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「たっだいまー」「まーっ」「にゃあ」「はぁ……疲れた」


自宅。

3LDKのお洒落な木組みの——プランさんが造ってくれた——平屋。

プランテーションでは数時間過ごしたわけだが、あそこは時の間隔が歪められているので、現実世界へと戻っても数分経過しているだけで。

こうして玄関を潜った現時点でも、外はまだまだ明るい夕刻。

かといって、数時間外で遊んだ事実は変わらないので、この疲労は本物。

半日過ごした学校より、何倍も疲れた。

主に気疲れ。


「じゃあネッコはご飯の準備始めるから」

「お願いね。僕は仕事してるよ」

「にーっ、あそぼっ」

「仕事するっつってんだろッ」


猫仔はキッチンに、兄は自室に行き瓏は兄にしがみついて行った。

私はどうしよう……、……

——実際、うちのネコは手を借さない方が早いぐらい手際が良いんだけれど……。


「卵割って。中身分けるように」

「ん」


言われた通り割った卵の黄身と白身を殻を使って分ける。

黄身は茶碗蒸しやフライに、白身は他の料理にでも使うのだろう。

私がそんな一つの作業をしている間にも、猫仔はテキパキと三つの作業を同時に進行していた。

猫仔は一見、常にやる気のなさそうな怠惰な女に見られがちだが——実際家やパーク以外ではその通りなのだが——本来、学業や仕事など一般水準以上にこなせる器用な奴だ。

その気になればテストでも学年一位になれるだろうし、実際パークのどの職場でもすぐに即戦力になれていたし。

凡ゆる選択肢のある、可能性を秘めた女。


「パン擦って。パン粉用に」

「既製品でよくない?」

「ダメ。瓏には美味しいの食べさせたい」


——が、それでも。

猫仔自身、将来の夢だの何かを目指したいだのという欲望は一切無いようで。

今日のように、兄や私やパーク関係者が関わらぬ限り、普段は学校が終わればすぐに帰宅し家事を始めている。

本人曰く、『家事が趣味』なのだと。

遊び盛りの一五歳だというのに、既に専業主婦のような枯れ振り。

これだけ聞くと、私達に気を遣ってくれてる家庭的な女、に見えるだろう。

しかし残念な事に、この女にそんな可愛げはない。

猫仔に欲望が無いのは、『満たされている』から。

兄に『拾われた』あの日あの瞬間、既に『完結』しているのだ。

兄の側にいる事、兄の為に動く事が全てで……それ以外は時間の無駄。

学校にすら通わず兄の秘書をしたい、というのが本音。


「レモン切ったわよ。ついでに茶碗蒸し、蒸しとこっか?」

「ダメ。レーは適当にやるから。前もスが立ってた」

「味は変わらんでしょ」

「ダメ」


——例えば。

兄が猫仔から離れれば『別の道』に進む可能性もあるだろう。

……いや、訂正。

その前提自体無い。

もし今の生活を【侵すモノ(者、事象)】が現れたら、この女はありとあらゆる手で排除する。

そこには慈悲も躊躇もない。

誇大表現ではなく、実際、『それをした過去』がある。

兄や糸奇さんが『辻褄合わせ』してくれなかったらと思うと……頭が痛い。


「こんなもんかな。二人呼んで来るわよ」

「ん。瓏可愛がって遅くならないでね。ショタコン」

「自信ないわね」


予告通り、兄の部屋で仕事の邪魔をしていた瓏を捕まえいじったりして過ごしてたら猫仔に怒られたりして……バタバタしつつ食事開始。


「かきふらいおいちぃ!」

「ほら瓏、口汚しすぎよ(ふきふき)」

「ちゃわんむしおいちぃ!」

「お兄、口汚れてる(ふきふき)」

「はい瓏、おそば、あーん」

「んんっ(ちゅるる)だしがおくぶかいっ」

「ローは違いの分かる男」

「ふふん、どーだい瓏ちゃん? モテモテになればこんなおっぱい大っきい姉ちゃん達から毎日手取り足取りお世話して貰えるんだぜ? モテたいだろ?」

「も、もてたいっ」

「ちょっと、瓏に変な事教えないでよ。あんたみたいなの量産しないで」

「レー、何が問題? ローが目指すべき理想の男像はお兄で間違いないから。ロー、お兄みたいになりたいでしょ」

「うんっ!」

「……まぁまだ三歳だからね。すぐにこいつを軽蔑した目で見るようになるでしょ」

「ひでぇ言われようだな。モテモテになるのを憧れない男なんて居ないのにっ」


賑やかな、というより騒がしいいつも通りな夕食の時間は過ぎていき……

食後、皆で後片付けをした後は……

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