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「みんなー、動き回って疲れたろう? お兄ちゃんがアメちゃんをあげよう」


「わーい! ん……?」「これ【こんぶあめ】だ!」「じじくさーい」


「んだとクソガキ! オブラートと柔らかなお餅の組み合わせが美味いだろ! 全く、最近のガキは……お、丁度良いとこに【丁度良い奴】が通りかかったぞっ。おーいっ」


「あっ、どりーだ!」「うごくおかしのいえだっ」「のりこめー!」


「こらこら、ドリーは前に保育所で君らに根こそぎ食い尽くされたのがトラウマになってるんだよ。順番に並びなさい」

「人喰い植物もここの子達には敵わないのね……」


カサカサ……ボトボトッ


「うん? ドリーがよく分からない林檎みたいな果実を沢山落としてくれたぞ? 人数分ありそうだから……そうだっ。ドリーッ、枯れた落ち葉一杯頂戴っ」


カサカサカサ……


「よし。これをかき集めて……果実を埋めて……さ、ネッコ、『パイロ(発火)』って」

「え。わ、わかった(ボッ)」


「もえたー!」「わ、わたくしだって、ひをはけますわっ」「かぐつちちゃんだとけしずみにしちゃうよっ」「おっぱいでかーい」


「僕の力で焼き時間を進めて……ドリー、人数分のお皿とフォーク作って。後はドリー製のバニラアイスを添えて……はい! なんちゃって焼きリンゴ!」


「わーい!」「りんごのかおりじゃないけどおいしそー」「ぜったいうまいやつやーん」


「ちょ、ちょっと若! 黙って見てたけど今からそれ子供達に食べさせるつもり?」「夕飯前ですよっ」「困りますっ」


「ええいグチグチと細かい主婦どもめ! おやつは別腹じゃい! なぁみんな!」


「そーだそーだ!」「みんいだぞ!」「おやつくーでたーだー!」


凡ゆる外敵の脅威を羽虫を払うが如く弾き返して来たこのテーマパークだが、今結成された【兄withキッズ軍団】の新生魔王軍相手だと、容易に陥落させられそうだから恐ろしい。


とまぁ。

こんな想定の範囲内のゴタゴタを繰り広げつつ、ドリー特製紙芝居ホラーで興奮した子供達を怖がらせてクールダウンさせつつ……


子供達が満足した所で、ようやく解散の流れに。

保護者らには『子供に変な事教えないで』と懇願されていた兄だったが、無意味だと知っているだろうに。


——そうして。


「……なに? このバイク」

「ああ、実は二輪の免許も取ってね。猫仔とは既にパーク周りを走ったんだけど」

「お兄の背中にくっ付いて走るのも楽しかった。お兄カッコよかったニャー」

「わははそうだろうそうだろう。で、サイドカーつければ三人で帰れるけど、どする?」

「髪乱れるから車で。てか2ケツは免許取得から一年以上じゃ……?」

「し、私有地だからええねんっ」


帰りも引き続き、兄の運転する車に揺られて……。


「茶碗蒸しが食いたい気分なンだわ」

「うぃ」


兄のリクエストに頷く猫仔。

家に向かう途中、『そいえば冷蔵庫の食材切れてた』と告げる猫仔の一言で、急遽スーパーに寄って夕飯の買い物をする事に。

家の食事……というか家事全般は、猫仔が『進んで』請け負っている。


「お、【すあま】と【三色団子】がそれぞれ最後の一個。玲ちゃん用に買わなきゃ」


言いながら、猫の持つ買い物カゴに放り込む兄。どちらもアンコなどの余計な味付けのない素朴な甘みと食感を楽しめる私の好物だが……家族とはいえ、好物を知られているのはむず痒くなる。

まぁ例えそれらの好物が学校の靴箱に入れられていても、誰が置いたか分からないモノ、即捨てるが。


「あと何食べたい?」

「そうだなー」

「かきふらいっ!」

「「……うん?」」


唐突に割り込んで来る『幼い声』。


「あれ? 瓏?」


私の呼び掛けに、ニパーと可愛い笑顔で返す天使。


「って事は……ああ、居た。どゆことママン? さっき別れたばっかだってのに」

「……いつものじゃよ」


疲れた表情のグラヴィさん。

兄の居場所もどれだけ離れてても分かる彼女が、いつものワープ魔法で瓏と共にここまで来たのには、何か理由がありそうだが……。


「ふんふん。大方、僕に構われ足りなくてグズったか、中途半端に構い過ぎたか」

「知らん」

「もう、母親なんだから厳しく躾けてよ。『僕が同じくらいの時』はもっと聞き分けよかったでしょ?」

「同じようなもんじゃったろ。兎に角、明日、迎えに行く」

「ママンもウチに来れば? ついでに【プランさん】も」

「ふん。そも『貴様が来れば』話は早いというのに。もう我は行くぞ」

「まー!」


手を振って見送る瓏に、グラヴィさんは小さく手を上げ、音も無く虚空へ消え去った。

「全く。瓏ちゃん、いつものお泊まりセットは持ってる?」

「んっ!」


背負ってるリュックを自慢げに見せる瓏。

瓏がウチに泊まりに来るのはそう珍しくない事なので、用意も早い。


「じゃあ、ローのリクエスト通りカキフライ作らなきゃだね。他に何食べたい?」

「きつねそば!」

「食い合わせが自由だ。あ、お兄。アイスは家にあるから無言でカゴに入れちゃダメ」

「ぶーっ」


ガキが二人に増えた。

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