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朧げな意識のお客様の身体を拭いてやり、持参したパジャマを着せ、歯も磨いてやって。


その間も、瓏は——。


「何が何でも、アンタから離れないのね……」


布団を三つ敷いた客間。

瓏がうちで泊まる時は、いつもこんな風に皆で寝る決まり。

いや、決まりではないが、いつもそんな流れになっている。

瓏がそれを望むから。


「だから、野郎にくっつかれても嬉しくないってのに」

「ほんとにコアラみたい。ネッコも小さくなれれば四六時中お兄とくっついてられるのに」

「あんた学校以外は瓏と似たようなもんでしょ」

「お兄、ネッコを幼女にまで戻して」

「戻すより進めない? また晩酌しようぜ。今回も二人を二十歳にまで老けさせるからさ(ゴクゴク)」

「大人は誰もいないのに、律儀なのか不義理なのか分からないわね……ってもう飲んでるし。度数低い缶チューハイなのが可愛いけど」

「ネッコも飲むー(ゴクゴク)」

「……あんたら今もう二十になってんの? 猫仔は分かりやすけど、あんたは全然見た目変わらないわね」

「玲ー(ガバッ)愛してるぞー。愛してるって言うまで離さないぞー」

「だからあんたはすぐ落ちるほど弱いの分かってて飲むなってのっ。はいはい愛してる愛してる、愛してるから離れて」

「にゃーっ(ガバッ)ネッコもお兄愛してるーっ、んーっ(チュール)」

「あんたは強いでしょ酔ったふりしないドサクサでチューしないっ。ああもう、あんたら重いっ」

「ふにゃー……」


ゴロンと布団に倒れ込む兄。

巻き込まれてゴンゴン布団に体を叩きつけられた瓏だったが、それでも起きたり離れたりもしない。

そのまま兄共々グーグー寝てしまった。

仰向けの兄に布団を被らせる。

しがみついた瓏のせいで、まるで妊婦のようにポッコリ布団が盛り上がるのはいつもの光景だ。

カチリと電気を消して常夜灯だけにし、私達は兄の両側の布団へ。


——静かな夜。


聴こえるのは、兄と瓏の寝息だけ。


「むにゃむにゃ……ぷらんとまーも……いっしょに……たべよ……」


盛り上がった布団の中から漏れる瓏の寝言。

夢の中では、皆で食事でもしているのだろう。


「だって。いつか出来るかな」

「そんなシーンは想像出来ないわね」


同じ想像をした猫仔に、すぐにそう返す私。

瓏は普段、母であるグラヴィさん、その側近でもあるプランさんと共に過ごしている。

前述の通り、私と猫仔は諸事情によりグラヴィさんによく思われてなく、食事を共になど当然無い。

プランさんと瓏が二人でここに来る事はあったのだが……。


「瓏普段から言ってる。皆一緒が良いって」

「知ってるわよ。同じ事グラヴィさんにも言って困らせてる様子が目に浮かぶわ。けど、そんな簡単な話じゃないって分かるでしょ」

「……ん」


確かに、そんなシーンを実現出来るに越した事はない。

が、私達姉妹にはあの人に恨まれる真っ当な理由がある。

なのに、今こうして好き勝手暮らすのを許されていて、幸せも味わわせて貰っていて。

これ以上の欲など、勝手が良すぎる。


「明日はそいつ、何か山登り行ってくるとか言ってたし、お弁当、作るんでしょ?」

「ん」

「ならもう寝るわよ。おやすみ」

「ん。おやす……(すすすっ)ぴとっ」

「なにさり気なく真ん中の布団侵入してんのよ」

「レーも来ればいい。ローはネッコ達が仲良いのを望んでるから」


「……仕方無いわね」

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