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「やーごめんごめん。主役が席外しちゃって寂しい思いさせたね」
パークの温泉施設に戻ると、皆は(温泉の)可愛い浴衣に着替え休憩所で各々ノンビリ過ごしていた。
因みにだが、知っての通り外の時間とここの時間の流れは違い、外の世界での十数分はこちらの世界の数日だったりするわけで……だからその辺はパパンに『調整』して貰い、こちらの世界では僕が倒れてから三十分程しか経ってない。
「だ、大丈夫ですかっ」と駆け寄って来る仙女ちゃん。
「ヴぁー、意外と早くー、戻って来ましたわねー」とマッサージチェアーでブルブルしてる天女ちゃん。
「(むー……)」と僕を睨みながらコーヒー牛乳を口にする封。
「ほら、戻ってきたなら酌しろー」とまた呑んでるババア。
「僕を心配してくれるのは仙女ちゃんだけだよ(ギュー)」
「は、はわわわっ……み、みんな見てますっ」
「関係ないぜっ。さ! やりたい事はまだまだあるから仕切り直しと行こうぜっ」
今は僕の事情なんてどうでもいい。
彼女達を楽しませて僕も楽しむ、それでいいんだ。
ついさっきまでは実績解放に躍起になってたけど、暫く放置しよう。知りたい情報は大体得たし、『知りたくない情報』まで集める必要は無い。
ここ数日で、ようやく僕は『僕の時間』を得られたような気がする。
僕が作った、僕の関係。
きっとこの先も、素敵な初めてばかりが待っている筈で
「あっ。カー君みっけ」
ざわり。
鱗が逆立つように肌の表面がピリピリとなる。
まるで、危機を知らせる虫の知らせ。
こういうのを『第六感』って言うんだっけ?
過去も未来も統べる妃家だ、なんとなくで未然に危機を察知出来てもおかしくはない。
まぁ、今回は知らせるのが『遅過ぎた』が。
「おーい。その後ろ姿はカー君しかいないでしょ? 『十年ぶり』なのに無視すんなっ」
僕の背後にいる【なにか】を見て――
姉妹は驚いた顔をして。
封は唖然とした顔でコーヒー牛乳をこぼし。
おばぁは先の展開を知ってる映画を見てるようなつまらなそうな顔でクイッと酒をあおった。
パパン、僕が波乱の中心に巻き込まれる?
『波乱そのもの』が来たじゃないか。
ティロン 実績解放――『ドラゴンスキン(第六感)』
だから。
知らせるのが遅過ぎるって。




