しくなりますわねぇ」
「全く。みんな意地張ってないで、過去に跳ぼうとしてる瓏を止めればいいのに」
「ならん」
腕を組み、背中を壁に預け俯くママン。
「なんで?」
「……」
「言わんでも分かるやろ、メグ坊」「これは瓏にとって大切な試練でもあって」「皆、若との『あの日々』を否定したくないんですわ」
「瓏は瓏だよ。何も僕と同じレールを進ませる必要なんて無いのに。……なんて言ってる間に、『時間』だ」
壁時計を見ると、丁度、僕が『飛んだ』時間を過ぎていた。
——沈黙が、リビングを埋め尽くす。
「僕が確認して来るね」
その申し出に何かを言う者は居なかった。
確認の権利があるのは、僕かママンくらいだという配慮もあるのだろうが。
何より、皆、現実を見るのが怖いのだろう。
敵に対しては容赦無い奴らも、仲間が絡めば一般人とその心は変わらない。
僕はそれを知っている。
だからそれを『利用』させて貰う。
——さて。
浴室の中を確認。
ふんふん……よし、首尾は上々。
——さて。
「普通に居たよー」
「「「えッッッ!?」」」
タオルに包んだ瓏を抱えて戻ると、皆ガタンッと立ち上がり、駆け寄って来る。
「ど、どゆことや!?」「歴史が変わったっ!?」「今日、では無いと言う事ですの……?」
皆色々と議論してるが、その口元は柔らかで。
なんやかんや、この結末は嬉しいらしい。
「じゃ、この子寝ちゃってるから僕がこのままベッドまで連れて」
「待て」
と。
そんな和やかな場を、ハッキリ通る声で、一番偉い人が一刀両断。
「見せてみろ」
「別に怪我なんて無いよ?」
「そういう意味ではない」
眠る瓏のおデコに手を置くママン。
あーあ、流石に、それをされたら『誤魔化し』きれない。
「なっ……」
ママンは目を見開き、顔を上げ、唇を震わせ。
「き、貴様、【これは】、なんだ」
「なんだ、とは?」
「何故、『このような事』が出来る」
「だから何の話? 主語が無いよ」
「お前……瓏を……【複製】……したのか?」




