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――逆らえる筈もなく。


龍湖は、神が鎮座するあの神聖な禁足地への導きを了承してしまったのです。

村人ですら踏み入るのは禁忌の場に、あろう事か、外の者を。

巫女以外との接触を嫌う神。

『逆鱗に触れる』のは想像に難くないのに、龍湖は、この得体の知れぬ寵さんを神と謁見させようとしています。

この時の龍湖は、『何かを期待』していたのでしょうか。


「そういえば、この村の神様ってどんな容姿してるの?」

「え、容姿、ですか? 龍湖も、一度しかお会いしてないのですが……」

「もしかして、『アレ』?」


 寵さんの指差す先には、神をモチーフにした石像が。龍湖は頷きます。


「成る程。村のあちこちにこんなんがあるからもしやと思ったけど、狛犬とかシーサーみたいな護り神的な扱いなんだ。見た目だけで言えば、『親近感湧くね』」


皮肉めいた表情で微笑む寵さんの言葉に龍湖は首を傾げます。

どう言う意味でしょう。


「そういえば、目は慣れた?」


 ふと訊ねる寵さんの声はどこまでも優しいです。


「少しは……あっ」


 龍湖は気付きます。もしここで龍湖が『大丈夫』と答えたら、この柔らかで温かい手を離されてしまうかもしれません。


「や、やはりまだ全然ですっ。足もガクガクして……(ガクガク)」

「産まれたての仔馬みたいでウケるw 陽の光も浴びないから骨が弱いのかな? こんなまともに青空見るのも初めてでしょ」

「は、はい。目がキリキリと痛いです」


 空がこんなに毒々しい青だなんて、雲もこんなに綿飴みたいに白いのもあるなんて知らなくって。

そして、キラキラ煌めく寵さんの髪が何より美しくって。


「この風景が普通になるよ」


 寵さんの確信めいた口調には、説得力がありました。


――そして、ついに、辿り着いてしまいます。


侵入者を拒むように、森の入り口に何重にも張られた注連縄。

神の神通力が込められており、耐性を持たぬ者が潜ろうとすれば黒焦げになるほどに強力な結界です。


「この先かな? いかにもなボス戦前の入り口感あるし。村の皆が起きて騒ぎになる前に終わらせないと」

「こ、ここまで連れて来てなんですが、これ以上は神を怒らせてしまいますっ。寵さんは神と会ってどうなさるつもりですかっ」

「お話、だよ。僕だって平和的解決を望むさ。けどまぁ、十中八九実力行使になるだろうねぇ」

「き、危険ですっ。過去、有名だという霊媒師や退魔師を名乗る方々がこの先を無理矢理突破した時も、誰一人帰っては来ませんでしたっ」

「おうおう随分と僕の活躍を期待させる前振りだね。安心しな、僕は簡単に『死ねない』から」


ポンッと龍湖の頭に手を乗せる寵さん。

けれど不安は拭えません。

もし目の前で寵さんが酷い目に遭うなんて場面を見せられたら……耐えられません。


「だ、第一、この注連縄に触れたら――」

「よっ」と、寵さんが結界に触れた瞬間、注連縄は『霧散』しました。サラサラと、砂のように。


「さ、神様(笑)に御対面といこうか」


龍湖は何も言い返せませんでした。

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